ものつくりおじさんの制作日誌

ものつくり大好きおじさんがいろいろなものを作っていきます。

【革細工】ワイヤレスイヤホンケース

2023年03月18日 | レザークラフト

えー、革細工のブログで初めての革記事です(笑)

minneで出店しているのですが、ひと月に何個か売れたりするんですよね。今回も出品しているのを忘れた頃に売れました。ワイヤレスイヤホンケースです。

 

ワイヤレスイヤホンケース【無染色ヌメ革】

4,000円 | 無染色のヌメ革で作ったワイヤレスイヤホンケースです。僕はズボンのベルト穴や鞄に取り付けたいのでカラビナ付きのイヤホンケースを作りました。ヌメ革なので使...

minne(ミンネ)

 

ワイヤレスイヤホンって、サイズが微妙に違っていて大きい物から小さい物まであるんですよ。汎用型のケースはないのが現状で、それもあって売れたのだと思います。革の原料高騰があったので基本値上げしてたのですが、割と初期の作品だったので値上げするのを忘れてた! 売れた後に今後のために値上げしました('_')

 

まずはお客さんのワイヤレスイヤホンのサイズを聞いて、それに合わせた型紙を考えていきます。ホワイトボードにざっくりと寸法と展開図を書いてCADで作ります。このときのコツは、やや大きめに寸法をとることです。今まで何度ピッタリに設計してやり直してきたことか…例えば革の厚みも計算に入れる必要があります。革厚1.5㎜だと、マチを作る際に左右合わせて3㎜も余分に必要で、上下が絡んでくると大きめにしないと詰みます。縫い代も大体3㎜くらいは必要なので、これで革厚と合わせても最低で想定の6㎜は大きく設計しないとだめです。

ホワイトボードで決めた寸法をCADで再設計してA4用紙にプリントします。CADを使うと設計寸法をそのまま印刷できるので便利です、レザークラフトをやるならばCADを使えるようになったほうが良いです、型紙を電子化して保存できる上にちょっとした寸法のマイナーチェンジもすぐできます。印刷した紙を100均などで売っている工作用紙(厚紙)にノリで貼り付けて切り出します。左上の箱は実際に入れるワイヤレスイヤホンと同寸の紙モデルで、確認用に使います。

ヌメ革を型紙通りに切り出した後に、マチの形を整えていきます。ヌメ革は水で濡らすと形を変えることができ、乾くと形が定着します。この性質を利用したのがウェットフォーミングという技法です。濡らしたヌメ革を木型で押さえて乾くまで放置して立体的な形にできる技法ですが、今回はただ曲げたい部分を湿らせて折って形を整えています。

本体のほうもある程度形を整えたら、ポンチで穴を開けます。この穴は留め具として使うバネホック用で、金具の位置になるので割とシビアです。ずれて穴が開くと、金具もずれるので間違えられません。

実際に収納してみて、穴の詳細位置を決めます。型紙だけでなく実際に物を入れてから確認します。手間ですが、完成した後に入れてみて「あれ・・・めっちゃキツくてボタン閉まらんやん(涙)」ということがあるのです。

バネホックの取り付けをします。私はハンドプレス機を使っていますが、普通に打ち具をハンマーで打ち込むこともできます。ハンドプレスがあると無音で作業できるので集合住宅におすすめです。確かamazonで15000円くらいで買いました。金具取付の失敗などないので、あると便利です。

次にコバ面の角を整えていきます。へり落とし、という道具で角を取っていきます。こうしないと角が立って捲れやすくなったり、持った時に角が当たる感覚がします。見た目の面でも全然変わるので、へり落としは必須です。

次にヘリ落としをかけた後のコバを磨きます。ミガキーノというコバ処理剤を使っていますが、これは何でもよいです。コバ処理剤はロウ成分と水溶性樹脂で構成された薬剤で、これをつけて磨くとコバの毛羽立ちを抑えて見た目もよくなります。コバだけでなく革の内面(トコ面)もこれで磨いて毛羽立ち防止をしています。

↑磨いていないコバ

↑磨いたコバ

ね、全然違うでしょ。耐久性もアップするのでやったほうが良いです。たまにコバ処理されていない革製品とか売っていますが、個人的には嫌いです。ガサガサになって革の繊維がボソボソ出てきます。

キーホルダー部分を作っていきます。金具を入れたら木工用ボンドで仮止めします。今回はたまたま木工ボンドですが、これ当然ながら革もいけますし、普段はサイビノールという白ボンドを使っています。まぁ主成分は同じなんです。

ヤスリでキーホルダー取り付け部分を荒らします。こうしてツルっとした革表面をザラザラにして接着剤の貼り付きを良くします。

ゴム系のボンドを接着する両面に塗って乾かし、圧着して貼り付けます。ゴム系ボンド(G17など)は強力ですが、貼った直後にくっ付いてしまうので貼り直しができません。白ボンドは貼った後も乾くまで時間がかかるので微修正が可能です、これも一長一短ですね。

ボンドで仮止めできた後は縫い付けの作業に入ります。菱目打ちという道具で穴を開ける位置のマーキングをします。

穴の位置がマーキングできたら菱ギリで縫い穴を開けていきます。下にコルク板を敷いてスッと革を貫きます。菱ギリで穴を開けると最小限の力で適切なサイズの穴を開けられるので便利です。

縫う糸はポリエステル糸を使っています。革細工の糸と言えば麻糸もありますが、耐久性が段違いです。麻糸はすぐに擦り切れますがポリエステル糸はかなり丈夫です。糸の末端処理も溶かして留められるので絶対にポリエステル系の糸が使い勝手良いです。

縫い終わった後の末端部はヒートペンで溶かします。ヒートペンじゃなくてもライターの火で炙って処理できますが、ヒートペンのほうがピンポイントで狙えるので、あったほうが便利です。

こんな感じで先端が赤熱するので、そこに糸の切れ端を当てると溶けて目立たなくなります。ポリエステル系の糸はこういう末端処理ができるので楽です。麻糸だとボンドを塗って革の中に埋めるという手段を使います。

本体部のホックボタンの裏側は金属むき出しです。このままだとせっかくのワイヤレスイヤホンに傷が付きますね、そこで薄いアメ豚という革を円形に切り抜いたものを貼ってカバーします。縫い付けているわけではないので耐久性は劣りますが、傷防止カバーなので必要十分です。

マチを取り付けていくのでヤスリでトコ面の表面を荒らしていきます。このヤスリは本当に多用して便利です、ネットで買いましたがホームセンターや革道具店にも売っています。ドレッサーで調べると出てくると思います。

この段階で縫い線をつけておきます。マチを付けた後だと縫い線が引けないので、平面の段階で引きます。道具はディバイダーかステッチンググルーバーです。どっちも使いますが、このパターンではグルーバーを使います。縫い線は穴を開ける際のガイドでもありますが、しっかりと溝を作っておくことで縫い糸を革に埋める役割もあります。革の表面上に糸が出ていると糸が擦り切れる可能性があるので、理想は革に糸が埋まっている状態です。そこまでいかなくても糸の半分以上が革に埋まっていたほうが見栄えも良いです。

こんな感じで革の表面を濡らして、グルーバーで糸を埋める線をつけます。

マチにも同様の縫い線を引いたら、いよいよ仮止めです。サイビノールという白ボンドを薄く塗って組み立てていきます。

ポイントは薄く塗ることです。厚く塗ると革と革の間にボンドの層が出来て、接着力も弱くなり見た目も悪くなります。

ボンドが乾くまでの間はズレないようにクリップで留めておきます。圧着の効果もあるので、クリップを使います。10分も置いていれば次の工程に進める程度には乾きます。

一辺一辺を付ける度に縫い穴を開けていきます。すべて組み立てて開けようとすると結構大変なので、平面で簡単なうちにやっておきます。菱目打ち→菱錐で穴開けするのは変わりません。

こんな感じで一気にではなく、徐々に組み立てるのがコツです。ボンドで仮止め→縫い穴開け→ボンドで仮止めを繰り返します。ボンドが乾く時間も必要なので、意外と手間です。

組み立てと縫い穴まで開けることができました。ここまでくればもう一息です。

縫うときにも革を水で濡らして柔らかくします。こうすることで糸が革の中に埋まりやすくなり、出来栄えに影響します。

縫い終わったらコバを処理していきます。カタメールという薬剤で革を少し固めます。これも水溶性樹脂で、革の内側に入って固まることで革を部分的に硬くすることができます。

こんな感じで綿棒でコバにだけ塗ります。コバだけが硬くなり、紙やすりで整えやすくなります。ちょっとした裏技です。

320番の紙やすりで硬化したコバを整えていきます。

整える前はこんな感じでボソボソですが、整えるとこうなります↓

ちょっとテカって表面が滑らかになったのが分かると思います。このままだと角張っているので、側面の角を落としていきます。

ヘリ落としで余計な革を削ってから、コバ処理剤(トコノール、トコプロ、CMC…)で磨いてあげるとこんな感じになります。

ね、見た目がだいぶ変わるでしょ。このコバ処理も奥が深くて、クリエイターごとに独自のやり方があると思います。人によっては顔料を使ったり、蜜蝋を溶かし込んだり、ほんといろいろです。

コバ処理が終わったので表面処理をします。今回は無染色のヌメ革なので、こってりとしたミンクオイルを塗りこみます。ミンクオイルは革の保湿だけでなく水濡れも多少は弾くので使いやすいです。無染色のヌメ革はエイジングするので最終的には気にならなくなりますが、使い始めの頃は水染みや汚れが目立つので、なんらかの表面処理をしたほうが良いです。防水スプレーを使うと汚れも水も防ぐことができるらしいですが、私はまだ実験したことがありません。

こんな感じに出来上がりましたよ。最後にレーザーで刻印していきます。

レーザーペッカーというレーザー刻印機を使っていますが、これはスマホと簡単に接続できて手軽に刻印できるので便利です。この機械は8万円くらいしましたが、相場的には2万円ほどのものでも十分使えます。木やプラスチックにも刻印できるのであると便利です。

スマホアプリで写真やロゴを選んで本当に簡単に刻印できます。ちなみにモバイルバッテリーでも動作するので外出先でも使えます、そんなシチュエーションないと思うけど(笑)

こんな感じでピッタリと寸法通りのワイヤレスイヤホンケースが出来ました。こういうのは本当に何度も失敗した経験で最適な作り方というものを覚えていきます。

日の当たる場所で撮影してみました。最初はちょっとした染みとか汚れが気になるかもしれませんが、無染色のヌメって白いんで目立つんですよね。でも大丈夫、使っていくうちにエイジングしていい感じに成長していきますよ。

↑この左のものが2年ほど前に作ったワイヤレスイヤホンケースです。同じヌメ革を使用しても全然印象違いますよね、飴色にどんどん変化していってツヤも増していくのがヌメ革の特徴なのです。ぜひ、今回のお客さんにも使い込んでいただきたいです。

 

それでは今回はこの辺で、ほなまた~。



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