ママ研究者~人生まだまだこれから~

製薬会社で新薬開発に挑む研究者。2人の息子(6&0歳)がいます。ママ研究者(今は臨床系)、日々の思いを綴ります!

医薬品(漆原良一著)~その3

2008-08-03 11:38:07 | お薬、疾患、健康
業界研究シリーズ 医薬品 (日経文庫)
漆原 良一 (著)

【自分ポイント】前々エントリーからの続き、羅列し続けてます(笑)。
 →は私の考えです。

○研究開発生産性の低下
  ヒトゲノム解析など、技術は飛躍的に進歩しているのに、承認される新薬の個数は、減少の一途である。
  この原因を、納得いく形で説明した人はいない。(つまり、改善点が見出せない。)
  筆者は、原因として、ブロックバスター志向を挙げています。
  何故、そう考えるかというと、
  (1)1990年以降、「商業上の理由で開発を断念する」という判断が製薬企業で多発し、その結果、研究開発テーマを純粋に見極める姿勢がゆがめられた。
    → マーケティング主導の研究開発体制になってきた点は、私も感じます。
仕事をしていても、「市場性は?」「患者数は?」「競合優位性は?」は決まり文句です。
  (2)巨大市場を狙う開発テーマは、臨床試験の規模も大きく、証明する薬効も先行薬との微妙な差を狙うため、ハイリスクである。
    → ?。市場の大きさと臨床試験の規模は、必ずしも相関しないと思います。 患者数が少なくても、有意差を出すためには、治験数は必要です。臨床試験の結果の判定や数値化のしやすさも関係していると思います。

→ 私の意見を補足。
新薬開発の成功率が低下している原因として、研究のトレンド志向が関係しているような気がします。
よりトレンディーな研究に、研究費と人材が集中する傾向があると感じます。

研究のトレンド、一昔前なら、ゲノム創薬、SNPs、最近なら、プロテオームなどの○○オーム、今なら、iPSです。(iPS細胞は、日本が世界に誇れる研究成果であるため、多くの研究費が割り当てられると思います。)

新しい技術や、網羅的研究は、もちろん重要です。でも、そこで見出された技術が医薬品となるためには、ひとつひとつ掘り下げた念入りな研究が必要です。

例えば、ジーンチップをすれば、
「○○の疾患患者さんで、Aという遺伝子の発現が○倍に上昇していた」などということを容易に見出すことができます。
だからといって、その遺伝子が薬のターゲットとなるというわけでは必ずしもありません。ターゲットとなることを証明するには、遺伝子を発現させた細胞で機能を見出したり、遺伝子ノックアウト、またはトランスジェニックマウスを作製し、疾患と関与するかどうかを調べる必要があります。

こういった地道な研究を行う研究者が、少しずつ減ってきているのではないかなぁと個人的には感じています。(あくまでも個人的な意見です。)

その4へ続く。

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