老年

満69歳になった。間違いなく老年であるが諦めがつかない。

プーシキン: ルスランとリュドミラ 27

2006-10-12 23:34:24 | Weblog

 しかし、サウナから出る。
ビロードの布を身にまとい
美しい乙女たちの輪の中で、ラトミールは
豪華なご馳走を前にすわる。
わたしはホメロスではない: 格調高き詩句で
この男は一人讃美できるのだ
ギリシャの武人たちの食事を
そして、物音そして深き盃の泡立ちを
パルナッソスの後を追って、もっと優しく
わたしはぞんざいなリラによって讃えねばならぬ
夜の陰にある裸体を
優しき愛の口づけを!
城は月の光に照らされる;
わたしは遠く宮殿を見る
そこに勇士は悩ましく燃え上がりながらも
孤独な眠りを味わっている;
その額、その頬は
つかの間の炎で燃えている;
半開きの唇は
ひそかな口づけを招く;
ラトミールは情熱的に、ゆっくりと息づき
あのものたちが見える ― 燃えさかる夢の中に
布団を胸におしつける。
しかし、この深きしじまの中
ドアが開いた;やきもちやきの床は
急ぎくる足の下できしる
そして銀の月に照らされて
一人の娘が見え隠れした。翼ある眠りよ
身を隠せ、飛んでいってしまえ!
目覚めよ ― おまえの夜が来た!
目覚めよ ― 失われる貴き刹那よ!
娘は近づく、ラトミールは横たわり
甘美な恍惚のうちにまどろむ;
布団はベッドから滑り落ち
熱き産毛が額をとらえる
ものも言わず娘はその前に
身動きもせず、息もせずに立つ
まるで猫かぶりのダイアナが
可愛い自分の牧童の前に立つかのようだ;
そして、娘は汗のベッドの上で
片膝で身を支えて
ため息をつき、顔を男に傾ける
甘美なもの憂さと息づく身震いをして
そしてこの幸せものの眠りは破られる
狂おしく無言の口づけによって...

 しかし友よ、乙女のリラは
わたしの手元で沈黙した;
わたしのおずおずとした声は弱くなっていく ―
若いラトミールのことは放っておこう;
歌を続けるのは止めにしよう:
わたしたちはルスランの番にしなければならない
ルスラン、この比類なき勇士
英雄は生まれながらの忠実なる恋人。
頑強な闘いに疲れ
死んだ勇者の頭に近く
甘美な眠りをむさぼっている。
しかし、もう朝焼けは
静かに地平線を照らす;
すっかり明るく;ひょうきんな朝の光は
毛むくじゃらな額を黄金に染める。
ルスランは起き上がり、そして駿馬は
もう勇士を乗せて矢のように疾駆する。

<つづく>


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