コラム・スノーマン~これじゃ悟りは臨めますまい

忘れたくない、或いは一刻も早く忘れたい日々について

ジャパンに魅せられて

2009-03-25 | コラム・エッセー

ここ数日間日本中を沸かせたWBCの日本チーム「サムライジャパン」の活躍ぶりには、心から感動した。

大してに野球を知らない私ですら、イチローやダルビッシュ、村田のプレーには胸を打たれた。

こんな風にプレーで人の心を動かすことはきっと並大抵のことではないのだろう。

日本を代表し己の使命を全うした選手達は、まさにサムライを名乗るにふさわしい。

万歳、サムライジャパン!!

……さて。

この日本チームの優勝に感極まった私は、それからすっかり「ジャパン」に魅せられている。うなされている。

自分も何かしらの「ジャパン」に入りたい。

何でも良い。

何か無いだろうか、私が誇らしげにユニフォームを着れる「ジャパン」は。

…「ぺチャパイジャパン」

駄目だ。余裕で入れるにしても代表として満面の笑みで手を振る自信が無い。

「髭フェチジャパン」。…う~ん…今ひとつ格好良さに欠ける。

いっその事「ジャパンに入りたいジャパン」はどうか。長い上に露骨さが嫌らしいか。

現在は中央区在住であるので「中央区ジャパン」ならいけそうだがまず第一に意味が分からない。

それに比べはっきりと意味が通じるのは「国籍はジャパン」であるが……。

そうだ、葬式に参列した際に受付から出棺までやたらと作法の手順がよい「トムライジャパン」はどうだろうか……自信もある上に、これなら神妙かつ近寄り難い雰囲気がいい味出してるのではなかろうか…。

いやっ違う、違う違う違う!!!

どれもイマイチだっ!私のイメージする「ジャパン」はもっと晴れ晴れとしていて、堂々としていて、芯の強さを感じさせねばならんのだ!

…どうやら私の「ジャパン」探しはしばらく続きそうである。

余談だが日本チームが優勝した昨夜彼氏と会った時、彼が嬉しそうに言い放った言葉に私は耳を疑った。

「俺、明日のWBC優勝決定戦、本気で楽しみだよ。」

哀れな事に奴は試合日を1日勘違いしていたのだ。

聞けば夜に放送されたリプレイすら見逃したという。

阿呆にも程がある。

自らを「落武者ジャパン」と称していた彼の眼に、うっすらと涙が浮かんでいるのを私は見た。


血液不足

2009-03-22 | コラム・エッセー

赤十字の調べによると、道内に住む人々の献血離れが進んでいるらしい。

特に10代、20代の若者の多くが献血を嫌がるのだという。

なんでも今すぐ必要な分ではなく、今後の為にストックする分の血液が不足しているのだとか。

いずれにせよ由々しき問題である。

「いやぁ~、なんかぁ~、怖いっスよねぇ~」

マイクを向けられヘラヘラと笑いながら前髪をいじる少年をテレビで見て、私は歯軋りをした。

自慢じゃないが自分は10代の頃から献血に志願してきた。

神風特攻隊員の如く献血カーに乗りこんできた。

だがしかし!私の気持ちとは裏腹に、毎度毎度採血してもらえずに帰されるのだ。

あまりにも血圧が低いと採血出来ないらしい。

献血もせずに献血カーを降りるあの無念を。本懐を遂げられずに去るという無念を少年!お前にはわからんであろう!?

よいか、全ての正常な血圧の若者に告ぐ、ただ今より無益な興奮に貴重な血液をまわすことの一切を禁ずる!

合コンに行く前に献血せよ!

それに対し不服なものは献血しながら合コンせよ!!

…………大変申し訳ない。偉そうに無謀な忠告をしてしまったものの、恥を怖れず正直に告白すると自分が献血しようとした最初のきっかけはまだ18歳であった頃、たまたまとある台湾人に占ってもらった際に

「アナタノ場合ハ運気ヲ上昇サセル為ニ、年ニ一回献血シナキャダメヨゥ。」

…と言われたからなのだ。

神社で、街角で、あの赤い十字マークを目にする度に、胡散臭いとは思いつつもやっぱり台湾人占い師のお告げが気になり袖をまくり上げたのだった……。

すっかり大人になってしまった今ではさすがに、本当に血液を必要としている方のために献血したいとは思っているが、面倒なことが続くとフト「きちんと献血してこなかったせいではなかろうか」と胸中に一抹の不安がよぎる事がある。

どうやら例の少年よりも私の血液の方がよっぽど顕微鏡でも見えない不純物が混ざっていそうである。

ちなみに献血カー。

あの中になんらかの血圧上昇グッズを搭載しておいてはもらえないだろうか。

そんなものが無いのだとすれば幾らでも発案に協力できるのに、と薄青い血管の浮き上がった腕をさすりながらぼんやりと妄想している。


「こだわりの旅」放送中!

2009-03-20 | 瓦版

昨年4月より、週に1度ラジオで旅のコーナーを持たせていただいております。

JRで道内をブラブラ旅して、その町を歩いてみた感想や、見たもの、食べたもの、(時には遭遇した珍事件)などを私なりにお伝えしております。

本来ならば今年の3月いっぱいで終了、ということだったのですが大っっ変ありがたいことに数々のお問い合わせを頂いたらしく、とりあえず9月まで続行させていただくことになりました。

リスナーの方々には私の拙い話にお耳をかしていただき…もう…本っ当に感謝しております!!

改めてありがとうございます!

このブログを御覧の皆様も、どうぞタイミングが合いましたらお聴きくださいませ。

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HBCラジオ(1287kHz)

『一平・直子のほっとスマイル!』 月~金、朝9時より放送中

「JR、ちょっと旅してみませんか~手塚越子のこだわりの旅」

…毎週木曜 朝9時20分頃より放送

どうぞよろしくお願いいたします。


待ち侘びた夢

2009-03-19 | コラム・エッセー

野球の「ブルペン」が監督の名前ではないと知ったのは半年前のことだ。

絵本の「長靴下のピッピ」が長靴の下に住む妖精の物語ではないと知ったのは先月のことだ。

小学生の頃「大鶴義丹は大・鶴義丹ではない」という事実を友人から告げられた時に、物事はよくよく調べてから脳にインプットせねばならないと固く心に誓ったものの、あれから20年、私の勘違い・思い込み癖は未だに治らずにいる。

つい確認を怠ってしまうというのもまた私の悪しき点だ。

カブレ用の軟膏で歯を磨いたのは幸いにも1回で済んだのだが問題はアイボンで、何回やらかしてもモンダミンと間違えて口をゆすいでしまう。

これに加えて早とちりの持病も抱えているというのだから、我ながらほとほと救いがたい人間だと途方に暮れている。

昨日の事。

ゴールデンタイムの番組の合間に流れるCMを見て、ついに堪らなくなって彼にメールを送った。

「一体いつになったら自分に“爽健美茶”のCMの出演依頼が来るのか」と。

そう、私には待ち侘びている事が幾つかある。

ドラマ「相棒」の犯人役。いい加減自分がキャスティングされてもいいのではないだろうか。

先日親友の結婚式のために選んだ黒いドレスは、「徹子の部屋」に呼ばれた時にも着るつもりで購入した。

中でも爽健美茶のCMの出演依頼は、待つ事かれこれ10年程経っている。

念のために申し上げておくが私はさして容姿が秀でている訳でもなく、ましてや人様の前で他の誰かを演じたりといった華やかな職業に就いている訳では一切無い。

だがしかし私の様な何者でも無い一市民でも、ある日突然天命の如く何かに抜擢されることがあるかもしれない。

それは例えばジャスコのレジで会計を済ませたその瞬間に。

或いは岩盤浴で尻に張り付いたズボンを直しているその瞬間に。

「あの~…ワタクシこういう者なのですが…」と名刺を差し出されることがあるかもしれない。かもしれない。

奇跡は予告も無しにやってくるからこそ人生は面白いのだ。

彼から返ってきたメールを読んで私は飛び上がった。

「え?本当に出たいの?俺コネクション持ってるけど話してみようか?」

まさに棚からボタ餅、突如現れた奇跡に私は「ぎゃひぃっ」と絞め殺されかけた猿のような奇声を上げ、すぐさま彼にメールを送った。

「どっ…どどどどどどういうこと!?」と。

便所にでも行ったのだろうか、すぐには返事は来なかった。

その間私は居間でひとり携帯を握り締め、背中に汗を感じながらも冷静に考えてみた。

彼には意外な知り合いが多い。

有名人の隣で酒を飲む奴の写メールだって見た。考えられない事は無い。

それから脳内は一気にフル回転しだした。

私は琵琶湖に、支笏湖に、カスピ海に足を浸しては爽健美茶を片手にくるくると回った。

湖でなけりゃ森だ。

私は木陰にCW・ニコルでも潜んでいそうな森で、爽健美茶を片手に目一杯の木漏れ日を浴びた。

そうだその前にムダ毛の処理をせねばならぬ。明日はジャスコで剃刀を買おう。3枚…いや5枚刃のやつを。

数十分経過した頃、彼から返信があった。

「嘘だよボケ」

…束の間の夢は終わった。

私は琵琶湖に、支笏湖に、カスピ海に、そしてニコルの森に別れを告げて居間に帰ってきた。

その後燃え上がるように込み上げたこっ恥ずかしさと同時に感じたのは、落胆よりもむしろ安堵感であった。

庶民はやはり、庶民であることが一番落ち着くのかもしれない。