時々刻々現社的学習2009

「現代社会」の授業用ブログ

クライメートゲート事件とポスト京都議定書

2009-12-07 13:49:52 | 日記
国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)がコペンハーゲンで7日開幕した。2013年以降の温暖化対策の枠組み(いわゆる「ポスト京都議定書」)を決める重要な国際会議である。この国際会議を前に、気候変動の気象データを研究し、IPCCに影響力を持っていたイースト・アングリア大学のCRU(気候研究ユニット)の研究者の電子メールや文書が盗み出されて、温暖化のデータそのものがねつ造だったという疑惑が出てきた。


■盗み出された「温暖化」メール 論争に火 陰謀説も
(2009年12月6日ashi.com記事から)

【ワシントン=勝田敏彦】気象研究で有名な英イーストアングリア大のコンピューターにハッカーが侵入し、研究者が地球温暖化を誇張したとも解釈できる電子メールなどが盗み出された。12月の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)を控えた陰謀との見方もあり、英米メディアはウォーターゲート事件をまねて「クライメート(気候)ゲート事件」と呼んで報じている。

 メールには、国際的に著名な気象研究者同士のやりとりが含まれ、イーストアングリア大のフィル・ジョーンズ教授が米国の古気候学者らに出した「気温の低下を隠す策略(trick)を終えたところだ」などと書かれたものもあった。

 この記述に対し、地球温暖化やその人為影響に懐疑的な人たちが飛びつき、ネットなどで批判が相次いだ。ジョーンズ教授は声明で自分が書いたことを認める一方、「誤った文脈で引用されている」などと反論。木の年輪のデータから推定されるが信頼できない気温のデータを使わなかっただけで、科学的に間違ったことはしていないと主張している。

 公開を前提にしない私信とはいえ、ほかのメールで懐疑派を「間抜けども」などと呼ぶなど研究者の態度にも関心が集まっている。

 米国の保守派シンクタンク、企業競争研究所(CEI)は20日、「『世界一流』とされる研究者が、科学研究より政治的主張の流布に集中していることは明らか」とする声明を発表。23日には、急速な温暖化対策に批判的な米上院のインホフ議員(共和党)が「(感謝祭の議会休会が終わる)来週までに真相が明らかにならなければ、調査を要求する。この問題は重大だからだ」と述べ、「事件」が議会で問題にされる可能性も出てきた。

COP15を2週間後に控えた時期の発覚で、世論への影響も懸念される。21日付米紙ニューヨーク・タイムズは「(COP15直前の)時期のメールの暴露は偶然ではないだろう」との研究者の見方を紹介している。

 米国では今年に入り、温暖化の科学的根拠に対する信頼感が下がっている。

 世論調査機関ピュー・リサーチ・センターが9~10月に実施した世論調査によると、「ここ数十年、地球の平均気温は上昇していることを示す間違いない証拠がある」と答えた人は57%で、08年調査の71%、07年、06年調査の77%から大きく下落した。

 同センターは、景気の落ち込みのほか、今夏は例年より寒かったことが理由ではないかとみている。

(引用終わり)



<コメント>

 よりによってこの時期に温暖化データ偽造疑惑が出てきたタイミングを考えると、COP15の決着を妨害する陰謀という説もなくはないが、メールをハッキングされた当事者は電子メールの内容が本物であると認めているようなのでややこしくなる。研究所内の反対派の内部告発ではないかという説もある。
 いずれにせよ、温暖化懐疑派や否定派にとっては、このメールが温暖化推進派が気象データを都合のいいようにねつ造した証拠になる。たとえば、「CRUのPhil Jones所長が1999年に出した電子メールの記述」によると、「I’ve just completed Mike’s Nature trick of adding in the real temps to each series for the last 20 years (i.e., from 1981 onwards) and from 1961 for Keith’s to hide the decline.(文意は、「Mikeの『Nature』トリックを終えたところだ。過去20年(1981年以降)については本物の気温に加え、1961年からは減少を隠すためにKeithのものを加える」に近い)とある。
この「Nature trick」というのは、新たにデータを追加するという意味であって、ねつ造ではないと当人たちは否定している。


■地球温暖化データにねつ造疑惑(09/11/26)

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が採用した、人為的な地球温暖化の有力な証拠とされるデータにねつ造の疑いがあることが分かり、先週末から欧米主要メディアの報道が相次いでいる。かつてのウォーターゲート事件をもじった「クライメートゲート(Climategate)」という言葉も作られた。来月デンマークのコペンハーゲンで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)に影響が及ぶ可能性がある。


 疑惑の舞台となったのは、国際的な温暖化研究の拠点のひとつである英イーストアングリア大学。何者かが気候研究ユニット(CRU)のコンピューターに侵入し、1996年から最近までCRUが外部とやり取りした1000通以上の電子メールをハッキングして匿名サーバーに置いた。さらに、温暖化懐疑派のブログなどにその存在を知らせ、メールの内容が明るみに出た。


 そこで注目されたのが有名な「ホッケースティック曲線」だ。過去1000年間にほぼ横ばいだった気温が、温室効果ガスの排出が増えた20世紀後半に急上昇したことを示す。IPCC報告書でもたびたび引用されたが、あいまいなデータ処理が以前から問題視されていた。メールの中で、フィル・ジョーンズCRU所長は1960年代からの気温下降を隠すことで、80年代からの上昇を誇張するデータのtrick(ごまかし)があったことを示唆している。


 ジョーンズ所長らは流出した電子メールが本物であることを認めたうえで、疑惑について24日に声明を発表。「trickとは新データの追加を意味する言葉で、ごまかしではない」などと釈明している。


 さらにメールでは、2001年にまとめられたIPCC第3次報告書の代表執筆者のひとりだったジョーンズ所長が、懐疑派の学者に対して「報告書に論文を掲載しない」「論文誌の編集からはずす」「CRUのデータにアクセスさせない」といった圧力を加えたことがつづられている。


 欧米には懐疑派のウェブサイトやブログが多数あり、クライメートゲートについて盛んに議論されている。メール流出はハッキングでなく、目前のCOP15を揺さぶることを目的にした内部告発者のしわざではないかとの見方も出ている。


 COP15は京都議定書に代わる温室効果ガス削減の国際合意の形成が目標だが、先進国と途上国との対立は根強い。横浜国立大学の伊藤公紀教授は「IPCCが科学的な知見をゆがめたという不信感が広まれば、交渉はさらに難航する恐れがある」と指摘している。

(日経Ecolomy記事から)


<コメント>

 地球温暖化に関する気象データの科学的研究がまだ不十分であるから、このような偽造疑惑がついて回る側面は否めない。おそらくCO2排出量の増大と温暖化=気温上昇が有意な関係にあることを示そうとする意図からデータがゆがめられた可能性は十分ある。
 そのことの真偽はともかく(ほんとうは重要なことなのだが)、国際的には温暖化対策としてCO2排出量の削減は避けられないという認識で共通している。
 いまさら排出量削減の議論は不必要だということにはならないだろう。なぜなら、エコ(CO2削減)を基調とした環境政策による新産業の育成と雇用創出と市場拡大に、欧米諸国が活路を見いだそうとしているからだ。それともうひとつは、地球温暖化とは無関係に、石油ピークの時代に到達し、それまでのエネルギー政策を大胆に転換して、再生可能エネルギーへの転換を促進する必要に迫られているからである。

つまりことの真偽はともあれ、欧米諸国にとっては新エネルギーと新産業、脱炭素経済のシステム構築が不可避であるという十分な理由があるのだ。

 一方で、こうした欧米先進国の政策転換をよく思わない人たちもいる。途上国にとっては、CO2排出規制が途上国の経済発展を阻害するのではないかと警戒している。たとえば、先進各国が温室効果ガスの総排出量の規制という数値目標を唱えているのに対して、中国は単位GDPあたりの排出量の削減を提唱している。つまりこれから経済発展を目指す中国など途上国は、経済成長と共にCO2の排出量も増大する。一律に、総排出量を削減するという手法は明らかに途上国に不利だということである。
欧米諸国が主張する排出量削減の数値目標で合意できるのか、それとも中国などが主張する途上国に配慮した、ゆるやかな削減目標で合意できるのかが焦点になるだろう。


地球温暖化詐欺

CO2犯人説はウソだった

COP15 削減目標で中国に批判されたアメリカが反論


(設問1)地球温暖化はかならずしもCO2が原因ではないという説についてどう思うか。

(設問2)中国が主張するCO2排出量削減の総量規制反対についてどう思うか。
 (途上国については、一律に削減目標を義務づけないという考え)