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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第八章 さとみVSさゆり 最後の怪 36

2022年08月08日 | 霊感少女 さとみ 2 第八章 さとみVSさゆり 最後の怪
「あら、良い覚悟ね」さゆりは楽しそうだ。「そこまでの覚悟なら、思い切り強いのを打ちこんじゃおうかしら?」
「勝手にして!」さとみは目を開けた。「でも、約束して! わたしを倒したら、どこかへ行っちゃって、もう、みんなと関わらないで!」
「はいはい、分かったよ」さゆりは笑む。「わたしだって、そこまで悪じゃないわ。邪魔なお前を倒したら、それでおしまいにするわ」
「絶対の約束よ!」
「さゆり、嘘つかない」
 さゆりは真顔で言う。しかし、その表情からは真偽のほどが分からない。
「じゃあ、さっさとやりなさいよ!」
 さとみは言うと目を閉じた。覚悟が出来ている。と、みつと豆蔵がは慌ててさとみの前に立った。それに続いて、冨美代と虎之助も立つ。四人でさとみの前に並んで立った。さとみは気配を感じて目を開けた。並ぶ四人の背中が見えている。
「みんな、ダメよう!」さとみは言う。四人はさとみに振り返る。「みんな、わたしから離れて。お願い。みんなを巻き込みたくないの」
 さとみの言葉に、四人は口々に言葉を返している。しかし、生身のさとみには聞こえない。ただ、皆の表情からは何が何でも守り抜くと言った、強い意志が感じられる。それだけに、さとみは困惑する。
「ダメ! これはわたしとさゆりとの問題なのよ!」さとみは必死だ。「さゆりの気を受けると、みんな消えちゃうわ! それだけは、絶対にイヤなの!」
 さとみの必死さに、四人は顔を見合わせる。しばらく何かを話し合っている。さとみがさゆりを見ると、さゆりは面倒くさそうな顔をしている。さゆりはさとみの視線に気がついた。
「あんたのお友達、身を張ってでもあんたを守りたいんだって」さゆりがさとみを見ながら言う。「でもさ、あんたが離れるように言ったから、揉めてんのよねぇ…… いっその事、みんなまとめて消しちゃおうかしら? その方が面倒くさくなくって良いじゃない?」
「ダメ!」さとみが言う。それから四人に顔を向ける。「とにかく、わたしから離れて! さゆりの今の力だったら、みんな、本当に消されちゃうわ」
「そうそう、あんたたち、本当に、何も残さずに消えちゃうよ。ユリアを見ただろう?」さゆりは言うと、笑みを浮かべる。「さとみはさ、あんたたちを助けたいんだよ? それを当人たちが邪魔すんのかい?」
 四人は顔を見合わせ、それからさとみを見る。さとみは笑顔でうなずいた。四人は悔しそうな表情でさとみの前から離れた。
「ははは、次は婆さんたちでも並ぶのかい?」さゆりは三人の祖母たちを見る。「今のわたしには、婆さんが束になったって、敵わないんじゃない?」
 図星のようで、三人の祖母たちも動けない。
「ははは、まだ長生きするつもりなんだ」さゆりは小馬鹿にしたように笑う。「まあ、良いんじゃない? お孫ちゃんの分までこの世に居続ける事ね!」
 さゆりは改めてさとみを見た。さとみは覚悟を決めたのか、穏やかな眼差しでさゆりを見返している。さゆりは両手の平をさとみに向けた。
「さゆり……」さとみが言う。「わたし、あなたがあの世へ逝って、正しく生まれ変われるようにって思っていたけど、無理っぽいわね」
「さあね? 先の事は分からないさ。急に正義に目覚めるかもしれないわ」
「有り得ないわね」
「ははは、ばれちゃったわね」
「でも、わたしを倒したら、みんなには手を出さないで、どこかへ行っちゃってね。約束よ」
「さとみ、あんたもくどいねぇ……」さゆりは笑む。邪悪さがにじみ出ている。「そんなにくどくどと言われたら、反対の事をしたくなっちまうじゃないか!」
「そんな! 話が違うじゃない!」
「ははは! さようなら!」
 さゆりは言うと、両手の平から、衝撃波をさとみに向かって打ち出した。今までよりも青白く光り、太い気だった。辺りが眩くなり、一瞬、何も見えなくなった。
 さとみの生身が大きく吹き飛ばされ、屋上の床に転がった。青白い光に包まれたまま、大の字なったさとみは動かない。
「あはは! これで邪魔者はいなくなったわね!」
 さゆりが笑う声が響く中、皆は呆然として、倒れているさとみを見ている。
「さあて……」
 さゆりは面倒くさそうに言うと、朱音としのぶを見た。二人はさとみの姿を見て涙を流しながらも、『般若心経』を諳んじ続けている。さゆりはそれが気に食わない。
「いつまで念仏してんだい、この念仏娘ども!」さゆりが語気を荒げる。「やめないか! やめないんなら、お前たちにも一発喰らわせて、さとみのようにしちまうぞ!」
 朱音としのぶは震えながらも、口だけは別物と言ったように『般若心経』を続ける。
 さゆりは両の手の平を朱音としのぶに向ける。百合恵は動こうとするがまだからだが痺れている。アイは麗子にしがみつかれて動けない。松原先生は片岡を抱えたままどうして良いのかと言った様子だ。
「……好い加減にしなさいよ! この嘘つきめぇ!」
 さゆりの背後で声がした。さゆりが振り返る。さとみがぷっと頬を膨らませて立っていた。


つづく

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