夢
私の
ただ一つだけの
外部への出口
野ばら en hommage à Mimei
野ばらの咲いた 陽あたりのよい 春のベンチで
青年はショスタコーヴィチが好きだと言った
老人はヴィヴァルディが好みだと返した
二人はこのところの知り合いだった
青年は 楽器を欲しがっていた
やわらかな音の出るコルネットを
老人は もはや自分の唇が震えないことを知っていたので
リコーダーが欲しいと言った
青年は 未来や憧れについて語った
そのことばは尽きることがなく
紙に向かうと とめどなく書かれた
老人は 自分の思い出について
ことば少なく語った
自分の書いたもの 自分の演奏した曲
青年と老人は この夢の中だけで会う
彼らはこの夢から外に出られない
仮に外へ出たとしても そこは
野ばらも太陽もない 永遠の冬だと
彼らは気づかなければならない
不条理について
われらは皆 孤独を求める輩で
切り離されていなければ 何も生まれない
だが生まれたものは 分かち合わなければ
意味を持たない という不条理の中にある
だから束の間だけ 交わらなければ
と夢の外に出るのだが すぐに戻ってくる
われらに与えられるのは ひとつかみの空間
そこに籠もって 紙を見つめる
われら ものを書く輩
夕暮れ
夕暮れは 誰の上にも等しく訪れる
空は空虚でさえぎるものがない
遠い山にも 青い帳りが迫る
けれど 夢の中では
決して会うことのできない人にも会うことができる
今 同じ夕暮れに包まれている人に
私の
ただ一つだけの
外部への出口
野ばら en hommage à Mimei
野ばらの咲いた 陽あたりのよい 春のベンチで
青年はショスタコーヴィチが好きだと言った
老人はヴィヴァルディが好みだと返した
二人はこのところの知り合いだった
青年は 楽器を欲しがっていた
やわらかな音の出るコルネットを
老人は もはや自分の唇が震えないことを知っていたので
リコーダーが欲しいと言った
青年は 未来や憧れについて語った
そのことばは尽きることがなく
紙に向かうと とめどなく書かれた
老人は 自分の思い出について
ことば少なく語った
自分の書いたもの 自分の演奏した曲
青年と老人は この夢の中だけで会う
彼らはこの夢から外に出られない
仮に外へ出たとしても そこは
野ばらも太陽もない 永遠の冬だと
彼らは気づかなければならない
不条理について
われらは皆 孤独を求める輩で
切り離されていなければ 何も生まれない
だが生まれたものは 分かち合わなければ
意味を持たない という不条理の中にある
だから束の間だけ 交わらなければ
と夢の外に出るのだが すぐに戻ってくる
われらに与えられるのは ひとつかみの空間
そこに籠もって 紙を見つめる
われら ものを書く輩
夕暮れ
夕暮れは 誰の上にも等しく訪れる
空は空虚でさえぎるものがない
遠い山にも 青い帳りが迫る
けれど 夢の中では
決して会うことのできない人にも会うことができる
今 同じ夕暮れに包まれている人に