尺八をメインにした五重奏曲がざっと完成した。
尺八のパートに問題は無いか、無い場合でもより良い書き方はないか、実際に演奏して頂いて確かめようと、尺八のプロを訪ねた。外は銀世界。
その奏者とは初対面だが、2年半前、奥様にお世話になった。
EXPO愛知万博「剣道フェスティバル」の作曲募集で最優秀となった邦楽合奏曲の、二十弦琴の譜面をFaxして確かめて頂いたのだ。
その曲の演奏者を集める段階で、「琴は2人いないと出来ないと言われた」と主催者から伝えられ、元々琴は2人の編成で書いたので、それでは4人必要という事か?その分のギャラはどうする?という話になり、本当に2人いないと出来ないのか確かめて頂くために。
結果は何の問題も無く、1人分の楽譜は1人で出来る、との事。
奥様にたどり着くまで電話帳で琴の教室を探して電話を掛けまくり、病床のおばあ様宅にも掛けてしまい、しかもそこは大きな広告も掲載していたので別の所と勘違いして2度も掛け、1度目は弱々しかったが2度目には「ああ、さっきのあなた」と元気になられていたり…。
「二十弦」と言うや、どこも「うちは二十弦は分かりません」と返ってくるばかりだった。
さて今回の試演だが、一通り吹いて頂いた。
「7孔」では出来るが「5孔」では難しい箇所を説明して頂いた。
スラーがある場合と無い場合、アクセントの有無についても比較して頂いた。
ある音からある音への装飾音は、かなり困難だった。
ヴァイオリンなどの弦楽器やピアノと同じ発想で装飾音にアクセントを付けがちだったが、尺八では重くなりすぎることが多かった。むら息にしてしまうそうだ。
西洋の管楽器とは比べ物にならないくらい、息遣いが音の強弱に直接反映された。
ディミヌエンドを書いた方が実際に即している、と思った箇所もあった。
弱い音が無理な音もあった。
楽譜よりゆったり演奏された箇所は、その方が良いと思い、黙って直すことにした。
たまたま勢いで譜面より1オクターブ低い音が出てしまった所は、難しく見えても表現上その方が良いと思い、難しくないことを確認し、譜面を直すことにした。
難しい音型も、難しそうに吹くことで味わいが出ると思ったら、直さないことにした。
1時間の面会で得たのは細部の修正ばかりだが、貴重な発見だった。
これらは曲の出来具合に根本的に関わるという訳ではないものの、譜面の記号に忠実な演奏者であればあるほど、演奏表現の訴え方に影響を及ぼし、間違った書き込みにより「何かちぐはぐな、嘘っぽい表現」となってしまうからだ。そしてそのことで最終的に、その曲が捨てられるか否かの判断を下されてしまうからだ。