スポイチ編集長日誌

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農産物からの暫定基準値を超える放射性物質の検出は今後も続くか?

2011年05月22日 | 社会
これは食べ物(農産物)に関する話なので、くれぐれも自己の責任において判断して欲しい。
土壌に降着した放射性物質が、どのように振る舞うのか、つまり放射性物質が農産物に吸収されて濃縮が起こるのか、言い換えれば今後も汚染された野菜類が発見され、出荷停止や出荷自粛になるのだろうかという点は、農業関係者だけでなく、消費者も関心が高いと思われる。
以下は土壌に降着したセシウムの動きについての研究である。

原発事故関連情報(1):放射性核種(セシウム)の土壌-作物(特に水稲)系での動きに関する基礎的知見―日本土壌肥料学会
http://jssspn.jp/info/secretariat/post-15.html

(関連ページにストロンチウム等についての記述もある。)

原発事故後に残留放射性物質の暫定規制値を超える作物が、ほうれん草、かき菜、キャベツ、椎茸類、そして茶葉という順で出て来たことは、上記の記述を裏付けているように思える。

まず、3月15日以降の放射性物質の大量飛散(フォールアウト)とその後の降雨による降下により、露地栽培で既に収穫間近となっていた作物類が汚染された。

この時期に基準値超えが出たのは、
ほうれん草、かき菜(カキナ)、キャベツ等。
これらはいずれも、
1.露地栽培で
2.表面積の大きい葉物野菜
である。

これらは空気中のセシウムが直接付着または降雨によって表面の広範囲に付着したため、事故直後に高い値を示したと思われる。
その後、露地栽培の椎茸などに基準値超え作物が出た。キノコ類はセシウムを吸収蓄積しやすい性質を持つとされる。

さらに5月に入り、タケノコ、茶葉(荒茶)で基準値超えが報道された。
とくに茶葉は福島第一原発から遠く離れた神奈川県産などで検出されたため、衝撃を与えた。
これらは新芽の部分を使用する作物で、さらに茶は煎って濃縮するという工程を経るため、高い値を示したと思われる。

なぜ今頃になって、しかも遠隔地の茶葉から基準値を超えるセシウムが検出されたかは上記等の知見をもとに説明できる。
すなわち、露地栽培の茶葉に直接、または土壌にセシウムが降着。さらに近隣の水源からも農業用水として流れ込んだ。これらはこの時点ではいずれもごく低濃度であったと思われる。
しかし、株が根から吸収した放射性物質が新芽部分に濃縮され、さらに製造過程で濃縮された結果、神奈川のような福島第一原発からの遠隔地でも暫定基準値超えという結果が生じたと思われる。

上記で説明されているような土壌中におけるセシウムの特性を考えた場合、福島からある程度の遠隔にある土地(ホットスポットは除く)では、今後カリウムの積極使用などにより、これから収穫される農産物からも暫定基準値を超えるようなセシウムが検出されるとは考えにくい(福島第一がこれ以上大規模に環境中に放射性物質をまき散らさなければの話)。

今後の対策としては、茶葉の場合は茶葉そのものを丸ごと食べないよう注意喚起するとか、産地ブレンドでのkg単位での濃度低減による基準値超えの回避などが行われるだろう(それがいいか悪いかは別として)。
またシロかクロかを判断できない場合には、同じ産地の同じ品目を長期に渡って摂取し続けるのはリスクがある。

福島第一からある程度離れていれば、そこで作業する人の被爆という問題はあるが、堆肥(カリウム)の投与などにより、野菜などの農作物への吸収・濃縮はある程度抑制できるのではないかということが上記の知見から読み取れると思う。今後は農産物からの基準値超えセシウム検出は一段落し、関心は畜産物、海産物へと移行していくのではないか。
しかし福島第一直近の場合、ストロンチウムやプルトニウムの問題があるため、これらが検出されている土地では早期の作付け再開や出荷は難しいと思われる。そもそも福島第一からどのような核種が環境中に漏洩したかさえいまだ明らかではない。


農地以外の場所、森林や住宅、アスファルトやコンクリートに降着したセシウムの振る舞いについては、チェルノブイリ事故のIAEA報告書に記述があるようだ。以下はその抄訳。

IAEA報告書(2006): チェルノブイリ原発事故による環境への影響とその修復 - ニューメリカルテクノロジーズ株式会社
http://www.numtech.co.jp/column/20110520/


簡潔に言うと、放射性セシウムは降着直後は雨・風で流れやすいが、時間と共に定着し、風雨でも流れにくくなる。このことは、
・首都圏での3/15~16日の放射性プルーム到達による放射線量急上昇とその後の減少。
・3/21~22日の放射性物質を含む降雨による降着と、河川への流入による水道水や下水汚泥からの検出。
・その後の放射線量減少率の鈍化。
・現在の放射線量の安定化(強風が吹いても豪雨が降っても放射線量がもはや一定)
を合理的に説明している。

また、上記を見ると、牧草はどうせ人間が直接食べないのだから規制値は緩くてよいのだという考えは間違っているということになる。

ものごとの対策を立てるには、現在のデータをもとに、今後どういうことが起こるかという
「想像力」
が重要になる。


今までは、「原発は安全だから事故を起こさない」という神話があった。
これはつまり、「原発は安全なんだから事故を想定した訓練など不要」と事故訓練への参加を拒否した自治体の長の発言に典型的に見られるように、放射性物質漏洩時の対策を考えること自体がタブーという空気を生み出すものであった。
原発事故によって環境中にバラ撒かれた放射性物質の研究や対策を考えるなどということは、電力会社をはじめ"原子力村"を敵に回す行為であった。なぜなら、彼らにとって日本の原発は事故など起こさない絶対神であり、「反共」を拠り所とする国策の具現だったのだから。その事故を想定する者にまっとうなスポンサーや予算がつくはずはなく、下手をすれば所属組織からパージされる可能性さえあった。
だが、もはや安全はタテマエであり、神話であることがバレてしまった。
しょせん神話は神話。現実を変えるものではない。
「起こる可能性が低い事は考えなくてよい」が、いつの間にか「起きて欲しくないことは考えない」や、「不吉だから考えてはいけない」になっていき、対策や研究自体をタブー視した結果、我が国は先の大戦でも致命的な大敗を喫した。それと同じことを原発でも繰り返してしまった。

環境中の放射性物質の研究も、日本の原発事故を想定したものではなく、冷戦中の核実験やチェルノブイリ事故によって放出された放射性物質の研究という名目で細々と行われていたようだ。
ただ単に年を食っているだけの"村人"たちが「安全神話」の上にあぐらをかいて対策を怠っていた同じ頃に、「こんなこともあろうかと」と事前に考えて、権力を持った村人達から睨まれない程度に目的を偽装しつつ着実に準備をしていた人は確実に存在する。

福島第一直近の範囲での農畜産業の再開は現状では難しいだろうが、農業や畜産を営んでいる人は、どうか、絶望しないで欲しい。諦めこそが人を殺してしまう。
「原発は事故を起こさないのだから事故対策は不要、汚染除去の研究も不要」などという幻想が潰えた今、放射線や放射性物質に対する研究や、対策のための実用的な技術がこれから次々と出てくるはずだ。



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