スポイチ編集長日誌

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演出としての「シルバーの銃」から見た「叛逆の物語」

2014年07月01日 | アニメ
映画やアニメなどのフィクション作品に銃器が登場することは多い。
銃にもいろいろな種類があり、銃の種類の違い以上にビジュアル面でよく目立つ大きな違いとしては、銃にはその材質や表面仕上げの違いによって、大きく分けて黒色のもの(ブラックモデル)と銀色のもの(シルバーモデル)とがある。

今回は、フィクション作品においてキャラクターが使用する銃の色(黒か銀か)によって、そのキャラクターの属性を演出することもできるということを紹介してみたい。
例によっていくつかの作品のネタバレになっているので、その点はあらかじめご承知おきください。


●銃の色に象徴されるキャラの属性
まず、近代以降の銃の表面は、金属むき出しではなく、表面仕上げの違いによって黒色に見えたり銀色に見えたりするのだが、フィクション作品において、キャラクターにどのような銃を持たせるかを考える場合、銃の種類とともに、「どんな(どちらの)色の銃を持たせるのか」は重要なポイントになってくる。

一般的に言って、色が与えるイメージとしては、たとえば作品の舞台が中世ファンタジー的な世界観などの場合では、なんとなく、
銀(シルバー)=善、光
黒(ブラック)=悪、闇
のようなイメージが我々にはあるかもしれない。
しかし、これがこと現代劇における銃器の色となってくると、主人公側は黒色の銃(ブラックモデル)を使用し、主に敵側(悪役)が銀色の銃(シルバーモデル)を使用しているというケースが多い。
これにはもちろん例外が多くあるが、主人公がシルバーモデルを使う場合には、ダークヒーローや元犯罪者といった設定が与えられることが比較的多く見られる。

過去の有名な映画作品においても、たとえば「ダイハード」のアラン・リックマンが使用したH&K P7のシルバーモデル、「レオン」のゲイリー・オールドマンが使用したS&W M629のノンフルートシリンダーモデルなど、シルバーの銃は悪役キャラクターのエキセントリックさや残虐性を表現する記号としてしばしば象徴的に用いられる傾向がある。

また、銃によっては、ブラックの部品とシルバーの部品を組み合わせた「ハーフシルバーモデル」というものも存在する。とくに自動拳銃に多く見られ、最初からメーカーがそのようにして売っているものもあるにはあるが、たいていはニコイチやカスタムフレーム、カスタムスライドなどを組み合わせて作られるカスタムメイドモデルだ。

フィクション作品におけるハーフシルバーモデルは、それを持つキャラクターの「善と悪」「光と闇」といった二面性を象徴するための小道具として使用されることが多い。

有名どころでは、「ニキータ」の主人公ニキータは、レストランでの銃撃戦のシーンでフレームシルバーのデザートイーグルを使用する。
このツートンカラーの銃は、元チンピラの殺人犯だったニキータが、政府機関の工作員として初の実戦任務に放り込まれるという場面で、国家秩序の維持と暗殺テロという二面性をもつニキータというキャラクターをビジュアルで象徴するアイテムとして印象深く登場する。

また、「フェイス/オフ」では主人公のFBI捜査官であるショーン・アーチャー(ジョン・トラボルタ)がSIG P226のスライドシルバーモデルを使用していた。彼は事情によりテロリストのキャスター・トロイ(ニコラス・ケイジ)と顔だけが入れ替わってしまうのだが、彼の持つP226は当初FBI捜査官により、途中からテロリスト(見た目はFBI捜査官のまま)によって使用されるので、善悪双方によって使用される武器となることを見た目で象徴させた演出ともいえる。

あるいは「スピード」の爆弾魔(デニス・ホッパー)は、最後のシーンでH&K MP5K(正確にはSP89)のフレームシルバーモデルを使用していた。
これもまた、「元警官でありながらテロリスト」という善悪二面性の表現であり、「ハーフシルバーのSMG」という通常あり得ないカラーリングは、エキセントリックなキャラクターの象徴だったともいえる。


●「叛逆の物語」におけるシルバーモデルの意味
このように、キャラクターの持つ銃の色(黒か、銀か)が演出上重要な意味を持つこともある、ということを踏まえた上で、「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語」における、暁美ほむらの使用銃器の選定を「銃の色」という観点から改めて見てみると、興味深い点が浮かんでくる。

暁美ほむらと巴マミの銃撃戦は、シナリオ全体から見れば実は「茶番劇」の一部だったとか、実際は互いに相手を牽制していただけだったとも言える。
しかし、その銃撃戦の中で唯一ほむらが至近距離から本気で命中させに行っていたと思えるのが、シルバーモデルであるH&K P7とワルサーP5(シルバー)による発砲シーンだったのは、何らかの意図を持たせてのものと見ることも可能である。

最も不可思議かつ興味深いのは、マミさんとの銃撃戦のラストで互いに銃を突き付け合うカットでは、当初ほむらが持っていたのはベレッタPx4、その後時間停止が解除され、足場や壁が次々崩壊するカットの後はワルサーP5(ブラック)に変わっており、これを投げ捨てて今度はワルサーP5(シルバー)を取り出して自分の頭を撃ち(トリックだったが)、次いでマミさんの脚を撃ち抜くという、一連のほむらの行動である。

P5(ブラック)を投げ捨てておいて、また同じP5(今度はシルバー)を取り出すというのは、謎めいた行動ではある。単に弾切れだったとか仕切り直しの意図と見ることもできるが、捨てたものとまた同じ型の銃を取り出すというのは、多彩な銃を取り出しては次々と使い捨てにした、その直前までのほむらの戦闘スタイルと比較した場合、強烈な違和感を放っている。

しかし、過去の多くの作品において、銀色の銃が悪や闇の象徴として使われてきたことを念頭に置きながら、「銀色の銃=魔法少女ではないものの象徴」として捉えてみた場合、「自分の頭」と「マミさんの脚」を撃ち抜くために(=本気で自分と仲間を傷つけるために)、わざわざ改めて銀色の銃を取り出した、という解釈をすることができる。

また、その後の美樹さやかとの会話の最後にほむらが取り出した銃は、M92FSだったが、このM92FSはテレビ版で使用したものとは異なり、スライドおよびフレームがシルバーになっている、いわゆるINOXモデルであった。
しかし、この92FSはバレル(銃身)だけが黒色に見える。表面仕上げの違い、光の反射でそう見えるだけという解釈もできるが、同様に、あのM92Fを取り出した時点で「ほむらの記憶」が不完全ながらほぼ戻ってきた状態であることを象徴する意図がこめられていたと見ることもできる。つまり、黒い銃身だけが唯一残った「魔法少女としてのほむら」の部分であり、そのためにほむらは引き金を引かなかったと見ることもできる。

このように、テレビ版から魔法少女として基本的には黒い銃(ブラックモデル)を使っていたほむらが、「叛逆の物語」では時おりシルバーモデルを交えて使用するようになり(そのシルバーモデル使用時には本気で仲間の魔法少女を撃ちにいっている)、M92FSの「ほとんどシルバー」モデルを経て、ついに自分が何者であるかを自覚した時、「シルバーのデザートイーグル」で自らのソウルジェムを撃ち抜く。

これは、ほむらが徐々に魔法少女ではなくなっていく(魔法少女ではないことを思い出していく)さまを暗示する演出と捉えることもできる。

とするならば、「もう、魔法少女でさえない」者となったことを自覚したほむらが、自らのソウルジェムを撃ち砕くために取り出した銃が、「かつてまどかを殺した」デザートイーグルのシルバーモデルであったことは、もはや必然だったといえる。


むろん、以上は過去のフィクション作品において使用されてきた銃器のシルバーモデルやハーフシルバーモデルの扱いの傾向から当てはめて見た一つの解釈に過ぎず、また他の作品におけるハーフシルバーモデルやシルバーモデルも、制作側にとっては特別な意図などなく、単に演出上「ちょっと変わってて見た目がかっこいいから」という程度の理由でキャラクターに持たせてみただけだったのが、長い間の積み重ねの結果として上記のような傾向が出てきただけということもできる。

しかし、フィクション作品を観たりする場合は、キャラクターの使用銃器の選定一つをとっても、いろいろな演出が可能であるということを頭の片隅に置いておくと、作品世界のより多様な楽しみ方が可能になり、また、創作活動においてもキャラクターのより効果的な演出方法等の助けになるだろう。



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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2017-03-01 04:23:22
フェイスオフのP226については自分も長年同じことを考えてましたが、同じ意見の人に初めて会いました。

ほむらの銃に関しては公開当時同人誌で同じ考察をされていた方がいましたね。
創作物でただマニアックな銃を並べるだけでなく、演出の一環として効果的に利用される銃器はマニアとして嬉しく考察のし甲斐があるのですが、如何せんあまり見かけないのは、銃にそこまで注目してくれる人が少ないからだと思います。
とても残念なことですが。
返信する
Unknown (spoichi)
2017-03-03 21:01:33
こんにちは。
登場させる銃の選定や演出にまで気を配った作品は確かにあんまりないですね。気を配っても注目する人は極少数ですので。
もう3年近く前の記事になってしまいましたが、機会があればまたこういうのをやってみたいです。
返信する

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