人はエレンタールのみで生きるのではない

ドクター(博士)だけどドクター(医師)ではないクローン病患者の日記、思うこと

News from DDW 2006

2006年05月31日 01時53分46秒 | クローン病情報

News from DDW 2006

少し話が古いですが、DDW 2006(消化器病の国際会議)での22日付のプレスニュースにおいて、クローン病の新薬に関するディスカッションのハイライトが掲載されていました。主な話題はHumiraCIMZIA、Natalizumab(商品名Tysabri)の効果、安全性に関する三点でした。前者2つに関しては過去に記事を取りあげたので省略しますが、一時開発中断となったTysabriがクローン病の治療薬として再検討されている動きがあるそうです。Tysabriはヒト化抗α4インテグリン抗体で特定のクローン病患者に効果を示すものの、副作用による進行性多病巣性白質脳障害 [Progressive Multifocal Leukoencephalopathy (PML)]で死亡が2件見られたために、2005年に一時開発が中断されていました。しかし、製薬会社側はTysabriの安全性に対するデータを蓄積しており、近い将来再び市場に参入することがあるかもしれません。


浜松医大講義ネット公開

2006年05月27日 21時41分23秒 | 日々の雑記

浜松医大講義ネット公開 正確な医療情報を市民に 第1弾は「生物科学」(静岡新聞)

我が地元の浜松医大が講義情報のネット一般公開を始めました。今後、一般の人が理解しやすい内容を選んで講義数を増やし、且つ浜松市内で開くシンポジウムや市民講座なども併せて公開する予定の様です。この手のネット公開はOCWが有名ですが、将来、都内や大阪のIBD講座などもネットでライブ公開してもらえると、地方のクローン病患者にとってはありがたい話ですね。

【関連リンク】
MediaDEPO - 浜松医大ネット講義
MITにならえ──国内6大学が講義をネット公開(ITmediaニュース)
日本OCW連絡会


クローン病と遺伝子

2006年05月24日 18時34分58秒 | クローン病情報

Immune Signals Of Variations Of A Single Gene Linked To More Severe Crohn's Disease (Medical News TODAY)

クローン病の原因は未だはっきりと分かっていませんが、家族内でクローン病を患っているケース(ユダヤ系アメリカ人は一般のアメリカ人に対して3倍もクローン病に罹り易いとの統計があります)もあり、何か遺伝的な原因があるのではないかという考えから、欧米を中心に遺伝子の研究が盛んに行われています。この手の研究ではNOD2の研究(ちなみに日本人のクローン病患者とNOD2との関連性は無いとの報告があります)が盛んですが、アメリカの研究機関NIHによりますと、TLR5がクローン病に関与しているのではないかとの報告がありました。TLR5は食中毒などの原因となる細菌が体内に進入してきた時に、腸内壁で進入を検知するセンサーの役目を果たしています。そのためこの遺伝子に何らかの変異がある時、炎症性腸炎を引き起こす可能性があると考えられています。


新薬あれこれ

2006年05月23日 18時54分03秒 | クローン病情報

5月23日付けのMedical News TODAYにおいて2つ新薬に関するニュースがあったので紹介します。

Promising Pivotal Phase III Data Show Abbott's Humira(R) (Adalimumab) Maintained Clinical Remission In Patients With Crohn's Disease in One Year

Abbott社(製薬メーカー)は、Humiraがクローン病を対象とした第3相試験において有効な結果を示したとの報告を発表しました。Humiraとはヒト化抗TNF-α抗体で、炎症性サイトカインであるTNF-αと結合することでTNF-αの作用を無効化し、炎症を抑えると考えられています。

New Study Shows Novel Therapy May Produce Early Remission In Crohn's Patients

現在行われているDDW 2006(消化器病の国際会議)において、ノースウエスタン大学のAlan Buchman氏はTeduglutideがクローン病に対して有効であるとの見解を示しました。Teduglutideとはglucagon-like peptide-2(GLP-2)のアナログ(同様の作用をする物質)です。GLP-2は天然に存在するホルモンの一種で、消化管細胞の発達、増殖、維持に深く関与していると考えられています。

【関連リンク】
Teduglutideについて(英語)
DDW 2006


Remicade Approved For Children

2006年05月22日 17時16分57秒 | クローン病情報

Remicade Approved For Children With Crohn's Disease

21日付けのMedical News TODAYによると、アメリカでの子供に対するレミケードの認可が下りたようです(私自身レミケードを使ったことがないのでよく分かりませんが、日本では子供に対するレミケードの使用はNGなのでしょうか?)。レミケードについては副作用の問題であれこれ議論がありますが、症状が重いにもかかわらず副作用を恐れて薬を使わないのはナンセンスですし、かといって症状がたいしたことないにもかかわらず薬を使うのもばかげてます。要はバランスです。ともあれ選択肢が増えることはありがたいことです。

【関連リンク】
FDA Approves Remicade for Children with Crohn’s Disease


新薬承認、迅速化へ指針 臨床試験を国際化

2006年05月21日 19時11分28秒 | クローン病情報

新薬承認、迅速化へ指針 臨床試験を国際化(朝日新聞)

治験もようやく国際化の方向に進み始めたようです。来年からは登録された治験データならインターネット上で誰でも閲覧できるようになるとのことで、「やっぱすごいなインターネット!グローバル!グローバル!」などと思う今日この頃です。

【関連リンク】
薬の治験データ登録制に、ネットで公開…来年から
The World Health Organization announces new standards for registration of all human medical research


レミケードとその副作用

2006年05月20日 11時26分34秒 | クローン病情報

Cancer Risks to Remicade® and Humira® Explained

5月19日付のCCFAニュースで、RemicadeとHumira(日本では未認可)によるガン化のリスクについて紹介されていました。簡単に要約しますと、これら抗TNF-α抗体の使用によりガン(リンパ腫、皮膚、消化器、乳房、肺)および重篤な感染症にかかるリスクはそれぞれ3倍、2倍へと上がると推測されています。もちろん投与量にもよるのですが、レミケードでいえば8週間毎で6 mg/kg以上であるとリスクが高まるそうです。ただし、これら抗TNF-α抗体の投与によるガン化のリスクは初期においてのみであり、長いスパンにおけるガン化の進行とは関係ないそうです。

【関連リンク】
杉田(2003)インフリキシマブ(レミケード®)―抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤―の免疫·炎症性疾患に対する薬効薬理 :日本薬理学雑誌 Vol. 121:57-64 (Free PDF)

【追加リンク】
TNF阻害薬が癌(がん)、感染症リスクを増大(NIKKEI NET)


夢見る人

2006年05月18日 22時23分16秒 | クローンな日々

久しぶりにNicky Hopkinsの「The Tin Man Was A dreamer(夢見る人)」を聴く。この人、一般の知名度はいまいちなのですが、ジョン・レノン、ジョージ・ハリソン、ローリング・ストーンズ、ジェフ・ベック、キンクス、フー、などなど、実に500近くの作品で名演を残してきた知る人ぞ知る名ピアニストなのです。最近知ったのですが、このNicky Hopkins、なんとクローン病を患っていたことが判明。自分の持っているライナーノートを改めて読み返しますと、「63年の5月、かねてからの持病だったという胃病の為に入院を余儀なくされ、以後、64年の12月まで、19ヶ月あまりの間、療養生活を送ることになる」とあります。当時はさらっと読み飛ばしていたのですが、実はこれがクローン病だったとは…。どちらかというと裏方的な活躍をしてきた人ですが、その影にはいろいろ苦労があったようです。

【関連リンク】
Nicky Hopkins, "Session Man" (英語)


読書~嘔吐~

2006年05月17日 01時52分17秒 | 日々の雑記

クローン病と診断される前後から、カミュ、カフカ、安部公房などのいわゆる不条理ものを読み返していたのだが、今日ようやく不条理文学の古典とも言えるサルトルの「嘔吐」を読み終えた。サルトルに言わせると、世界は偶然で不条理である。確かに世の中不条理でいっぱいだ。ニュースを見れば毎日のように、殺人、天災、事故、etc. etc. だが、これら不条理について深く考える人は少ない。大体考えたところで答えなんか無いのが不条理だし、暗い気持ちになるに決まっているからだ。しかし、入院中に強く感じたのだが、いざ自身に不条理(病)が襲い掛かってきたとき、同時に心の病に罹る人は多い。多くの場合、不条理について考えることを無意識的に避けてきたからだと思う。確かに不条理は生きる力を削ぐ。だが、不条理を骨の隋まで知ることは、正真正銘の生きる力へと変わり得る。


iTunesと音楽

2006年05月14日 23時28分21秒 | 日々の雑記

iTunes

自身で趣味と言えるのは音楽鑑賞ぐらいであり、自分でもアホかと思うくらい大量にCDを買い込んだものだが、CDが多くなって困ることは「あの曲が聞きたい」と思ってもなかなか探し出せないことである。やっと探し出せたと思ったらケースにCD入ってなかったりするし…。そんなわけでここ最近、一念発起して手当たりしだい手持ちのCDをパソコンに取り込んでいる。ようやく8割方取り込んだのだが、おかげでだいぶアクセスが楽になった。iTunesのパーティーシャッフルでランダムに聴いていると、今になって良さがわかる曲も結構あったりする。こうやってiTunesで遊んでると当然iPodが欲しくなるのだが、そんな余裕があるわけも無く、「iPodプレゼント」と銘打つ懸賞にせっせと精を出す毎日である。