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霊感少女 さとみ 2  学校七不思議の怪  第三章 窓の手形の怪 7

2021年12月23日 | 霊感少女 さとみ 2 第三章 窓の手形の怪
 午後の授業中、麗子は帰る言い訳を考え続けていたが、結局見つけられなかった。
「さあ、行くわよ」さとみはにやにやしながら麗子を見る。「ほらほら、みんなを待たせちゃいけないわ」
「うるさいわね、分かったわよ!」
 麗子はさとみに連れられて北側校舎へと向かう。
「……ねぇ、ここって使われていないんじゃなかったっけ?」
「そうよ」さとみは平然とした顔で言う。「ここの階段で、ちょっとあったけど、もう解決したわ。今ではな~んにも出ないから。安心して」
 麗子はイヤな顔をする。反対に、さとみはにやにやしている。
「……あなた、性格悪くなったんじゃない?」麗子がむっとした顔で言う。「ちょっと会長になったからって偉くなったとでも思ってんの?」
 さとみはそれに答えず、にやにやしながら階段を上がる。
 三階のサークルで使っている空き教室に着いた。すでに、朱音としのぶ、アイが居た。さとみを見ると、アイは立ち上がって頭を下げる。朱音としのぶもそれに倣う。アイの教育がしっかりしているようだ。松原先生は鷹揚にさとみに手を振って見せた。
「で、会長!」しのぶが抑えきれなかったのか、さとみが座る前に言い出す。「お昼の時の話、詳しく!」
 しのぶの隣に座っている朱音もうなずく。麗子はアイの隣に座り思いっ切りイヤそうな顔をして眺めている。アイはそんな麗子に気がついていないのか、熱心な眼差しをさとみに向けている。松原先生は窓の外を見ている。
 さとみはこほんと軽く咳払いをして話し始める。
「用務員の高島さんの話だと、三階の用具置き場の部屋の窓に手形が付いていたんだって。窓の内側と外側に。内側には女の人のような手形、外側には男の人のような手形。それが重なるようについていたんだって。まるで、手の平を合わせるかのように……」
「わあっ!」朱音が叫ぶ。「なんだかロマンチック!」
「……そうね。麗子もそんな事を言ったわ。愛し合っていた二人が何らかの事情で会えなくなっているんじゃないかって……」
「ほ~う……」アイがにやりと笑って隣の麗子を肘で突く。「麗子、良い事言うじゃねぇか」
「いや、単にそう思っただけよ……」
「麗子先輩って乙女なんですね!」朱音はキラキラした瞳を麗子に向ける。「素敵ですぅ!」
「で、会長、確認は出来たんですか?」しのぶは心霊モードが全開のようで、みんなのロマンチックな雰囲気に気がついていない。「高島さんにお願いして用具室を見せてもらいましょうよ!」
「でもね、しのぶちゃん。高島さん、拭き取っているって言っていたわ」
「ええっ! もったいない!」しのぶは悔しがる。「そんなにはっきりとした霊障が出ているんなら、画像か動画に収めたいです!」
「ここ一週間、毎朝手形が残っているって言っていたわ。それを拭くのが日課になっているって。それで、明日の朝、一緒に行って見る事にしたのよ」
「会長! わたしも一緒したいです!」しのぶが手を上げながら立ち上がる。「家にあるデジカメを持って行きます! 動画も撮れるし」
「それにしても不思議なんだが」松原先生が割って入る。「霊ってのは窓なんか通り抜けられるんじゃないのかね? それが窓越しでしか会えないって言うのは、ちょっと、納得が行かないなぁ」
「きっと、あの黒い影だわ!」しのぶが言って松原先生に振り返る。「北階段で見たあの影が何かしているんですよ!」
「……そう言えば、骸骨の時に百合恵さんが、結界が張られているなんて言っていたわ……」さとみがつぶやく。「そのせいかしら?」
「きっと、そうです! そうに決まりです!」朱音が立ち上がって強い口調で言う。「愛し合う二人の仲を裂くなんて、なんていじわるなんでしょうね!」
「かね、そうじゃないと思う」ぷりぷりと怒っている朱音に、しのぶが冷静に言い返す。「きっと彷徨ってきた浮遊霊が、あの影が張った結界の影響で校舎の内と外に分断されちゃったのよ」
「それともさ、女の方がその影とか言うヤツのお気に入りになっちまって、出してもらえなくなった、とかさ」アイが楽しそうに言う。「わたしの知っている娘もそんな目に遭った事があるからさ。まあ、わたしが助けに入ったんだけどもね」
「わ~っ、アイ先輩って、本当に強いんですね!」朱音が感激したように言う。「素敵ですぅ!」
 朱音は誰でも素敵に見えるらしい。


つづく

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