
中学時代、当時改装中の東山堂書店でもう一冊、文庫本を買った。新潮文庫の『ビートルズ』。それで、リヴァプールの労働者階級の4人が、どのように成り上がり、もみくちゃにされ、コンサートをやめ、仲違いして、バラバラになったかを知った。
でも、まあそんなものだろうな、くらいで特別な感慨は起こらなかった。彼らがどんな連中であろうと、音楽は圧倒的にすばらしかった。明けても暮れても、ビートルズ! ビートルズを聴かないヤツなんて、信じられなかった。
問題は音にある。だから、美術館の写真展そのものが、めちゃくちゃ感動的というわけではない。会場で細く流れていた「Yellow Submarine」の音を、ずっと聴いていたかったくらいだ。でも、忘れていたものを思い出すためには、何かのきっかけも必要なのだ。
ジョンの愛用したのと同じジャケットというのがあった。(細身だな。)ジョンとポールのギターと同型のが展示してあった。ゴールドディスクの数々。でも写真は、「僕の知らない外国人のお兄さんたち」という感じだった。
けど、音は、心の底に流れる川、だからね。生きているかぎり、それは流れ続けるのだろうと、思うよ。