むらくも

四国の山歩き

笹ヶ峰・橡尾山…愛媛県

2014-10-20 | 石鎚山脈

笹ヶ峰、橡尾山                 ささがみね、とちおやま



山行日                     2014年10月16日
標高                      1015.9m、1222m
登山口                     四国中央市新宮下り付(土佐北街道)
駐車場                     なし(県道5号線広い路肩)
トイレ                     なし
水場                      なし
メンバ-                    単独




台風19号が過ぎ去って、気温はやや冷え込んできたがお天気は回復、先週1700~1800mが見頃だった紅葉は次第に高度を下げ14~1600m辺りだろうか。
寒風山や西赤石山が見頃を迎えているかもしれない。
行ってみたい気もしたがそろそろ県境尾根歩きを一つでもやっつけておかないと遠ざかってしまいそうです。
主だって残っているところは、吉野川-三方山-京柱峠の間、綱附森-地蔵ノ頭、そして橡尾山とその東の笹ヶ峰間。
紅葉の標高としては綱附森-地蔵ノ頭間が最適なのですが、綱附森は最近坊主さんと一緒に登ったところなので候補から外して、やや標高は低いが橡尾山-笹ヶ峰を歩くことにした。

妻が9月末で退職して半月を経過した。
いまは週3日の雇用で元の職場で引き続き働いている。
そろそろ新しい環境に慣れた頃だろう、とは言っても同じ仕事なので単に週に4日も暇になったのですることもなく、精神的な問題だけのことなんですけどね。
収入が減ったので経済的な影響も多少はあるかもしれませんが、そこは致し方ない。
支出を抑えることにこれまで以上の努力をし、慎ましく生きていきましょう。
わたしたちこれで準完全老後生活に突入しました。
やがて週3日の雇用が終われば準の字もなくなり完璧です。
国家予算は赤字になれば消費税で収入を増やすことが出来るのですが、一般の家庭や年金生活者はそうもいきません。

本題に戻して、そこで妻を橡尾山-笹ヶ峰の尾根歩きに誘ってみたのです。
ヒヨドリのような朝の冷たい空気を切り裂くような応えが帰ってきました。
「ヤブ山や歩かん!」
とりつく島もない。
なんで女ってヤブが嫌いなんやろな、あんなに面白いことなかなかないよ。
イノシシやシカ、ときにはカモシカ、リス、アナグマ、ニホンイタチなどたくさんの動物に出会えるのにね、理解できへんわ。
仕方ない、一人で行くことにしよう。



まだ夜が明けないうちに目が覚めた。
布団の中でもじもじしているうちに外が白みかけた。
急いで布団を跳ね上げて、山専ボトルに入れるためのお湯を沸かす。
最近、ザック重量を少しでも減らすためコッヘルやガスコンロなどを持参しないようにしている。
山で事故にあったときには必要な道具なんですが、年齢と比例して重量が疲労を早めてしまうので痛し痒し。

6時半、自宅出発。
新宮ICで高速を降り、左折して県道5号線を高知方面・笹ヶ峰トンネルへと走る。
霧の森を過ぎて、下り付への三差路に差し掛かったところで、道路縁に全面通行止めの看板があった。
事前に坊主さんからこの道は工事のため通行止めになってるよとの連絡を戴いていたのですが、時間制限くらいには工事は進んでいるだろうと軽く考えていた。
甘かった。
様子を見るためにさらに奥へ進んだ。
「ブナの活き水」を過ぎて、高速道の橋脚下へ差し掛かったところ、ゲ-トが置かれており、そこから先への進入は出来ないことはなかったが止めた。
車のナビの画面を見ると、その先2箇所で全面通行止め工事中のマ-クが入っている。
工事期間はおおよそ一ヶ月後の11月14日までとなっていた。

山行計画は、ヘヤピンカ-ブの先の沢(高速道笹ヶ峰トンネル入口付近)から取りつき、尾根を伝いながら標高904mの水無峠の縦走路に出て、笹ヶ峰-橡尾山-県道5号線沿い橡尾山・カガマシ山登山口へ下山する予定でしたが、諦めた。
今日の山歩きは止めて帰ろうかと思ったのですが、折角なので土佐北街道下り付の登山口から登って行けるところまで行ってみようと考え直した。

下り付三差路のちょい北側にお茶畑の広がる脇製茶場の道路沿い広い路肩に車を駐めて、土佐北街道へ左折し下り付の集落へと歩く。
民家の空き地にはミゾソバの小さなピンクの花がいっぱい咲いていて、季節を感じた。



集落を過ぎ、沢沿いを山手へと上がって行く。
植林地には畑地か宅地跡だろうか、古い石垣がいくつもあって、その先では台風の影響や増水での倒木があって、道も一部崩落していた。
昔、土佐藩が参勤交代に使った古い街道の、残された石畳は歩く人も少なく下草が生えやや苔蒸している。




沢を離れると、杉林に陽がこぼれ落ち、山歩きをする者にとってはなんとも贅沢な光景を味わうことが出来る。
綴れ折れの道をジグザグジグザグ、どこまでも続く。
ここから腹包丁の急登、参勤交代の折りに歩いたお侍さんが急斜面のために刀が道につっかえたため、お腹に回したので腹包丁という地名になったとか。
「腹包丁の嶮は天下の嶮所 一歩誤れば千仞の谷」と道端の説明板には書かれているが、少し大袈裟だ。
昔の武士は大ボラ吹きだわ。
大正時代にはここに茶店があったと記されている。
土佐と瀬戸内を結ぶ重要な道、相当に人通りが多かったんでしょうね。

しばらく登ったところで測量をされている二人の男性に出合い、さらにもう一人の男性が上から降りてきた。
その方の話しでは、近くで熊の足跡があったとのこと。
その足跡の大きさは人の手ほどの大きさ、まさかと思ったが小心者には十分な効果があって正直ビビッた。
お別れした後、地面ばかりに目が行き、足跡を探すようになった。
なんだかな~。




植林帯の石畳をさらに登り詰めると樫の休場、そこは腹包丁の急坂を過ぎたすぐのところにあって、昔、ここにも茶店があったと記されている。
額に汗が滲んだ。
もし今も茶店があったなら、軒先に腰を下ろしてお茶と饅頭などを食べたいところです。
当時はどんな食べ物を出してたんでしょうね。
きっと甘くて美味しかったに違いない。
最近、糖尿病の気があるんかしゃん、甘い物が頭の上でくるくる回転するのです。
そこを過ぎると、標高おおよそ850mの徒武というところ。
シカが左斜面下をドドド-ッと音を立てて逃げた。
前方からは別のシカの鋭い警戒音が杉林を切り裂く。




徒武を過ぎると左に景色が開け、樹冠越しに東方向の塩塚峰が見えてきた。




登山口からおおよそ1時間半で笠取峠、笠を取って一息入れたいこの峠、説明板には笹ヶ峰との中間地点だと書かれている。
その看板の先左方向には「犬の墓道」、この踏み跡を東に下って行くと新瀬川・土居へ降り立つことができるらしい。
さらに進んで9:45、水無峠に到着。
昔、ここにも茶店があったと記されていた。

右下斜面から杉を伐採するチェ-ンソウの音が響きわたる。
朝、県道5号線の通行止め看板を見て、引き返す途中で何台もの車とすれ違ったが、林業関係の方たちの車で、いまチェ-ンソウを唸らせている方たちだったのだろうか?
もしそうなら、通行止めのゲ-トからさらに先へと入ることができたのかもしれない。
水無峠の下は当初計画の取りつき地点に当たる。
しかし、もし取りつくことが出来たとしても、作業の邪魔をすることになったので、変更して良かったと思った。

さらに進んでで七曲がり、直ぐ先ではこの道に一ヶ所しかない木作りのベンチがあった。
お殿様の重い駕籠を担ぐ足軽というか人足の方は鍛えられた頑健な体と脚でしたでしょうが、こんな山道を延延とえらいもんですね。




ふお-、明るい景色が一気に開けました。
塩塚峰から天狗岳、剣ノ山への嫋やかな稜線が綺麗です。




杖立地蔵に安全祈願。
なんとなくほっとする瞬間です。




10:11、予土国境を示す高い二本の榜木が立ったところに到着。
明治以降にはここにも茶店があって、わらじや餅などが売られていたとか。




傍には安永三年に詠まれた第九代土佐藩主山内豊雍の割と新しい歌碑がひっそり佇んでいた。
その歌碑の傍にある踏み跡を辿ると三角点のある笹ヶ峰山頂でした。




山頂で休みながらバナナを囓って、薄く笹が茂る南西方向の尾根へと下った。
10何年ほど以前この山に登った折りに橡尾山方向への尾根を眺めたことがありますが、その当時と比べて笹は随分と薄くなってると感じた。
当時は橡尾山とは逆方向の三傍示山へと歩いたのです。
いい風景、こういうの結構好きなのです。




笹もあればシダの茂っているところもあって、前方左側に橡尾山、その右側にカガマシ山が見えてきました。




シコクブシの花。
こちらはアザミなのですが、何アザミかは判らない。




1029m峰の手前から眺めた風景ですが、左端の高い双似峰っぽい山が野鹿池山、眼下の渓は太政官道から立川方面のようです。
遠くには梶ヶ森などの高知県の山並みが聳えています。




そろそろ1029m峰ですが、尾根を直進するにはスズタケが茂りすぎてるしすこぶる歩きにくい。
右へ右へ、笹のないところを選んで巻いていきます。
グルッと巻いて、南寄りになったところで鞍部に乗って、県道5号笹ヶ峰トンネルの真上を横切るようにしながらさらに尾根を登っていきます。




再び、羊歯の茂る尾根になり、右手には爪跡のある三ッ足山(カガマシ山の北側にある標高1105mの山)が見える。




アサマリンドウの蕾。
時刻は11時を少し回ったとこで気温もかなり上昇していて開花していてもおかしくないのですが、なぜか蕾状態でした。
岩場を右へと巻く。

後方を振り返ってみた。
見覚えのある三傍示山とその右手後方には野鹿池山。




大きめの境界杭が現れ、目の前に大きな岩場が立ちふさがった。
大きく右へと迂回する。




再び尾根に登り返したところでスズタケが現れ、右にも左にも避けようがなく深く潜り込むようになった。




北側の渓方向は馬立川が流れているが、ここからは見えない。
見えているのは県道5号線でした。




スズタケの登り斜面を突進あるのみ。
足掻きながら登り詰めると、そこは橡尾山からほんの少しカガマシ山側に寄った縦走路、木の枝にはピンクのテ-プが括りつけられている。
左折し折り返すようにしてちょっぴり歩くと橡尾山山頂でした。
腕時計を見て驚いた、時刻は11時47分。
山頂まで届きそうもないと覚悟をして歩いてきただけにうれしさを通り越して、ポカンとしてしまいました。




取りあえず三角点のある山頂で座り込み、空を眺めながらお昼ご飯です。
今日持参したカメラはオリンパスのコンデジ、昔、このカメラで撮った青空の色あいをオリンパスブル-と言ったそうですが、メ-カ-によって微妙に色合いが違うんでしょうか、わたしには判らなかった。

思ったより早い山頂到着のため、ここで復路のル-トをどうするか迷った。
カガマシ山へ出てそこから北の尾根を下って三ッ足山へ登り、東の尾根を下って、ブナの活き水へ下山するか、それとも歩いて来たル-トを戻ろうか?
距離的にはどちらもあまり変わらないが、もう一度、栃尾山-笹ヶ峰間の尾根歩きも悪くない。
ピストンすることにした。

サンドイッチを牛乳で流し込んで、山頂を後にする。
ピンクのテ-プの所まで引き返さず、山頂から直接北東の尾根へ直進したが、すぐに後悔した。
スズタケブッシュは足に絡まり足が上げられず、何度も転ぶ。
笹埃が舞い上がり、喉がイガイガするし、咳き込む。




しばらく我慢しながら尾根を下ると、やがてスズタケは薄くなった。
しかし、ここで左へ迂回しないと崖っぽい岩場にぶつかってしまう。
滑るようにして左斜面へ下り迂回する。
岩場を遣り過ごしたところで再び尾根に戻り、高知側の渓を眺めた。
県道5号線が山腹を縫うようにして走っている。




紅葉がチラホラ。
まだ本格的ではないが、この標高が今日の紅葉下限ラインのようです。
高度計はおおよそ1100mでした。




目の前を羽が綺麗に輝くブル-で、背中の白い中型の鳥が何羽か飛んだ。
カケスだ。
やがて1029m峰手前に差し掛かったところで、スズタケと岩場を避け大きく左へ迂回する。




笹ヶ峰への登り返しではやや疲れた足が重たく感じた。
ゆっくり登り返す。




13:48、笹ヶ峰山頂に戻りついた。




草むらでウグイスが鳴く。
春から夏にかけてのあの美しい鳴き声ではない。
喉を痛めつけ嗄らしたような声で、ジェッジェッと鳴く。

再び旅のお守りさんの杖立地蔵さん、お礼のご挨拶をして後にした。




水無峠では伐採された杉が転がり、チェ-ンソウの音が朝よりはやや遠くで鳴り響いていた。
アサマリンドウが日を浴びていたが蕾はやはり固く閉じている。




時刻は14:28、笠取峠は陽が斜めに差し込み印象的でした。
歩いているすぐ傍の木立からオスメスのつがいだろうか、グエッという鳴き声をあげてバタバタッと大きな羽尾とを上げながらヤマドリが飛んでいった。




腹包丁のつづら折れの道が足の関節には優しくない。
異常に長く感じた。
崩れた登山道を避け、沢伝いに下って、やっとこさ下り付集落へ。
時刻は15時28分。




馬立川を流れる青く冷たそうな水を眺めながら、県道5号線沿いのお茶畑の見える車を駐めた広い路肩に帰り着いた。
県境尾根歩きはこれで一先ず瓶ヶ森から吉野川までを繋いだことになりますが、瓶ヶ森から西と吉野川から東が今後残された大きな宿題、制覇できない可能性が高いですが、気にせず行きやすいところからボチボチです。

それにしても秋のいい気候に恵まれて、一日楽しく歩けました。
山の神さまに今日も感謝の気持でいっぱいです。




下り付登山口8:01-笠取峠9:25-水無峠9:45-10:12笹ヶ峰10:25-1029m峰10:43-11:47橡尾山12:13-1029m峰13:25-笹ヶ峰13:48-水無峠14:13-笠取峠14:28-15:28登山口


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