自宅の向かいには大層な屋敷があり、日々幾人かの庭師がやってきては、ぱちりぱちりと音を立てて枝葉を切ったり、かと思えば小さな銀色の粒を辺り一面放つように水をやっている。
午後の光が鬱陶しいと言わんばかりにうなだれる紫陽花。
可憐に雨をまとっていたライラックは気づかぬ内に去っていたようで、代わりに咲き誇る薄黄色のその花の名を、私は知らない。
楽しみなのは芝刈りで、庭師らがそれは重そうな機械を右や左やと振り回すと、一斉に刈られた緑の僅かに湿り気を帯びた香りが、こちらの窓に向かってひたすら折り重なってなだれ込んでくる。
そうすると何故だか数珠繋ぎになっているはずの「今」が、ふとぱらぱらと解けたかのような感覚に陥って、私は一人部屋の中で遠い過去を思い出してみたりするのだ。
目を開ければ、夏。