裏シャーロック・ホームズ その13

「ホームズ！　君が国家反逆罪で起訴されたなんて、何かの間違いだろう？」
「いいや、ワトソン、残念ながら事実なんだよ。ちょっとやりすぎたとは反省しているんだが・・・」
「何をしでかしたんだ？　君ほどの愛国者が！」
「昨日、首相とチェスをやってね、十戦十勝だったんだよ」


「ホームズ、お待ちかね、アイリーンからの手紙だよ」
「おお、そうか！　見せてくれたまえ。・・・ふむふむ・・・おおお！　ふふふふ・・・」
「なんだか楽しそうな内容じゃないか、ホームズ」
「まあね。・・・で、ワトソン、二、三日留守にするよ。誰か来たら事件の調査と言っておいてくれたまえ」
「・・・分かったよ。・・・やれやれ『ホームズの醜聞か』・・・」


「ホームズ、君の使う日本の体術は『バリツ』ではなく『柔術』と言うのが正しいらしい。出版物を訂正しておこうかね」
「気にするなよ、ワトソン。そんな東洋の果ての小さな国の事なんか誰も関心を示しはしないさ。まして、そんな国で僕の事件簿が読めるわけがないんだしね」
「ずいぶん自信満々だな」
「そりゃそうさ！　僕はシャーロック・ホームズだ。全てを見通せる知性の持ち主なんだぜ。間違いはないさ！」