goo blog サービス終了のお知らせ 

お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

コーイチ物語 3 「秘密の物差し」 140

2020年09月29日 | コーイチ物語 3(全222話完結)
 アツコは一旦城に戻り、タロウと三人の側近を連れて戻って来た。ナナと逸子とアツコがテーブルの一方の側に座る。側近たちはアツコの後ろに立っている。タロウはテーブルを挟んで立っている。コーイチとチトセはケーイチの所に行ったままだった。
「それじゃあ、計画通りに進めたいと思うんだけど」タロウが皆を見回しながら言う。自信がついたのか、かなり男らしくなってきた。「アツコと側近の三人は、エデンの園に行って、少し待機になる。ナナさんはタイムパトロールに上手く潜り込めればいいんだけど」
「それは大丈夫」ナナは言う。「午後にはタイムパトロールに復帰よ」
「そりゃ頼もしい」
「ねえ、タロウ!」アツコは不満顔だ。「わたしは待機しているだけ? 何かやりたいんだけど」
「今は『ブラックタイマー』の復活の噂をタケルさんとナナさんに流してもらうのが先だ。それが行き渡ったら、支持者は必ずアツコに接触してくる。アツコの活躍はそれからだ。それまでは休んでいてほしい。側近の三人も、いざとなったら働いてもらう」
「わかったわ」アツコは言う。側近たちもうなずく。「……それにしても、タロウ、あなた生き生きしているわね。見直したわ」
「そうかな? でも、確かに今は充実した気分だね」
「そうなんだ。頑張ってね」
 アツコは笑顔をタロウに見せた。タロウは赤くなって下を向いた。
「ねえ、タロウさん。わたしは何をすれば良いの?」逸子が言う。「まさか、留守番?」
「逸子さんは、アツコと一緒にエデンの園へ行ってもらっても良いかな? 支持者が現われたら、捕まえる役をやってもらいたいんだ」
「良いわね、それ!」逸子は楽しそうに言う。「受けた恨みを全部返してあげるわ」
「逸子、それは良いけど、わたしの分も残しておいてよね」アツコは言う。「逸子以上に支持者には恨みがあるんだから……」
「じゃあ、半分ずつで」
 二人は笑った。笑いながらも二人から赤いオーラが揺らめき立っている。即戦闘可能な状態だ。
「それで?」ナナがタロウに言う。「タロウさんは何をするの?」
「ボクは、みんなの情報を収集して、次の手を伝える役をするよ」
「あら、タロウ、そう言うって事は、動かないつもり?」アツコが言う。「ダメよ、動き回らなくちゃ! からだに悪いわ!」
「でも、ボクはからだより頭を使う方が……」
「でも、アツコの言う事に一理あるわ」逸子が言う。「あらかたの作戦は分かったんだから、別にどっかりと座っている必要は無いわ。動きながらでも次の手を伝えられるでしょ?」
「それ、良いわね」アツコがうなずく。「そうだ、タロウ、あなた、タイムパトロールの清掃係になって、タケルさんやナナさんから直接情報を得れば、とっても早いんじゃない? それで次の手をわたしたちに伝えてくれれば良いのよ」
「伝えるって、どうやってだよ?」
「タイムマシンで、ちょっとエデンに来てくれれば良いじゃない? 終わったらまた清掃係に戻るのよ」
「うわあ! なんだかスパイ映画みたいね!」逸子が喜ぶ。「わたし、そう言うの好きだわぁ。秘密諜報員タロウ、コードネームは『000』って感じで!」
「じゃあ、わたし、お偉いさんに会ったら、清掃係をやりたい人がいるからって言って了解取ってみるわ。大丈夫、必ず了承されるわ」ナナが自信たっぷりに言う。「だから、午後にタイムパトロールに来てね、タロウさん」
 勝手に話が決まってしまった。タロウは文句の一つでも言おうと思ったが、相手が悪い。しかも三対一だ。何も言えない。言ったらどうなるか……
「もう時間が無いから、わたし大あわてで買い物をして回るわね」
 ナナは言うとしっかりと財布を持って立ち上がった。
「クレジットカードとかは使わないの?」逸子が、ナナが手にした分厚い財布を見て言う。「いつもにこにこ現金払いなの?」
「そうね」ナナが言う。「そう言う電子的なシステムって、破綻したら怖いじゃない?」
 ナナはそう言うと出掛けて行った。
「タイムマシン製作者の曾孫とは思えないセリフね……」逸子は呆れた顔をする。「ま、そんなものかもね……」
「それじゃ、わたしたちはエデンの園へ行くわ」アツコがタイムマシンを操作した。光が生じる。「逸子さんも行くでしょ?」
「ええ、もちろん」
「……コーイチさんと会って行かなくて良いの?」
「良いわよ。後でナナさんかタロウさんから話しておいてもらえば」
「強いわねぇ……」
「ふふふ…… 信じ合っているから、平気なのよ」
「ははは、やっぱりわたしじゃ逸子さんには敵わなかったわね!」
 アツコと逸子、三人の側近たちは光の中に入って行った。
 一人残ったタロウは憮然とした表情を浮かべ、じっとテーブルを見つめていた。

つづく

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« コーイチ物語 3 「秘密の物... | トップ | コーイチ物語 3 「秘密の物... »

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

コーイチ物語 3(全222話完結)」カテゴリの最新記事