セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

白馬の王子様を目指して

2011年09月30日 23時40分03秒 | クエスト184以降
 冒険者の生活時間はまちまちだ。よって、宿屋や酒場と同様、ゴールド銀行はいつも開いている。ミミとイザヤールが冒険に出かけようとしていたある日も、早朝だというのに、一人の青年がもうさっそく客として、レナのゴールド銀行を訪れていた。
「これでおしゃれなスーツを買って・・・後は家具か・・・足りるかなあ・・・」
 青年はそんな独り言をぶつぶつ言っていた。ゴールド銀行の前でよく見かける光景なので、ミミたちはそのときは気にも留めなかった。
 だが。その日の夕方、ミミたちがリッカの宿屋に戻ってくると、朝方見かけたその青年が、ルイーダの酒場のテーブル席に腰かけていた。誰かをひどく待ちわびているようだ。
「ミミ、待ってたわ、お客さんよ」ルイーダが囁いた。「あの人、ゴールド銀行でお金を下ろして出かけていったと思ったら、昼頃また戻ってきて、腕のいい錬金術師を知らないかって聞いてきたのよ。あなたのことを教えたら、帰るまで待つって、ずっとあそこに座ってるの」
 それを聞いてミミが急いで青年のテーブルに行くと、彼はぱっと顔を上げて尋ねた。
「あなたが腕のいい錬金術師さん?お願いがあります、この材料で『プリンスコート』を錬金して頂けませんか?」
 そう言うと彼は、持っていた袋から何やらたくさん取り出した。見ると、おしゃれなスーツを筆頭に、きんのゆびわに竜のうろこにラッキーペンダント、それからルビーの原石やひかりの石がいくつかずつ、よごれたほうたいや、ちょうのはねもあった。げんこつダケやめざめの花、きつけそうまである。
「冒険して懸命に集めたんです。腕のいい錬金術師ならこの材料でできるって、友人に聞いたもので」
 ミミはお安いご用ですと頷き、材料を預かってさっそくカマエルに囁いた。
「カマエル、まずは『ちょうネクタイ』の錬金お願いね」
「かしこまりましたお嬢様。それではさっそく錬金させて頂きます」
 ミミはまずよごれたほうたいとちょうのはねで「ちょうネクタイ」を作り、おしゃれなスーツとひかりの石を組み合わせて更に「ひかりのタキシード」を作った。
 それからロイヤルバッジの錬金にかかった。かなり手間がかかるので、イザヤールも手伝った。
「確か『ちからのルビー』と『まもりのルビー』が必要だったな」
「はい。ちからのルビーを作るには、『ちからのゆびわ』が必要で・・・ちからのゆびわにはきんのゆびわととうこんエキスが・・・あ、とうこんエキス作らなきゃ」
 通常錬金は手持ちの材料を贅沢に使って手軽にしているので、こうして預かった材料を使うと、案外手間がかかると改めて認識した。
 それでもロイヤルバッジも無事完成したので、ひかりのタキシードと組み合わせ、「プリンスコート」は完成した!
「どうぞ。お待たせしました」
 ミミがプリンスコートを差し出すと、青年は立ち上がってぺこりと頭を下げた。
「ありがとうございます!よ~し、あとは、馬だけだ」
 それがどういう意味なのかミミたちが尋ねる間も無く、「これお礼です」と「けんじゃのせいすい」を残して、青年は走り去った。

 しかし、翌日。すっかりうちひしがれた様子で、青年はルイーダの酒場に戻ってきた。
「ダメだ・・・やっぱり僕のチカラでは、とても勝てない・・・。白馬の王子になるなんて、ムリなのかな・・・」
 そして青年は、酒を一気に飲み干し、涙ぐみながらルイーダに訴え始めた。
「彼女にね~、プロポーズしようと思ってたんですよう。白馬に乗った王子様姿で迎えに行く、ってシチュエーションで。それができたら、彼女ロマンチックな人だから、絶対喜んでオッケーしてくれるはずなんですよ~」
「あらそうなの」
 さすがルイーダ、いくらロマンチストでもそのシチュエーションのプロポーズはどうなのよ、と思っていることはおくびにも出さずに、淡々と青年の話に頷く。
「でも、肝心の馬が・・・『レジェンドホース』にどうしても勝てないんです」
「あらそうなの・・・え?!レジェンドホース?!何で!?」
 さすがのルイーダも、宝の地図の洞窟の最強クラスの魔物の名が出て、思わずカウンターから立ち上がった。
「プリンスコートには、あれくらい立派な伝説の白馬でないと、とても釣り合いませんよう。それで、捕まえに行ったけど、どうしても勝てないっ・・・。あ~、このままじゃあ一生プロポーズできない~!」
「普通の白馬にしなさいよ」
 ルイーダは呆れて呟いたが、青年の耳には入っていないようで、彼は唐突に尋ねた。
「ルイーダさん!レジェンドホースを生け捕りにできる、凄腕冒険者、知りませんか!」
「ええ~、知ってることは知ってるけど・・・ミミ、イザヤールさん、いい?」
 困惑したルイーダの言葉にミミたちが頷くと、青年は驚いて目を丸くした。
「えっ、昨日の錬金術師さん?」
 こうしてミミはクエスト「白馬の王子様を目指して」を引き受けた!

 ミミとイザヤール、ルイーダにそしてロクサーヌを加え、一同はレジェンドホースの居る高レベルの宝の地図の洞窟を訪れた。
「ロマンチックなプロポーズねえ・・・形より心、だと思うけど」
 ルイーダが呟くと、ロクサーヌは微笑んで言った。
「あら、形やシチュエーションもかなり重要ですのよ。労力や資力をかけてくれればくれるほど、愛されていると思う方も多いようですわ」
 そんなやり取りを聞きながら、ミミは少し考え込んだ。
(プロポーズかあ・・・。私は、イザヤール様が想いを伝えてくれた時が、プロポーズみたいなものだと思っていたけど・・・。愛している、ずっと傍に居たい、それだけじゃ、ダメなものなの?)
 イザヤールは前を歩いていて、その表情は見えなかった。ルイーダたちの会話が聞こえているかも、怪しかった。
 そこへスターキメラの群れが現れて、ミミの夢想も、ルイーダたちのお喋りもひとまず中断されたのだった。

 最下層のレジェンドホースの居るフロアにたどり着くと、さて、どうやって捕まえようかと一同は改めて考え込んだ。当初は麻痺させるなり眠るなりさせて捕らえようと思っていたが、それでは地上に連れて帰ってからが危険すぎる。
「やっぱりなつかせるしかないんじゃない?」
 とはいえ、高レベルの強敵モンスターである。そうそう簡単になつくとは思えない。
「とりあえず、餌付けしてみようか?」
 そんなわけで、ミミたちは道具袋からあらゆる種類の草を出し、床に並べて置いて、物陰から様子を窺うことにした。
「あ、来た来た」
 レジェンドホースはゆっくり歩いてきて、並べられた草を見て立ち止まった。辺りを胡散臭げに見てから、それぞれの匂いを嗅いだ。
「ああっ、よりによって、『せかいじゅのは』をかじりましたわっ」
「しーっ、静かに」
 だが、かじっただけだった。レジェンドホースは、後ろ足で草を蹴散らした。
「あ~、やっぱりダメかあ・・・」
 ミミが溜息をつくと、ルイーダが呟いた。
「じゃあ作戦その2ね」
「そんなのあったの?」
「ああいう伝説の生き物は、清楚な乙女に弱いのよ。ミミ、ロクサーヌ、清楚な装備に変えて、座って待ちなさい」
「ルイーダさん、それ、ユニコーンの捕らえ方じゃあ・・・」
「やってみる価値はあるでしょ」
 そんな次第で、ミミはムーンブルクドレス、ロクサーヌは普段のドレスに着替え、渋々レジェンドホースを待った。
「こんなことで捕まるなら、今までだって戦闘にならないと思うけど・・・」
 ミミがぼやいていると、さっそくレジェンドホースが一頭、ゆっくりと近付いてきた。そして、二人の前で立ち止まった。
 一瞬間が開いてから、レジェンドホースは首を持ち上げ・・・光のブレスを吐き出した!
「やっぱりダメ~」
 ルイーダとイザヤールも飛び出し、戦闘になった。敵が弱ってきたところで、イザヤールは突然、ひらりとレジェンドホースの背に飛び乗った。
「一か八か、ナムジンに聞いた手を使ってみよう。誇り高き名馬を御するには、相手に敬意を払いつつも、どちらが主人か教えてやることだと、彼は言っていた」
 そう言って彼は、手綱の代わりに、手早く「グリンガムのムチ」を巻き付けた。レジェンドホースは暴れたが、イザヤールは振り落とされそうになるのを何とか堪え、馬が疲れきって動かなくなるまで乗り回した。
 へとへとになってぐったりしたレジェンドホースに、ミミが思わず馬の鼻先をなで、水を飲ませてやると、レジェンドホースは、なんとミミになついて顔を擦り付けてきた!
「・・・ま、まあ結果良好、だな」
 苦笑するイザヤール。すっかりおとなしくなったレジェンドホースを引いて、一同は地上に戻った。

 青年にレジェンドホースを見せると、彼は大喜びだった。
「ありがとうございます!これでプロポーズできます!」
 彼はお礼にと、「リサイクルストーン」をくれた!
 プリンスコートを着た青年をレジェンドホースに乗せて、念の為ミミとイザヤールがついていき、無事青年は彼女のもとへ「白馬の王子様風」で訪れた。驚き喜ぶ彼女と、それに満足そうな彼を残して、ミミたちはそっとその場を立ち去った。そして、レジェンドホースはすぐに洞窟に返した。
 数日後。ミミとイザヤールが外出先からリッカの宿屋に戻ってきて、中に入ろうとすると、ルイーダの酒場の方から、依頼を果たし終えた筈の青年の声が聞こえてきた。
「ルイーダさ~ん、聞いてくださいよ~。彼女、すっごく喜んでくれたけど、プロポーズの返事は、『プリンセスローブ』着てドラゴンにさらわれた自分を助けてくれたときにする、なんて言うんですよう」
「あらそうなの、たいへんねえ」
「ミミさん居ませんか?今度はドラゴン捕まえてきてほしいんですよ~」
「あいにくミミは留守よ。当分帰らないわ」
 そう言いながら、ミミたちに向かって懸命に、入ってきちゃダメ、早く逃げて、と目で合図するルイーダ。ミミとイザヤールは、もちろんその指示に従った。
「裏口から入って部屋に行きましょう」
「そうだな。・・・それとも、このままどこかに出かけるか?」
「・・・はい♪」
 ミミは嬉しそうにイザヤールの腕に自分の両腕を絡めた。
 どんな王子様よりも、イザヤール様がいいの。
 彼の顔を見上げて微笑むと、彼女に劣らず幸せそうな、優しい微笑みが返ってくる。二人は腕を組んだまま、セントシュタインの街中を、歩いていった。〈了〉

コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 気のせいかこの頃よく見かけ... | トップ | 超久々にお絵描きツール »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ご丁寧にv (津久井大海)
2011-10-01 19:54:59
ちいはゲーマー様

再びこんばんは☆ご丁寧にありがとうございました☆
そうですか、お若い従妹様なのですね、でもおいくつでもやはりその発想は非凡で素晴らしい(笑)
返信する
従妹様最高! (津久井大海)
2011-10-01 19:50:11
ちいはゲーマー様

こんばんは☆普通王子様って、羨ましがられる身の上のはずなのに、不憫がる従妹様すごい!そしてなんてお優しい!
うん・・・ちょっと納得しかけてしまいました(笑)オムツじゃないにしても、どう贔屓目に見てもかぼちゃのアレはカッコいいとは言いがたいですからね・・・www

当サイトのバカップルのプロポーズは全くノービジョンですが、案外ロマンチストなことをやらかすかもしれない当サイトイザヤール様。
何をしても「vvv」な女主ですが、かぼちゃはさすがに泣くかもです(爆)

もう10月・・・早いです・・・原稿・・・(汗)
再会話楽しみにしてます☆
返信する
すみません・・・ (ちいはゲーマー)
2011-10-01 19:26:02
従妹の年齢、8歳年下なのに2歳年下と打ち間違えてしまいました
本当にすみません・・・
_(;_ _)_
返信する
[白馬の王子様]で思い出したことがあります (ちいはゲーマー)
2011-10-01 11:55:01
先日、2歳年下の従妹が「王子様って可哀想だよね」と謎の発言をし、何で可哀想なのか理由を聞いたら



「えー、だってかぼちゃみたいなオムツ穿いた状態で馬に乗らなきゃいけないんだよ?」

・・・ちょい待て、かぼちゃは百歩ゆずるとしてあれはオムツではない
ついでにいうとそんな服着て馬に乗ってる人、まずいないから
(;-∀-)ノ


プロポーズかあ・・・
いつかイザヤール師匠がミミさんにプロポーズする際、青年と似たようなことをしたらミミさん一体どんな反応するんでしょうね?


さて、いい加減私も早く再会イベント書かなきゃ
もう十月入っちゃったし・・・
返信する

コメントを投稿