老年

満69歳になった。間違いなく老年であるが諦めがつかない。

ロシア民話 ”ジハルカ坊や”

2006-06-26 23:24:49 | Weblog

 とおい、とおくのうっそうとした森の中に小さな小屋がありました。そこにはねことすずめと小さなジハルカという名前の男の子が暮らしていました。ねことすずめは食べ物を見つけに出かけ、ジハルカ坊やは留守番するのです。家の中を掃除したり、ご飯をつくったり、テーブルの仕度をします。おさじを並べひとりごとをつぶやきます。
 - このおさじはねこ、これはすずめ、こいつはジハルカ坊やの。一番いいんだよ、だれにもあげないんだ。

 おさじは普通のでなくて、彫刻があって金色にぬってあります。

 ジハルカ坊やが一人で家にいることを聞きつけたきつねは、坊やをさらってやろうと考えました。森へ出かけるときにねことすずめは、かならず戸を閉めるよう、ジハルカ坊やに強く言います。ジハルカはいつも戸を閉めていたのですが、一度だけそれを忘れました。ジハルカはご飯の用意をして、テーブルクロスをかけて、おさじを並べ始めました。ねことすずめのおさじを置いて自分のを取り上げたとき、とん、とん、とんと階段をあがってくる音がしました。きつねがやってきたのです。怖くなったジハルカは腰掛から飛び降りたのですが、おさじを床に落としてしまいました。もう拾う間がありません。ペチカの下にもぐりこみ、隅っこにすわり身動きもしません。

 きつねは小屋に入りました。あっち、こっちと見回しますがジハルカ坊やはいません。 <いいわ、自分で言わせてやろう> - きつねは考えました。

 テーブルに近づいたきつねは、後足で立ち上がり、一つ一つおさじを手に取ります。  - これは、ねこのおさじ、これは、すずめ、で、ジハルカ坊やのはどこかしら?ああ、床に落ちているわ。わたし、これにしよう。

 
 ジハルカは叫びだしました。
 - いやだ、いやだよ、だれにもあげない!
 - あら、あんた、そこにいたの!

 きつねはペチカに走りよってジハルカを引きずり出すと、背中に背負って自分の家に走り去ったのでした。

 小屋に連れ帰ると、きつねはペチカを熱く焚きつけました。ジハルカ坊やを焼いて食べたいのです。ペチカが熱くなるとスコップを取りだして、”おすわり”とジハルカに言いました。ジハルカ坊やは、ただのちっちゃな子ではありません。勇ましくって機転の利く男の子です。

 スコップにすわり、手足を広げたのでペチカに入れることができません。
 - そういうすわり方じゃないのよ。 - きつねは言います。

 ジハルカ坊やは、今度は後ろ向きになり手足を広げました。これも駄目です。
 - そうじゃないよ。 - きつねは言います。
 - どうやりゃいいか、やってみてよ、きつねおばさん、ほかのやり方できないよ。
 - なんて馬鹿なんだろうね。 - きつねは言いました。

 スコップから坊やをおろすと、きつねはスコップに飛び乗りました。まん丸ちくなり足をちぢめ尻尾に包まりました。喋る間もなくジハルカはきつねをペチカに押し込みふたを閉めてしまいました。悲しいことに、きつねばあさんはすぐにペチカで丸焼けになりました。ジハルカ坊やは家に帰ります。走りだします、大急ぎです。

 家ではねことすずめが嘆いています。一匹と一羽が家に帰り着くと戸が開いており、さじは投げ出され、ジハルカは跡形もなかったのです。ねことすずめは長いすに腰掛けて泣いています。
 - どこ、うちのジハルカは?どこ、家のちびちゃんは?

 ねこちゃんは足で涙を拭き、すずめちゃんは羽で拭っています。突然、階段を駆け上がる音がします。とん、とん、とん。ちっちゃい足音です。ジハルカ坊やは走りこみながら大声で叫びます。
 - ぼくだよ!きつねばばあは、もうぼくたちのところへ来ないよ!

 ねことすずめは大喜びで長いすから飛び降りると、ジハルカを抱きしめ、キッスをするのです。みんなで手を取り合い小屋の中をくるくる回ります。こんなに喜んだのですよ。今ではねこ、すずめ、ジハルカ坊やは小屋で暮らしています。あんたとわたしたちがお客に来るのを待っていますよ。

《おわり》

今日の歩数: 9,490歩 消費カロリー: 354.7kcal


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