高めに推移してきた都内の気温が、16日は平年並みに下がった。寒さの本格化に合わせ、電力不足への懸念から節電商戦も盛り上がっている。だが、電力需要が午後に集中する夏場と異なり、冬場は仕事が終わる夕方以降に電力需要が高まるケースが多く、企業の節電策は決め手に欠ける。電力不足が懸念される電力会社は企業向けの「節電割引」を導入して協力を求める考えだ。
東北・関西・九州で不足
政府がまとめた電力需給見通しによると、今冬は特に関西電力、九州電力、東北電力で電力不足が深刻化する。昨冬のピーク電力と比べ、関電で最大9・5%、九電は同2・2%が不足する。両社は原発への依存度が他電力より高いが、定期検査で停止し、再稼働のメドが立っていないからだ。
東北電力は発電設備が東日本大震災の直撃を受けたため最大5・3%不足するが、東京電力などからの電力融通で不足分をカバーできる見通しだ。
このため政府は、12月19日以降、関電管内でピーク電力を昨冬比10%以上、九電管内で5%以上節電することを求めている。対象期間は関電管内が来年3月23日までの平日午前9時~午後9時、九電管内は同2月3日までの平日午前8時~午後9時だ。
この2社と沖縄を除く電力7社管内は12月~来年3月末の平日を対象に数値目標を掲げずに節電を要請する。政府は今冬、強制力を伴う電力使用制限令の発動や計画停電は回避する。
電力5社「節電割引」
途切れることなくライン上を流れ続ける石油ストーブ(名古屋市瑞穂区のトヨトミで)
ジャケットの下に着られる薄手のセーターなど、ウオームビズ商戦が本格化している(西武池袋本店で)
今冬に電力不足が懸念される関西電力、九州電力、東北電力の3社と北海道電力、四国電力は、大型の工場や店舗など大口需要家を対象に、12月から順次、節電の度合いに応じた電気料金の割引制度を導入する。大規模停電など不測の事態を避けるため、企業に節電を促すのが狙いだ。
割引は、電力各社は大口需要家との間で個別契約を結んで料金を決めることができる仕組みを活用する。一般家庭など小口契約者は対象外だ。
関電は50~500キロ・ワットの契約者を対象に、昨冬のピーク電力よりも使用電力を減らせば、1キロ・ワットあたり700~1000円程度割り引く料金メニューを新設した。
東北電力は、年末年始などを除く12月~来年2月末の午前9時~午後9時に一定時間以上、昨冬のピーク電力と比べて節電すると、基本料金を割り引く。企業にとっては、電気料金負担が月数十万~数百万円軽減される。東北電力はすでに北海道、東京の2社から電力融通を受け始めている。割引料金の導入で一般家庭5万世帯分に相当する15万キロ・ワットの節電を目指す。
腹巻き、石油ストーブ売れ行き倍増
節電のためにオフィスの暖房温度を低く設定するのに備え、暖かい服装で仕事をする「ウオームビズ」関連の商戦は、例年にない盛り上がりだ。
節電意識の高まりを見込んで夏の終わりに売り場を開設する動きもあった。しかし、11月に入っても気温は全国的に平年を2~3度上回って推移したため売り上げは伸び悩んでいた。
西武池袋本店は、8月末にウオームビズ関連商品の売り場を開設した。保温性のある機能性肌着、スーツの下に着る薄手のセーターなどの品ぞろえを充実させた。朝晩の気温が下がり始めた先週初めから売れ行きが本格化し、カラフルな男性用腹巻きは前年比2倍のヒット商品となっている。
自宅の暖房を控えるために、部屋着などの需要も変化している。
イオンは、保温機能を高めた部屋着や寝具の自主企画商品を充実させている。室内で着る軽量のダウンジャケットは、「体感温度が2度上がる」といい、売れ行きは前年の2倍と好調だ。
高島屋は、女性の冷え対策として、「毛糸のパンツ」を充実させた。丈の短い商品に加え、足首まで覆うタイプも用意した。「予想以上の人気で、品切れの恐れすらある」という。
企業、努力限界
工場が関西電力、九州電力管内に集中するダイハツ工業は、「電灯の間引きなど地道な節電は続けるが、夏とはピーク時間帯も異なるため、詳細な対策は検討中」にとどまる。
日本自動車工業会は、電力使用制限令が施行された7~9月に、土曜と日曜に操業する代わりに木曜と金曜を休みにした。だが、「従業員や家族の負担が大きかった」(志賀俊之会長)ため、今後は実施しない方針だ。
東京電力管内に事業所が多い日立製作所も「現時点では、輪番休業などは考えていない」という。
ただ、日産自動車は九電管内の子会社工場で、通信回線を使って電力使用量を管理する「スマートメーター」の導入を検討している。今夏に導入した東電管内の工場で、ピーク電力量を15~20%抑制できたからだ。
三菱電機は、関電や九電管内の事業所で、省エネ効率が高い空調設備の導入を目指す。暖房設定温度を例年よりも引き下げることを検討している企業もある。
灯油値上がり
電気を使わない石油ストーブの売れ行きも好調だ。ホームセンター大手のカインズでは、今年の石油ストーブの売り上げが前年比5倍になっているという。スーパー大手イトーヨーカ堂でも約2倍の売れ行きで、品薄となっている。
石油情報センターによると、14日の灯油18リットルの店頭販売価格は全国平均で1587円と、前週より4円上昇した。原油価格の上昇を受けたもので、値上がりは2週連続だ。ただ、石油業界は灯油の在庫を順調に積み上げており、当面の需給に問題はないという。
(2011年11月17日
読売新聞)
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