13才の夏くらいまで生家の風呂は
薪と石炭で沸かしていました
お湯がぬるくなると
「お母ちゃーん!たいてー!」と
風呂場から声をあげます
大抵台所にいる母はその声を聞くと
薪風呂釜のある半屋外のようなタタキに出て
石炭をくべてくれるのでした
この「お母ちゃーん!たいてー!」
が私は苦手で仕方なった…
5人の子供と かくしゃくとした姑と
自己主張の下手な亭主とで計7人
それらの世話に明け暮れる母を
末っ子の私は幼稚でつたないながらも
労いの情で見ていましたから
母を忙しく動かすことに躊躇してしまう癖が
ついてしまったようなのです
ある夜 結局「お母ちゃーん!たいてー!」
が言えずに風呂を上がりました
するとその後に入った兄姉たちの誰かだったでしょうか
父だったでしょうか
お湯のぬるさに驚いて大声をあげました
その時母が珍しく語気を強くして私に言ったのです
「ぬるい時はちゃんと言ってちょうだい
次に入る人の為にちゃんと言ってちょうだい」
これは子供心にストンと落ちた言葉でした
母は 私の性質の傾向と対策を心得ていたのだな
懐かしく感服している今夜です