ものつくりおじさんの制作日誌

ものつくり大好きおじさんがいろいろなものを作っていきます。

【革細工】既製品を修理する。

2023年06月13日 | レザークラフト

 レザークラフトの記事ですが、作っていくほうではなくて修理するほうです。父親から既製品(ブランド)のキーケースが壊れたので修理してほしいという依頼を受けました。修理するのはこちら↓

北海道の革製品ブランド、ソメスサドルのキーケースです。御覧の通り、金具がぶっ壊れて宙ぶらりんになっています。これは2つあるカシメの一方が取れてしまっています。こんなことはちゃんとカシメ留めできていれば起こりえないのですが…まぁ留め方が甘かったんでしょうね。このままでは修理できないので分解していきます。

縫い糸をすべて外した状態です。こんなこと言ってはダメかもしれませんが、私が嫌いなタイプのやり方です。極薄に漉いた革に芯材を貼ってミシン縫いした製法ですね。何が嫌いかというと、純粋に革の耐久性が落ちるからです。見た目はきれいになりますが、革が薄いために耐久性がどうしても犠牲になります。芯材で硬さや質感をコントロールするのはブランドものに多い作り方です。革でありながらも薄くてカッチリと作れるので、好きな方は好きだと思います。

カシメが片方だけあっても意味ないので、ニッパーでぶった切って取りました。もう一方はガッチリと付いていたので、やはり金具の不良か、取り付けミスで壊れたのだと思います。カシメって意外と取り付けが難しくて、失敗すると斜めに嵌ったりして耐久性が落ちるんですよね。

ちなにみ内側はこんな感じでした。内張は革財布などでよく見るサラサラした布で、外の革は超極薄です。0.5㎜かそれ以下だと思います。縫い自体はとてもきれいで、特に問題はなさそうです。

糸を全部外して、アウターとインナーを裏側から見てみました。紙のように薄い革に芯材を貼って強度をコントロールしています。うーん、やっぱりこの製法って好きになれません。裏側がハリボテ感があるんですよね、まぁ外から見たらわかんないんで裏がどうなってようと関係はないのですが。

構造がわかったところで、カシメ留めしていきます。ちょうど在庫でいいサイズの両面カシメがあったので留めていきます。ハンマーと打ち具で取り付けるので、基本的には外れません。

さて、縫っていきますが、アウターとインナーはもともと両面テープで仮止めしてあったので、私も同様に両面テープで位置合わせして縫っていきます。もともとは白い糸でしたが、全体の雰囲気を合わせるために赤の蝋引き糸で縫っていきます。

こんな感じに縫えました。糸が本体に馴染んで違和感ないと思います。アウターとインナーにはすでに縫い穴が開いていたので、穴の位置がズレないように正確に合わせていきました。一個でも穴がズレるとおかしなことになるので、ズレていかないように注意しました。

最後に全体が乾燥してくたびれていたので、保湿とコーティングのためにミンクオイルをたっぷりと塗りこみ、ワックスコートで表面処理を施します。革をよく見るとパサついてひび割れしている部分がありましたが、これで少しは寿命が延びるでしょう。

これで完成です。もともとの構造が繊細なので、革製品としての耐久性は微妙なところですが、使い続けられるでしょう。皆さんも革小物を買うときに「どんな構造で作られているのかな?」と気にしてみてください。ぱっと見で綺麗でも、薄々の革を芯材でコントロールして作った物は耐久性がイマイチです。私もブランドの小銭入れを使っていたことがありましたが、細かい部分がヒビ割れてきました。

今なら原因がわかります。革の薄さです。革が薄ければ薄いほど保持できる油分が少ないため、水分と油分が不足してひび割れが起こりやすいのです。3年くらいの寿命と割り切って使うしかないですね。使わずに放置しても油分が飛んでヒビ割れします。本当にこまめに手入れしてあげると持つかもしれませんが、やっぱりよく動かす部分はひび割れしやすいです。

というわけで、今回は革製品の修理の話でした。ほな、また。



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