老年

満69歳になった。間違いなく老年であるが諦めがつかない。

プーシキン: ルスランとリュドミラ 31

2006-10-20 22:19:09 | Weblog

 こんなに長い話を選んだのを少々後悔している。第6の歌、エピローグとまだしばらくは続いていく。一番困るのは時々プーシキンが顔を出して薀蓄を傾けるところだ。概してロシア人はギリシャ神話が好きだ、ギリシャの神々が登場するところでたびたび中断してしまった。ロシア語のツィテレアはキュテレイア、キプリーダはキュプリスでいずれもアフロディティ(ヴィーナス)のエピテート(形容辞)であることが分かった時は嬉しかった。プーシキン辞典(全4巻)には詳しく出ているのだろうけれど持っていない。でもインターネットはありがたい。時間をかけて探すとなんとか見つかる。このあとプーシキンが顔を出すのは宴会にいて蜜酒を飲むというくだりだけにして欲しいものである。

 

すでに魔法使いは雲の下
ひげに英雄はぶら下がっている
暗い林の上を飛び
荒れ果てた山々を越えて飛ぶ
底なしの海を飛び
緊張から手をかじかませながら
ルスランは悪党のひげを
しっかりと掴んでいる。
そのうち、空中で力尽き
ロシアの力に驚きながら
勇猛なルスランに妖魔は
ずるそうに言う: 《聞けよ、公爵!
わしはお前に害を与えるのを止めにするよ;
若い度胸が気に入った
みんな忘れて、お前を許してやるよ
降りていくぞ ― でも一つ約束しようぜ...》
《黙れ、ずるがしこい妖魔め! ―
われらの勇士はさえぎった ― チェルノモルなぞと
わが妻の迫害者なぞと
ルスランは取引なんぞしない!
この恐怖の剣で悪漢を罰してやるのだ。
夜空の星までも飛んで行け
でもお前のひげはなくなるのだ!》
恐怖はチェルノモルを包む;
悔しさと秘かな悲しみのうちに
いたずらに長いひげを
疲れた小人は震わせる:
ルスランはそれを放さずに
時々その毛を引っ張る
二日間、魔法使いは英雄を運ぶ
三日目になって許しを請うた;
《おお、豪傑よ、わしを哀れんでおくれ;
ほとんど息がつけない;もう力がない;
わしを生かしてくれ、お前の言いなりになるよ;
言ってくれ ― 言うとおりのところへ降りるよ...》
《なるほど、お前震えているな!
諦めろ、ロシアの力に屈服しろ!
わたしのリュドミラのところへ連れて行け》

 おとなしくチェルノモルは耳を傾け
勇士を連れて家路を戻る
一飛びすると、もう現れた
自分の恐ろしい山々の中に。
するとルスランは片手に
頭を打ち負かした剣を持ち
別の手であごひげを掴み
それを切り落とした、まるで草の束のように。
《どんなものだ! ― 情け容赦なく言った ―
どうだ、悪党、どこにお前の魅力はあるか?
どこに力はあるか?》 ― そしてかぶとに高々と
白い髪を結びつける;
口笛を吹いてさっそうとした馬を呼び寄せ
楽しげな馬は飛びそしていななく;

<つづく>


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