吹く風ネット

喜多方回想

1,
 喜多方ラーメンを食べに行った時の話だが、あの時は東京から喜多方までJRを利用した。
 上野から新幹線に乗り、郡山で下車。そこから磐越西線に乗り換え喜多方に向かった。
 当初、東武日光線で会津まで行こうかと思っていた。ところが調べてみると4時間半ほどかかる。「そんなにかかるのならJRの方がいい」ということで、新幹線ルートを選んだのだが、乗り換えの待ち時間などを含めると、時間はあまり変わらなかった。

2,
 新幹線の中で、隣に座っていた男性から声をかけられた。
「どちらまで行くんですか?」
「郡山で降りて、喜多方に行きます」
「どちらから来られたんですか?」
「北九州からです」
「えっ、北九州から!?」
 よほど九州人が珍しかったのか、驚き方が尋常ではなかった。
 郡山で降りるまでの短い時間、その方と話をしていた。仙台の方だった。出張で東京まで行っていて、その帰りだという。
 降り際に、
「仙台も良い所ですから、ぜひ来て下さい」
 と言われ,
「はい」
 と答えておいた。
 あれから30年経つのだが、いまだにその約束は果たせていない。

3,
 郡山では、二時間ほど待たされた。まだスマホなどなかった時代だ。友人と二人、することもなくボーッとしていた。

4,
 郡山のホームで汽車を待っている間、ぼくは「ここは空気が違うな」と思っていた。東京は北九州と変わらず、晩秋の空気だったのだが、郡山は既に冬の空気なのだ。『夜空ノムコウ』の歌詞の中にある、「冬の風のにおい」がしていたわけだ。
 北九州と東京は、さほど緯度が変わらないのでわからなかったが、さすがに東北だと緯度が変わってくる。そのため空気も違ってくるのだろう。

5,
 喜多方に着いた日の夜、K君の家族と駅前の居酒屋に行った。10時頃まで飲んで、駅前のホテルに泊まった。
 翌午前中、馬車に乗り市内観光。それを終えてから待望の喜多方ラーメン。その後、バスで山形との県境にある温泉まで行き、そこで泊まった。

6,
 そこに行って、改めて東日本は日が暮れるのが早いということに気がついた。
 確かに北九州から東京に出た時は、時差を感じてはいた。しかし街全体が明るく、人通りも多いので、そこまでの違和感はなかった。
 喜多方に着いた日もそうだ。泊まったのが駅前のホテルだったため、街は明るく、賑やかだった。だからそれは感じなかった。
 しかし、その日泊まった場所は山手で、街灯が少なかった。そのため午後5時には真っ暗になっていた。さらに周りは人通りがなかったため、さながら深夜のようだった。

7,
 その温泉宿で驚いたのが、道沿いにある立て看板だった。そこにはなんと『熊注意』と書いていたのだ。
 せっかく森閑とした、温泉宿の周辺を散策しようと思っていたのに、熊に襲われたら大変だ。しかたなく、ぼくらは宿で笑点を見たのだった。

8,
 40代に入ってから、ぼくは頻繁に山間部のドライブをするようになるのだが、例えば『鹿注意』や『猪注意』の看板は見たことはあるものの、『熊注意』は見たことがない。
 最近見た看板は『サルに注意』だ。もっともこれは市街地に貼ってあったのだが。

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