クロロホルムの祈り

創作活動をとおして春秋を綴ります。

ようこそ、「クロロホルムの祈り」へ

その香りが甘く感じるのは錯覚でしょう、きみの笑顔がとろけそうなくらい優しく見える。             綺麗な瓶に入れて可愛らしいリボンで結わえても、毒は所詮、毒のまま。                                     もし愛されたいと願うのならば、 わたしと一緒にすべて知らないふりをしませんか。                                                             いつかあなたが甘い夢から醒めても、ずっとずっと。                                                             たとえ、あなたがそれを望んでいなくても。                                                                                                                                     ――クロロホルムの祈り               (紅瀬奏子)                                                                                     

もしもサ行を忘れたら

2011年05月31日 22時56分00秒 | 愛される予感だけで生きていく
愛してるも大好きも
すべてを声にはできないけれど
ふわり、生まれた空白が
わたしの気持ちを伝えてくれる

どんなに離れてしまっていても
さよならを言わなくていいのなら
それは永遠と呼ばれるものになる

わたしが代わりの言葉を探すより早く
あなたがわたしを抱き締めて思考を停止させてくれたなら
今度こそ永遠がわたしとあなたのものになる

しあわせを知らなくても
わたしは幸福を知っているもの
それだけで充分だわ

それでもいきていたい

2011年05月29日 23時52分24秒 | 愛される予感だけで生きていく
あなたがにこりと微笑んだなら
あなたには微笑まれる権利があります
あなたが優しく触れたなら
あなたには優しく触れられる権利があります

けれど、あなたががつんと殴られたとき
あなたは殴り返すのでしょうか

何もためらうことなどないのに
震える拳をぎゅっと固めて
ああそうなの、と口角を吊り上げた
そのとき、わたくしはそっと目を伏せて
なんて可哀想、と嘆くのです

飛んでくる拳を大きな愛で包めだなんて
できやしないことはおっしゃらずに

代わりに殴ってやりたいところだけど
口ほどに強くはないわたくし
できることと言えば
静かに唇噛み締めるだけ
ただの傍観者に過ぎないのです

何がそうさせるのかと言えば
それが良心というものなのやも知れません

旅立ち

2011年04月17日 10時47分48秒 | 愛される予感だけで生きていく
きみは、桃源郷を目指して旅立つという
ありもしない幻にこころ囚われて
今あるすべてを打ち捨ててでも
手に入れたいものなんてあるというの

すべての旅人に目的地があるのなら
それは故郷であってほしい
この地を、いつか帰って来る場所にするために
せめて笑顔で出ていきなさいよ

写真

2011年03月27日 13時02分56秒 | 愛される予感だけで生きていく
まだ行ったこともない国の
写真を見た

あおが拡がるその世界は
一筋の轍で二つに分かれる

果てしなく延びる水平線
黒でもなければ白でもなく
色があるのかどうかさえ
わからないその線は
時満ちて大きな円を吐き
また時が来ればそれを飲む
世界に息吹を与えて
毎日呼吸を繰り返して

太陽は息吹
生命を吹きこまれた世界に
美しく浮かび
儚く沈む
何色の絵の具で描こうか
決められないその円
さんざん迷ってわたしはきっと
無垢な白を選ぶだろう

分断された青はお互い
少し違う色をしている
空が海の色をしているのか
海が空の色をしているのか
相反する
しかし似通ったお互いを映して
空色の海と水色の空に
白い花と雲をたゆたわせて

これからその国へ行くなんて
どんなにどんなに
素敵なことなんだろう