むらくも

四国の山歩き

東赤石山(瀬場~床鍋周回)…愛媛県

2011-07-27 | 赤石山系

八巻山、東赤石山            はちまきやま、ひがしあかいしやま



標高                  1698m、1706m
登山日                 2011年7月23日
登山口                 新居浜市瀬場
下山口                 新居浜市床鍋
駐車場                 車道広い路肩
トイレ                 瀬場登山口に有り
水場                  登山道、下山道各沢と赤石山荘裏

メンバー                ピオーネ、むらくも




八巻蔵王大権現様が鎮座する岩だらけの八巻山、この時期にはそここに蛇紋岩植物が群生し、赤いさび色の岩にさらにさまざまな彩りを添えてくれる。
6月から7月にかけてパステルピンクのタカネバラをはじめ、ユキワリソウ、キバナノコマノツメ、シライトソウ、ネバリノギラン、そしてマイヅルソウ、シラヒゲソウ、ヤマトキソウ、ゴゼンタチバナ、コウスユキソウ、ホソバシュロソウ、イワキンバイ、ウバタケニンジン、オウトウヒレン、イブキシモツケなどなど枚挙に遑がないくらいに高山植物の宝庫で、四国で随一といわれている。
そのなかでももっともわたしの大好きなオトメシャジン、今年はまだ見ていない。

例年なら7月の上旬には咲き始めるので、この時期にはもう遅いかな。
しかし、咲き残りでもいい、一目会っておきたい花の一つ。
オトメシャジンはちょっと見にはソバナやツリガネニンジンに似ていても、やはり赤石山系の岩稜地帯にしか咲かない高山植物。
妻と二人でいそいそと出かけてみました。



まだ夜が明けやらぬ時刻に耳元でガリガリ鳴る目覚ましで眼を覚まし、ふらつく足で、暗がりの道をワンと散歩。
やつもまだ眼を覚ましていないのか、いつもと違うとんでもないところで立ち止まりションをする。
おい、こら、そこはあかん、他人様の屋敷の塀や、お互いにヨタヨタ歩きながら、咲き残っているクチナシのいい匂いを体中に浴びる。
急いで帰宅し、ワンに餌をやりながら、留守番をコンコンと頼み込む。
ワンはもう14歳と半。
最近、一日中寝ており、番犬の役目を果たしていないようだが、これもわたしと同じで歳のせい、いた仕方がない。

法皇トンネルを抜けると、左手に水量豊富な滝、カメラマンが道の真ん中でカメラを構えている。
そっと脇を通り過ぎて、滝を振り返ると、目の端に、ザーッと音を立てて垂直に流れ落ちる姿が入った。
落差45mの水ヶ滝。
ここの岩壁にはイワタバコが自生するが、まだ咲いてないようだ。
金砂湖から銅山川を遡るように車を走らす。
この時期には珍しく、川から霧がぼんやり立ち上っているように見えたが、川霧ではなくガスのようだった。

川沿いの合歓の花を眺めながら、瀬場登山口に到着。
7時前だというのに車道路肩にはたくさんの駐車の列。
ふぇ~!いくら四国随一の花の名山とはいえ、多過ぎるじゃないか、さてはオトメシャジンの開花が遅れていて、この日、満開なのか。
ほんの少し筏津寄りのところで、広い路肩に駐車し、準備をしていると、そこへ一台の車が…。
なんと、やまさんきぬさんご夫妻でした。
お二人は足が速い、すぐに追い抜かれるだろうと思って、お先に登らさせて頂く。




紫陽花が満開の登山口。
案の定、すぐに追いつかれた。
ところがやまさんきぬさんは心優しい、この後、のらりくらり歩く私たちに併せてずーっと同行してくれることになった。
二人だけだとすぐにぶつくさとののしりあいながらの山歩きですが、お二人が加わると、クッションの役割を果たしてくれるから楽しい。

カラスウリの花…、妻がカメラを構える。
すかさず意地の悪い夫が、「こんなの家周りの池土手に咲いてるやないかいな」
「これはこれ、池土手のカラスウリとまた違って、綺麗なん」
「そっかな~?」
お二人がいるとこれで終わるが、いないとどうなるか。

「アホなこと言いなや、カラスウリはカラスウリじゃ、池土手に咲くのも山で咲くのも同じウリよいな」
「ふん、センスのない人間は同じにしか見えんのやろ」
登るにつれ、顔がだんだんと潰れて歪んでくるのが分かる。




トチバニンジンの花が終わり、ほんのちょっぴり小さな赤い実がついている。
やまさんたちのお話から、今日の登山口での異常に多い車の列は、八巻山で結婚式があるのでその方たちの車だと伺う。
長い間、山歩きを楽しんでいるが、結婚式に出合うのは初めて。
新郎新婦の方はお互いにそして山をも、こよなく愛しているのだろう。
羨ましい気持ちにさせられた。

一人の女性の方がするりと追い抜いて行かれた。
今日は八巻山に、山の強者たちの集合か。




沢の水量はいつもと比べて豊富、大きな音を立てて流れているが、それを感じさせない。
あ~、山はいいな~、胸いっぱいに清々しい空気が吸い込むと、みるみるみなぎったエネルギーに変わってゆく。
ただ単に運動エネルギーでなく、体の隅々まで活きたエネルギーに。

分岐に着いた。
そこには新郎新婦のご家族の方たちだろうか、一休みされていた。
挨拶を交わしてお先に進ませて頂く。




しばらく植林地帯を登って、大きな岩のある渡渉地点に。
若いお二人が休息されていた。
直ぐに出発されたが、20kgはありそうな重たいザック、相当に山慣れた方たちのようです。
若い人を見ると、羨ましくもあり、懐かしくもあり、そして、なんとなくこちらも元気が貰えるような気になる。
渡渉点で少し休んで再び出発。
道にはヒメシャラとナツツバキの花がたくさん落ちている。
4人がそれぞれに頭上を見渡すが、すでに木には花は一輪も着いていなかった。




先を行く三人がしきりと沢の淵を覗き込んでいる。
サンショウウオかあめごのどちらかだろうと思って、わたしも近づいて覗き込んでみるが、なにも見えない。
やまさんに何がいるのと聞くと、指を差しほら模様の入ったやつとそうでないやつと二匹、魚が泳いでいると言う。
しかし、目を凝らしたり細めたりどう頑張ってみても、見えない。
悲しきや老いの身、極度な老眼で、視力が落ちてしまっていて、最近、本を読むのにも100円ショップで一番度のきつい眼鏡を買って掛けている始末。
なのでよく知った人様とすれ違っても、分からない。

其処を過ぎてしばらく歩くと、足元の岩に「ここが有名な一雄坂です」と書かれている。
有名なと言われても、いわれを知らない方にはなんのことと思うだけで、普通は「あ、そう」ってな感じで馬耳東風、さらりと通り過ぎてしまうだろう。
要するに、赤石山荘の安森さんが、伊藤一雄さんのあるユニークな出来事を、語り草として命名した坂であって、知る人ぞ知る、知らない人はまったく知らないという坂のようです。




登山道の縁にはつぶつぶ、もわもわ、ふわふわっとしたシモツケの花が続く。
八巻山の赤茶けた岩稜が目前に近づいた。




登山道にそっと咲くオトメシャジン、淡い紫が一層優しさを醸し出している。
ほどなく山荘に到着。
結婚式らしく、艶やかな紅白の幕で、赤い屋根の山荘はますます引き立ち、御祝いムード一色だ。
たくさんの方たちが外でも内でも準備に忙しそう。
八巻山山頂での式典は二時からで、登ってくる途中でもホラ貝の吹く音が山に木霊していた。




三人の強力たちが麓から山荘まで代わる代わるに持ち上げた、48kgもある餅ツキの臼。
思わず、この臼、式が終わった後、どうするのですかと野暮な質問をしてしまったが、持ち上げた方のお一人は、う~ん、このまま山荘でお風呂の薪になるのかなとポソリ。

臼の後方には「感激無き人生は空虚なり」の言葉が大書されてました。
う~む、いい言葉だ、そのとおりですね。
思わず、自分の人生を振り返ってしまいましたが、常に明るい気持ちで前向きに歩かないと、光り輝くような感激には出合えないと思いました。
新郎新婦の晴れての門出にこれほどぴったりの言葉はないかもしれません。
今日のこのお山での結婚式、これこそが感激です。

二時からは山頂はたくさんの人で通行止めになるかもとのこと、準備に余念がない山荘をあとにして、その八巻山へ。
赤い屋根の煙突からはたおやかな山間に、祝福するかのようにゆるりと紫煙が立ち上っていました。




気の早いシコクママコナがもう咲いている。




紫の鮮やかな色合いがなんともいえず素晴らしいシコクギボウシ。




五輪のタカネマツムシソウが岩陰で登山者を見守っている。




ウバタケニンジンもあちこちで咲いています。

おかめ岩の陰でしばし休憩。
やまさんが小さなクーラーボックスからフルーツゼリーを取り出して、わたしたちにもお裾分け、いや~、ご親切にありがとう。
冷たくて、メロンの香りが口の中いっぱいに広がった。




あと二時間半ほどで結婚式が開かれる山頂に到着。
賑やかになるその光景を、頭で描きながら、景色を堪能していると、そこに突然仙ちゃんが登場。
老眼が酷いわたしは、直ぐ目の前に仙ちゃんが現れても、しばらく気がつきません。
挨拶を交わしたその声が、どっかで聞いた覚えのあるような…。

自信のなさが小さな声になって、「仙ちゃんでは?」と洩れました。
「はいな、むらくもさんやな」
お~っ!会いたいと思ってた方に、やがて結婚式場となる山頂で出合いました~。
いやいや、うれしい、めでたい。

前夜、この山頂で新郎新婦さんが満点の星を眺めながら、テン泊、あらためて、若いっていいな~とつくづく思いましたわ。
いやいや、若い者に負けずにわたしたちもいつまでもロマンを追って、感激をこの手で摑まなくちゃ。




石室越えから回ってこられた単独の男性の方が、楽しそうにゆっくりと写真を撮りながら北側からガスの立ちのぼる東赤石山へと向かって行きます。




4週間前には鮮やかな花が見られたタカネバラは、もう実をつけてました。(訂正 写真はヒロハヘビノボラズの実でした)
東赤石山でお昼ごはんを一緒に食べることにして、仙ちゃん交えて五人でガスの中へ。




あちこちに咲くマツムシソウを楽しみながら、赤石越えを過ぎて東赤石山頂に、三人の方がお食事中。
三角点へ移動。
出迎えてくれたのはヤッホー地蔵さん。




権現越方面はガスでまったく見えず。




たくさんのトンボが山頂周りで飛んでます。
6月以降、いくつかの山に行ったが、いずれの山でもたくさんのブヨに噛まれて、痛がゆい思いをしたのですが、今日はブヨはほとんどいない。
どうやらトンボがブヨなど小さな虫を食して撃退してくれてるようです。




エーデルワイス(コウスユキソウ)

食事をゆっくり楽しんで、もう一度オトメシャジンを見たいという女性たちの声に押されて、みなさん揃ってお花畑のある権現越へ。




イワキンバイはどこも満開。
振り返るとガスに煙る東赤石山。




白骨樹の南斜面を眺めながら、どんどん下ります。




ピンクのヤマアジサイ。
めざとく見つけた終わりかけのイチヤクソウ。




ガスの中の権現越に到着。
クガイソウも丁度咲きかけたところ。
この日、やまさんきぬさんは大山へ行きたかったらしい。
もし行ってれば、ユートピアのお花畑はシモツケやクガイソウなどの花たちが、丁度、満開だったんじゃないかなと思われた。
わたしたちもまだ行ったことのない大山ルート、はて、いつになるやら。

仙ちゃんは、あのおっとろしいラクダの背をもう一度行きたい誘惑に駆られているという。
スリルは人を魔の手で絡め取るものらしい。
はて、その妖しい誘惑を振り払うことが出来るのか、それとも、ドーンと男の人生まっしぐらで再び挑戦か。




シコクフウロと、再び出合ったオトメシャジンが権現越を越えてくる涼しい風に揺れている。
まだ、小さな蕾がたくさん着いている。




みなさんカメラを握りしめたまま動かなくなった。
わたしはちゃっかり妻の撮影した写真を頂き~。




なんとも言えず可愛いシモツケのホワッとしたピンク花。
やっと、撮影タイムの呪縛から解き放されて、雨ですっかり流され荒れた登山道を下ります。




お~!こんなに荒れちゃって、土がえぐれて、岩がむき出しに。
やがて植林地の歩きやすい登山道に変わり、しばらくで、床鍋登山口に下山。




床鍋の川では澄んだ水が滔々と流れてます。
この沢水を体の前で受け止めながら、登ると夏の暑さなんか吹っ飛びますね。

おや、麓では、これからネジバナが咲こうとしてますよ。
銅山川の川床を眺めながら、20分ほどで朝止めた駐車地点に。

車はまだまだたくさん止まってます。
八巻山での結婚式もつつがなく終え、今頃は山荘で宴闌でしょか。
お二人さん、ご家族のみなさん、ばんざーい♪




瀬場登山口7:05-瀬場谷分岐7:53-8:40沢渡渉点8:50-10:05赤石山荘10:25-10:53おかめ岩(爆弾岩)11:10-八巻山11:25-東赤石山12:10-12:16三角点12:51-権現越14:00-床鍋下山口15:58-16:19瀬場駐車地点


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コメント (10)
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