お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第一章 北階段の怪 9

2021年11月01日 | 霊感少女 さとみ 2 第一章 北階段の怪
「姐さん、今日はあの一年生、来ませんね」
 翌日の昼休み、麗子と並んでさとみに机の前に立っているアイが廊下を見ながら言った。仲直りが充分に出来たようで、アイと麗子はべったりとくっついている。
「そうね、昼休みは来ないって言っていたから……」さとみも気になって廊下を見る。「でもね、放課後に来るって言っていたわ。お友だちを連れて……」
「姐さん」アイが残忍そうな笑みを浮かべる。「そいつらが邪魔だって言うんなら、二度と来られないようにしてやりますよ……」
「あら、アイ、何をどうするつもりなの?」麗子が興味津々な顔でアイに訊く。「前に話していた、特殊なお友だちの手を借りて、埋めるか沈めるか売り飛ばすかするって言うの?」
「お、おい! 麗子!」アイが慌てる。「余計な事を言って、姐さんを驚かせるなよ!」
「だって、アイったら、自慢げに言っていたじゃない」
「え? 何のこと?」さとみがアイを見る。「何か、良からぬ事でもしたの?」
「い、いえ! そんな事ありません! 昔の話ですから……」
「ふ~ん……」さとみはうなずく。「まあ、良いわ。でも、悪い事をしちゃダメよ」
「はい、もちろんですよ!」アイがほっと息をつく。「……でも、一年生が邪魔だったら言ってください」
「分かったわ。その時はお願いね」
「はい!」アイは素直に返事をすると頭を下げた。その様子を隣の麗子がにやにやして見ている。アイがそれに気付いて麗子を見る。「……何だよ、麗子」
「アイって、本当にさとみに従順なのね。……わたしにはあれこれ注文付けるくせに」
「お、おい! 変な事を言うなよ!」アイは麗子に文句を言う。その顔はなぜか赤くなっている。「姐さんの前だぞ!」
「良いじゃない。さとみは何にも分かんないわよ」麗子は言うと、アイをじっと見つめる。「……ちょっと、さとみに嫉妬しちゃったのかな?」
 さとみは二人のやり取りをぽうっとした顔で見ていた。
 実はさとみはすでに霊体を抜け出させていたのだ。と言うのも、教室の壁の所に豆蔵が片膝を突いて控えていたからだ。
「嬢様」豆蔵は言って立ち上がる。「昨日の話なんですが……」
「昨日……?」さとみは記憶をたどる。「竜二の彼女さんの事? あ、彼氏さんになるのかな?」
「竜二さん、でやすか……」豆蔵は苦笑する。「話じゃ、竜二さん、覚悟を決めて、虎之助さんと一緒にいるらしいですぜ」
「そうなんだ。まあ、虎之助って人、黙っていたら、すんごい美人に見えるもんね」
「ですが、今はその話じゃありやせん」豆蔵は真顔になる。「ほら、怪しい雰囲気がするって方で……」
「ああ、そっち……」さとみも真顔になる。「何か分かったの?」
「どうも、あちこち嗅ぎまわってみたら、この学校が関わっているようでして……」
「え?」
「大昔から地縛霊をやってる、馴染みのとっつあんに訊いてみたんですがね、ここは昔々は刑場だったそうで」
「そうなの……」さとみの顔が青褪める。「聞いた事ないし、それっぽい霊体も見た事ないけど……」
「まあ、刑場として使われたのはほんの短い間だったようで、その後はしっかりと供養をしたと言う話です」
「じゃあ、安心ね」さとみはほっとする。「だから、見ないのね」
「そうなはずなんですけどね……」豆蔵はぐるりとまわりを見回す。「怪しい雰囲気は、この学校から発せれているようでして」
「でも、供養もしているんなら、問題は無いんじゃないの?」
「何者かが、僅かに残った恨みの邪念を掬い取ったようでしてね。ここに巣食っちまっているようなんです」
「うわ~っ……」さとみも周りを見回す。「……でも、何にも感じ無し、見ないわよ」
「時期が到来するのを待っているのかもしれませんぜ」
「時期って……?」
「邪悪なものには邪悪なものが集って来る。今は、じわじわと集っている最中なのかも知れやせん」
「それが一杯になったら……」
「あっしらだけじゃなく、嬢様の現の世にも、何かあるでしょうね」
「イヤだわ……」
「とにかく、注意してください。あっしも仲間たちと気を付けておりやす」
「みつさんは?」
「みつ様も率先して動いてくれておりやす。……事が事ですからね、みつ様の天誅が出そうですぜ」
「そんなに深刻なんだ……」
「そうなんですよ。また何か分かりやしたら、お知らせに参ぇりやす」
 そう言うと豆蔵はすっと消えた。岡っ引きの血が騒いでいるようだ。……豆蔵ったら、生き生きしているわね。さとみは思った。もう死んで久しい豆蔵だった。


つづく

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 霊感少女 さとみ 2  学校... | トップ | 霊感少女 さとみ 2  学校... »

コメントを投稿

霊感少女 さとみ 2 第一章 北階段の怪」カテゴリの最新記事