薩摩反骨2・振動板の構造改革-③従来振動板の弱点とDSS振動板

2022年11月04日 | 薩摩反骨(スピーカー維新)

反骨精神! 長い物に巻かれるな(そのうち踏まれちゃうゾ!)

 

 

◆ 振動板の構造改革-③従来振動板の弱点とDSS振動板

 

<おさらい>

 前二回の「①分割振動の不都合な真実」と「②現代スピーカーで失われたもの」を要約すると下記の様になります。

・ 従来の振動板では波打ち現象(分割振動)が常に発生しており、この事はハイテク素材やハニカム材を用いたとしても不可避である。そのせいで本質的に応答が良くない。

・ 分割振動を高度に処置していると謳う製品で行っている事は、分割振動の一形態である「共振現象」を強く抑える処置を意味しており、分割振動そのものを排除している訳ではない。

・ クリアー感のある音作りのためには、分割振動に含まれる「共振現象」を意図的に利用する必要があり、これによりヴィンテージスピーカーの時代には絶妙に塩梅調整された数々の名器が生み出された。但し、個性が強く、耳障りな音の傾向もあった。

・ 現代スピーカーでは聴感よりも特性が優先となり、「共振現象」を強く抑える事となった。その結果、癖や歪み感のより少ない音質となったが、その代わりにクリアー感の不足した覇気のない傾向の音作りになっている。

・分割振動の内、軸対象モードは注目されてきたが、釣鐘モードはあまり注目されていない。しかし、非常に低い音域から発生し、低音や中音のしっかり感、躍動感に必要な「クリアー」な音質を損ねている事はあまり認知されていない。

・ 以上より、本質改善としての生き生きとした(応答の良い)音質と歪みの無い(柔らかい)音質の両立のためには、分割振動そのものを排除する必要がある。

 

<従来の振動板の構造的弱点>

 それでは、従来のコーン形やドーム形と呼ばれる振動板は、何故分割振動を排除するのが難しかったのでしょうか。

 

※ コーン(ドーム)形状を正面から押す力(それなりに硬い)

 

※ コーン(ドーム)形状を横から押す力(簡単にたわむ)

 

 従来の振動板は、板をすり鉢形やドーム形にプレスした簡便な形状の物であり、真正面から受ける力には強いので、軸対象モードにはある程度抗することが出来ますが、横方向の力(釣鐘モード)にはほとんど剛性が無い(簡単にたわむ)という弱点があります。この弱点は、軽金属や炭素繊維、ハニカム材等のハイテク素材を使用したとしても、それ程改善されません。この事は、振動板形状(構造)そのものに起因する限界なのです。

 そこで必要になるのが「振動板の構造改革」であります。

補筆
 ハニカム・サンドイッチの平面振動板等、他にも色々な構造の物がありますが、共振は抑える事が出来ても、分割振動そのものを排除するのは絶望的に難しいとだけ申し上げておきます。また膜型の全面駆動スピーカーに関しましては、話が混み入るので割愛させていただきましたが、もしも中音/低音域で躍動感を出す事が可能になれば、DSS振動板スピーカーと同じ方向性を持つと考えます。何れの方式にせよ、「柔らかい」と「クリアー」の両立は極めて困難なのです。

 

<DSS振動板の構造>

 それではDSS振動板の構造について解説します。DSS振動板は、従来のコーン形やドーム形の振動板構造そのものを改革し、剛性を大幅に向上する事で、分割振動を本質排除しようというものです。下の図(断面図)はDSS振動板の最新構造(特許出願済)です。おわん形のドームを向かい合わせ(空飛ぶ円盤の形)に接合し、内部の中心部に連結筒がはいったものが基本構造(注1)です。実際には、内部に更に複雑な補強が入ります。この殻構造により、向かい合ったドームがお互いに突っ張りあう事で、正面、横方向の全方向に対して非常に高い剛性を発揮する事が出来ます。

※ DSS振動板ユニット の断面構造例

 

※ 向かい合わせ突っ張り構造による全方向高剛性化

 

(注1) 現行の 島津Model-1 では、菱形(そろばん玉形)です。今後のより大きな口径のDSS振動板については、おわん形を向かい合わせにした形状になる予定です。

 

次回に続く

 

 株式会社 薩摩島津 ホームページ・リンク



最新の画像もっと見る