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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第三章 窓の手形の怪 6

2021年12月22日 | 霊感少女 さとみ 2 第三章 窓の手形の怪
 用務員室を出て教室に戻る。
「麗子。あそこまで言うんだから、やっぱり明日一緒に行こうよ」途中でさとみは麗子に言う。しかし、麗子は知らん顔をしている。「麗子ったらぁ!」
「イヤよ!」麗子は立ち止まり、少し上半身を折り曲げて、さとみの顔を正面から見つめる。「そんな事、出来るわけないじゃない!」
「でもさ、愛し合う二人の悲しみを救うんでしょ? それを言い出したのは麗子だよ」
「わたしは言うだけよ」麗子は言うと、すっとからだを伸ばす。「たしかに悲しい話だと思うわ。でもね、わたしは、怖いのよ。こ、わ、い、の!」
「な~に、開き直っているのよう!」さとみはぷっと頬を膨らませる。「せっかくの『弱虫麗子』返上のチャンスじゃないのよう!」
「わたしね、さとみが思っている以上に、その手の話はダメなの!」
「だから、そんな事で開き直らないでよう!」
「ふん! さとみはわたしをからかいたいだけでしょ? もう良いわよ! これからは『弱虫麗子』って呼べば良いんだわ!」
「そんな風に開き直られたら、わたし、困っちゃうわ……」
「何よ? 反省したの? もう『弱虫麗子』って言わないって決めたの?」
「そうじゃないわ。開き直られたら、からかいがいが無いから困るのよ!」
 さとみはそう言うと、きゃっきゃと笑いながら駈け出した。
「さとみぃ!」
 麗子はむっとしながらも、やや口元を緩ませてさとみを追いかける。
 教室前の通路にアイと朱音としのぶがいた。自分仕様に制服を着崩している不良っぽいアイと、まだまだ初々しい背服姿のぴかぴかな朱音としのぶたちとの対比が妙に面白い。さとみと麗子を見つけると、朱音が駈け寄って来た。
「会長! 麗子先輩! 二人してどこへ行っていたんですか? お二人ともいないんでどうしようかとアイ先輩と話していたんですよ!」
「ああ、ごめんなさい。用務員室へ行っていたの」さとみがぺこりと頭を下げる。「三階の用務員さんの物置部屋の窓に手形が現われるって話を聞きに行っていたのよ」
「わっ!」そう一声叫んで割り込んできたのはしのぶだ。「井村先生の言っていた話ですよね? 連れて行ってくれれば良かったじゃないですか!」
「でも、ほら、みんなでぞろぞろ行くのもどうかなって思って……」
「それはそうでしょうけど……」
「おい、お前ら」アイが少しドスを利かせた声で言う。「会長が判断なさったんだ。舎弟のわたしらがあれこれ言うんじゃねぇ!」
「でも、アイ先輩……」朱音が不満そうに唇を尖らせる。「心霊サークル『百合恵会』のメンバーとしては、話を聞きたかったです」
「お前ら、まだ立場を分かっていねぇようだな……」アイが右手で拳を作る。「分からせてやろう……」
「まあまあ、アイ、落ち着いて」麗子がすっとアイの横に立ち、握った拳の上に手を重ねる。「一年君たちはサークル熱心なだけよ。逆らうつもりなんかないわよ」
「でもよう、それじゃ示しがつかねぇよう……」
「アイ、ありがとう」さとみは言ってアイにぺこりと頭を下げる。「心配してくれているのよね? 骸骨の時の様に守ってくれようとしているのよね?」
「あ、いえ…… 会長、そんな頭なんか下げないでくださいよ……」アイは戸惑う。「でも、その通りです。舎弟はからだを張って会長をお守りするのが務めですから……」
「分かったわ。これからは気を付けるわね」さとみは言って笑む。「じゃあ、そろそろ午後の授業が始まるから、詳しい話は放課後の活動時間の時に。今日は麗子も参加するわ」
「え?」麗子が驚く。「……そうしたいけど、わたし、ちょっと用事が……」
「何を言ってんだ、麗子!」アイが麗子の肩を叩く。「心霊サークルの幽霊部員なんて洒落にならないぜ」
「そうですよ、麗子先輩」朱音が言う。「先輩も話を聞いたんですから、是非参加してください!」
「ふっふっふ、麗子……」さとみが麗子に笑いかける。「逃げれらないわよ……」
 そう言うとさとみは首の辺りで両手をだらりと下げて上目遣いで麗子を見た。麗子はイヤな顔をする。午後開始の予鈴が鳴った。


つづく

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