橘の下吹く風のかぐはしき筑波の山を恋ひずあらめかも(万葉集巻20 No.4371)
筑波山は珍なる山である。周辺を見渡してもほかに目立つ山がない独立峰でありながら火山ではない。
火山というものは、地下のマグマ溜まりから溶岩が上昇し、地表から溢れ出したものであり、溶岩が大地をゆるがすのが特徴である。一方筑波山を構成する物質は、かつてのマグマ溜まりそのもの。マグマ溜まりが冷え固まった後、地殻変動により地上に現れ出たものである。
似ているように思われやすいが、筑波山は火山活動を伴わないので、いつも静かに佇んでいる。そして硬い岩石で出来ているので風雨により浸食されることなく、高く聳えている。
麓には日本で2番目に広い湖である霞ケ浦がある。
霞ケ浦は、昭和40年代までは多少の塩分を含む汽水湖だったが、下流に大規模な水門(逆水門)が設置され、現在は完全に真水の湖。東西の鉄道2路線の中間に位置しており、文明に取り残されたような静かな風景が広がっている。昔は砂浜が多く、海水浴ならぬ湖水浴が盛んだったそうであるが、現在砂浜になっている場所は少ない。
第二次世界大戦中に水上離発着飛行機を陸からおろしていたスロープは、現在レジャーボートのスロープとして利用されている。
淡水の漁港なるもの見てみんと。おお筑波嶺が近くに聳え(©椎名夕声。短歌人2023年7月号)
千葉県の北部に長く暮らしておりながら、4月以前に霞ケ浦(茨城県南部所在)を見たことが無かったのは、ほとんどの人がそうであるように、用事がありそうな場所ではなく、また霞ケ浦の近くに主要な道路も通っていないからである。筑波山へは何度も訪れているが、霞ケ浦に寄り道するということは、発想すらなかった。
日本一広い琵琶湖には、観光で行ったことがあるが、淡水の漁港というものを見たことがなかったので、思い立って霞ケ浦へ出かけてみたら、その広さに圧倒された。対岸までは、地図上で測ると10キロメートルある。それだけの距離があると、良く晴れた日でも、霞んで見えるときもある。
今井正監督の映画「米(こめ)」(1957年公開)には、帆掛け船で漁をする様子が描かれている。
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