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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 22

2022年07月25日 | 霊感少女 さとみ 2 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪
 放課後、さとみの教室にアイ、朱音としのぶが来た。アイを見た途端、教室に残っていた生徒たちがそそくさと出て行った。
「会長、お疲れ様でございますぅぅぅ!」
 アイを筆頭に朱音としのぶが大きな声であいさつをする。麗子はぶすっとしたまま自分の席に座っている。
「会長」しのぶが言う。「顧問の松原先生からなんですが、今後の段取りを話し合いたいって言っているんですけど、どうします?」
「そうねぇ……」さとみはおでこをぺちぺちと叩き始めた。その手が止まる。「松原先生に、この教室まで来てもらえるように言ってもらえるかしら?」
「分かりましたぁ!」
 しのぶは教室からどたどたと駈けだした。
 北校舎に部室にしている空き教室がある。しかし、碌で無しどもの霊体が増えていて、しかも、北校舎に多い。さらに、麗子やしのぶにも霊力が見られるようになった。二人が狙われる可能性もある。それらを考えると、北校舎は避けた方が賢明だ。さとみは思った……訳ではなく、単に移動が面倒だったのだ。しかし、結果としては懸命な判断だ。
「麗子、どうしたんだ? ぶすっとしちまって」アイが麗子を見て言う。「筒の蓋が開けられたって言うのによう」
「それがイヤなのよ」麗子はアイを見て答える。「何だか、自分が怖くって……」
「ははは、心配するなよ」アイは言うと座っている麗子の前に立ち、肩に手を置いた。「わたしが付いているから、何も怖い事なんかないさ」
 アイは言うと、麗子の肩に置いた手に力を込める。
「アイ……」麗子はその手に自分の手を重ね、アイの顔を見る。麗子に笑みが浮かぶ。「ありがとう。アイがいれば何にも怖くないのよね?」
「当り前だ」
 二人は互いを見つめ合う。
「うわあ~、何だか、妖しくも美しい光景……」朱音が目をきらきらさせて言う。「ね、会長もそう思うでしょ?」
 しかし、さとみは何の事か分からないと言う顔をしていた。
 そこへ、しのぶに腕を取られた松原先生がやって来た。
「迷子になりゃしないって言ったのに、栗田は腕を離さないんだよ……」
 松原先生は困惑の表情でしのぶを見る。しのぶは何となく嬉しそうな顔だ。
「まあ、良いか」松原先生は諦めたように言う。「栗田も片岡さんの助手になれるんだもんな。大切にしないとな」
「そうですよ!」朱音が言う。「のぶの『般若心経』は効き目があるんですから!」
「はいはい……」松原先生は苦笑する。「……で、これからの事なんだが、綾部、どうなるんだ?」
「片岡さんが、他にも片付けなければならない用件があるとかで、それが終わってからになるんだそうです」さとみは豆蔵の言っていた事を伝える。「その間は、屋上には行かない事、からだや思いを十分に休ませておく事、だそうです」
「なるほど……」松原先生はうなずく。「じゃあ、待機ってわけだな?」
「そうですね。でも、あんまり長くは待機出来ないと思います……」さとみは走り回る碌で無しの霊体たちを見ながら言う。「その間にさゆりが力を付けちゃいそうで……」
「会長、怖い事言わないでくださいよう……」朱音がからだを震わせた。「……今の内に出来る事ってないですか?」
「とにかく、さゆりの狙いはわたしだから、みんなはいつも通りにしていて良いと思う」さとみは言う。「無茶だけはしないでね」
 そう言うと、さとみはアイを見る。アイは無言で、さとみに向かってからだを直角にする。
「じゃあ、そう言う事だな」松原先生がまとめる。「片岡さんからの報告待ちってわけだが、各自、無茶はしない事。屋上へは行かない事。あとは……」
「会長!」しのぶが、松原先生の腕をつかんでいた右手を左手に持ち替え、右手を上げて言った。「その最後の対決の時には、わたしたちも一緒ですよね?」
「え?」さとみは言われて初めて気がついた。「……ごめんなさい、考えていなかったわ……」
「でも、『百合恵会』のみんなが助け手になるんだって片岡さんがおっしゃっていました。と言う事は、わたしたちも対決に加われるって事ですよね?」
「えええっ! わたしたちも戦えるの!」朱音がきらきらした瞳でしのぶを見る。「凄い! これは凄い体験だわ!」
「そうよ!」しのぶがうなずく。「小さい時から心霊現象に関心を持っていたけど、ついに物凄い体験をする事になるのよ!」
 朱音としのぶは手を取り合って「体験! 体験!」と言いながら、教室を飛び跳ねる。
「おお、盛り上がっているなぁ」松原先生が嬉しそうにうなずく。「ボクも心霊現象にはずっと関心があったけど、こんなはっきりとした事象に巡り合えるとは思わなかった。何だか、待ち遠しいよ」
「……あの、わたしも参加しなきゃ、ダメ?」麗子が青褪めた顔でさとみに訊く。「たしか、片岡さんは、実際には何もする事が無いって言っていたけど……」
「麗子」アイが麗子の顔を覗き込む。余りの顔の近さに麗子は驚く。「……朝は、お前がわたしを助けてくれた。これは立派な借りだ。借りは返すのが筋だ。わたしがお前を守る。だから、何も心配するな」
 真剣なアイの表情に、自分がアイに何をしたのかはさっぱり分からなかったが、麗子は思わずうなずいた。
「それにだ……」アイは顔を離し、にやりと笑む。「みんなと一緒の方が、何かあっても怖さが減るんじゃないか? 一人だと全部背負う事になるぞ……」
「分かったわ!」麗子は言うと立ち上がり、さとみを見る。「わたしも参加するわ! いや、是非参加させて!」
 さとみは苦笑し、唇が『弱虫麗子』と動いた。 


つづく

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