信州の感染症的な生活

信州を感染症から守りたい.
長野県のローカル情報を充実していこうと思います.

医療従事者の新型インフルエンザワクチン接種

2009-10-18 | 新型インフルエンザ
長野県では医者と看護師の7割くらい(18人うんぬんはめんどくさいので割愛)と
各病院に配られるワクチンの数がやっと決まってきたところで,今度はどう優先順位をつけるか各病院で迷っていることと思います.

最近疫学に凝っているので(数式が嫌いな人は飛ばして下さい),
基本再生産数(R0:感染者1人あたり何人に感染させるか?)をもとに考えてみました.
R0は以下の式で与えられます.
R0=β×κ×D
β:1回あたりの感染確率
κ:ある時間あたり1人の人間が集団内で平均何回接触するか
D:感染期間
R0は感染症の種類によってだいたい決まった値になりますが,β,κ,Dは普遍的で
はないので,一定の数字となりえません.
インフルエンザであれば,
β(1回あたりの感染確率)は手洗い,マスクなどの感染予防で低くなりますし,若
い人が多い集団では高くなります.
κ(ある時間あたり1人の人間が集団内で平均何回接触するか)は回避行動を取れば
低くなります.
D(感染期間)に関してはそんなに変化はでませんが,薬の投与により多少短くなる
かもしれません.
R0<1であれば感染はいずれ終息し,R0>1であれば感染は拡大していきます.
新型インフルエンザのR0 の報告は1.4-1.6(メキシコ), 2.3(神戸),1.96(NZ),
1.2-1.7(ペルー)などがあります.神戸で大きいのは高校生が多いからでしょう.
さて限られたパイでどう職員に配分するかはいろいろな考え方ができると思います
が,
β(1回あたりの感染確率)が高い若い職員を優先させる.
κ(ある時間あたり1人の人間が集団内で平均何回接触するか)の高い小児科,内科,救急に携わる職員を優先させる.他には産科,透析などのリスクの高い患者の診療を職場の職員を優先させるなどが考えられると思います.
一方で,患者さんや家族から持ちもまれる感染だけでなく,院外で職員が感染することも想定が必要でしょう.感受性の強い未成年と暮らしている職員は確率が高くなるでしょう.
今回の医療従事者の新型ワクチンは医療体制を維持することが目的ですので,ある職場は全部打つ,病院での感染リスクの低い職場は打たないといった極端なやりかたではなく,院外で感染する確率も考えて,全体的にまんべんなく抗体保有者を作っておいた方が,医療体制が維持できると思います.
流行を予防できる免疫保持率pは基本再生産数R0で計算できます.
先ほどの新型インフルエンザの基本再生産数R0を当てはめると以下の様になります.
P=1-(1/R0)=0.16-0.56=16-56%
高ければ高いほど感染拡大を阻止できますが,少なくともこれだけ免疫所持者を各職場に作ると拡がりにくくなります.
インフルエンザが20-30%感染しないと流行が止まらないと言っているのは正にこの数字です.
ようするに言いたいことは感染リスク,リスク行為の頻度の高低で色をつけて,各職場をまんべんなくワクチン接種をするのが医療体制維持に最も効率的な接種だと思います.


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