苦い思い出

もうすぐバレンタイン。


こんな時期になると思い出しますね、あの苦い体験を。


あのつらく切ない思い出を。


そう、初恋です。





あれは小学校４年の頃だった。


僕には好きな人がいた。


いわゆる初恋の人である。


ちょっと地グロな彼女は


活発で


はじけんばかりの笑顔がとても印象的だった。


そんな彼女は僕にとって気になる存在であった。


しかし今まで恋などしたことのない僕にとって


この想いが恋だとは


あの瞬間まで気付かなかった。





時は２月。


良くも悪くも人々がバレンタインに翻弄される時期である。


当然僕もそのうちの一人であった。


節分を過ぎると


友達との会話は


「誰が誰を好きだ」


とか


「あいつ、マフラー編んでるよ！！まさか俺にくれるんちゃうの～(笑)」


とか


期待に満ち溢れた、


でも今になるとちょっと恥ずかしいものだった。


そんな会話の中で


「○○(初恋の人)、お前のこと好きらしいぞ！」


！！？？


ほんまに！？


正直あせった。


気になってた人が俺のことを好き？


彼女を俺の中でますます大きくなった。


そして大きくなりすぎて耐え切れなくなった俺は


とうとう遠まわしにではあるが


本人に聞いてみることにした。


偶然給食当番で運んでいるときに一緒になって、


「○○は誰かにチョコあげるん？」


って聞いたんだ。


そのとき彼女は


「エーーッ！？」


と、はにかみながら言っただけであった。


普段は快活な彼女の


とてもかわいらしい一面が見えた。





そしてついに１４日が訪れた。


僕は期待に胸を膨らませながら学校へ行った。


勉強しているときも


いつものように遊んでいるときも


頭の中はあのことでいっぱいだった。


あの瞬間を夢見ていた。





しかしその瞬間は訪れなかった。


彼女が下校するのを見たとき


僕はひどく落胆したのを覚えている。





こうしてチョコをもらうことができなかった俺だったが


バレンタインが過ぎても


彼女への想いが小さくなることはなかった。


むしろ強まる一方であった。


こうなってしまうと告白する以外すべはないと思った。


しかし、告白である。


当時小４の俺には


あまりにも勇気がいるものであった。





そうこうしているうちに終業式を迎えた。


このとき、告白するか迷っていた俺に


衝撃的な事実が告げられた。


そう、彼女は転校するのだ。


その事実を聞いた時の動揺といえば


言い表すことができないほどであった。


そして友達と通知表を見せ合うこともなく


家に帰ってしまった、告白もしないままに・・・





なんともつらい思い出ではあるが


なんとこの話


・・・


・・・


オチまである。





家に帰り


やりきれない気持ちで部屋にこもっていた俺を


母は温かい手料理で慰めたくれた。


クリームシチューである。


鶏肉のごろごろ入ったクリームシチューである。


おかん。


・・・


・・・


俺はチキンじゃねぇー!!