井泉短歌会

ようこそ、井泉(せいせん)短歌会です。

題詠「つる」

2007年05月24日 | 過去の誌面より
題詠「つる」(第13号)より抜粋

土鈴の鶴   石川裕子

 お庭焼きとふ土鈴の鶴をあがなひて岡山城の天守に登る
 つるつるに磨かれし杉の床柱京の北山雪降りやまず
 甚五郎作とふ専修寺飾り鶴夜な夜な池の魚漁りしと
 吊し雛ふくら雀にはひはひ人形伊豆の海辺のホテル華やぐ
 鮎を釣る人ら黙して川中に塑像のやうに並びて佇てり
 吊りしのぶ窓辺に吊し涼風を待ちゐし祖母の着物姿よ
 幾たびも「ジャックと豆の木」読まされし窓辺にあをあを朝顔のつる
 

夢二好みの  黒田淑子
 
 鶴描く白地に墨絵の付下げを嫁しゆく姪に餞とせり
 つる薔薇の垣に著けき紅のいろ真青の空に白雲浮きて
 ビンテージつるつるてんに纏ひたる夢二好みの少女行き交ふ 
 マルコポーロ眼鏡の弦(つる)の名称を言ひ当てられて会話始まる
 能楽の「半蔀(はじとみ)」観つつ蔓の縁美女との交流偲びゐにけり
 秋の日は釣瓶おとしと言ひたりき古語となりしや若きは知らず
 銀杏の中身つるりと翡翠いろ秋の味覚のなつかしく沁む

 
(それぞれ、連作13首から7首を抜粋しました。)

(第13号、2007年1月1日発行)

題詠「せん」

2007年05月24日 | 過去の誌面より
題詠「せん」(第12号)より抜粋

燕去り月   近藤キクエ

 憲法九条揺れゐる国に恙無く洗濯物を静かにたたむ
 閃光の照らせる薄闇 あえかなる真白き花の烏うり匂ふ 
 投げ入れたる賽銭の音鈍くして旨寝ゆ覚めたる神もあるらめ
 染料に使ひし日あり露草の藍深まりて燕去り月
 実り田の穂群に魅かれ来る鳥を幾千追ひしや案山子が傾ぐ
 眼交をとぶ秋茜 きこしをす国のまほらの千枚田の秋
 井泉のほとりに多(さは)なる烏うり実りの季を迎へて輝く
 

井泉  生田芳正
 
 潺潺と井泉溢れゆくところ裸足になりてクレソンを摘む
 甘柿に富有西条次郎ありその名のゆゑに禅寺丸柿愛す
 千振をかめば苦き苦きこの苦み遥かなるかも曾祖母の味
 七十を過ぎてふたたび尖鋒に立ちしよろこび誰に告げなむ
 午前二時ひそと帰りし玄関にマレー原産ジンジャーにほふ
 終戦の詔勅聞きゐし炉の上の蝿取りにべつたり蝿付きゐたり
 汗みどろ冷や汗みどろの季節すぎて都心の運河に宇宙戦艦ヤマト


(それぞれ、連作13首から7首を抜粋しました。)

(第12号、2006年11月1日発行)

第二回井泉大会

2007年05月22日 | 歌会のお知らせ
5月20日(日)、第二回井泉大会が行われました。
昨年に引き続き盛会となり、たいへん嬉しいことです。
忌憚ない意見の交わされた歌会、親睦を深めた懇親会と、充実した一日となりました。
どうも有難うございました。
今後も御一緒に勉強してまいりましょう。

第十五号目次

2007年05月14日 | 目次
「井泉」第十五号 目次 (2007年5月)
表紙絵 春日井建

招待作品
 溜池・・・平井弘 2

題詠 「おう」
 歳月・・・勝弘美 4
 聖母・・・加藤裕子 5

作品(一)・・・6

リレー評論 一九九〇年代以降、短歌のなにが変わったか
 基軸の不在と穂村弘現象・・・小高賢 22
 塚本邦雄のライトヴァースとブラックユーモア・・・大熊桂子 26

稲熊みよ子歌集『立華』評
 若き日の頬花は知らざり・・・喜多昭夫 30
 言葉は花びらの一片に似て・・・彦坂美喜子 32 

作品(二)・・・34

前号歌評(前)・・・徳高博子 46
前号歌評(後)・・・久志歌代 48

作品(三)・・・50

井泉大会のお知らせ・・・69
いずみ(随筆)
 木曽三川のはざまに育って・・・伊藤千鶴子 70
 
評伝 春日井建(十三)・・・岡嶋憲治 72

歌会だより・会則・投稿規定・・・76
編集後記