井泉短歌会

ようこそ、井泉(せいせん)短歌会です。

題詠「せい」

2006年05月19日 | 過去の誌面より
題詠「せい」(第8号)より抜粋

壷屋   加藤秀子

 琉球の壷屋に生れて壷屋焼 翁は征せり炎を土を
 名にし負ふ壷屋の壷は立ちあがる壷の形に成形されて
 聖観音掌に受けたまふ宝珠とも形やさしき水滴のあり
 客一人ゆゑに正客 掛軸の一筆書をせいぜい誉めて
 骨太の陶工作りし水滴は星辰ふふむ清水を吐きぬ
 青墨をおろししたたむる年賀状別れし歳のままなる君へ
 転居通知来るたび君は遠ざかる半世紀経て欧州の果て


冬瓜正座す  栗田加壽

 放つといて私は私でゐたいのと言へばせいせいした筈なのに
 小雀の喋りにも似る声がして制服の足信号渡り来
 思ひあぐね実らぬ言葉つなぎとめ勢至菩薩の光をせめて
 誰のせゐでかくもざんざと哭く雨か紅葉滴る奥山峡に
 生ごみを埋めた小庭の片隅の枯草のなか冬瓜正座す
 背が少し小さくなりたるわが肩をそつとかかへて男の孫歩く
 プチポアンのバッグを買ひて精一杯感謝のつもりきみへの土産

(それぞれ、連作13首から7首を抜粋しました。)

(第8号、2006年3月1日発行)

題詠「時」

2006年05月19日 | 過去の誌面より
題詠「時」(第7号)より抜粋

歌棄の海   大熊桂子

 ゆふぐれの時雨の街より帰りくれば薄雪かぶる垣の満天星(どうだん)
 空襲に逃ぐるさなかに祖母(おほはは)が抱へし時計納戸にありき
 止まりたる振子時計を捨てかねてしまへば記憶のねぢも錆びたり
 立ち止まり立ち止まりつつ追ひ風に身を立てなほし時の橋越ゆ
 降り来たる千の白頭翁(むくどり)夕時の一樹に寄り合ひ鳴き交はしをり
 非時香菓(ときじくのかくのこのみ)を食ぶればかなしみは来つ師を死なしめし実
 時はいま水平線に陽が沈む秋荒波の歌棄(うたすつ)の海


冬銀河   さとうますみ

 低気圧冷えた時流にながされて黒衣の鳥が首都に集まる
 騒乱が広がってゆく 流されし血のあたたかさ時評は伝えず
 あのときが道の分かれ目だったなどと未来のある日思うだろうか
 一遍の時宗の踊りにまぎれこみサンバ踊れば癒されるはず
 ネジ巻きて懐中時計の鼓動聴く明治の祖父を追いかける音
 賛美歌を琴で弾きつつふっくらと金時豆が煮えるのを待つ
 時化(しけ)ののち手でさわれそうな冬銀河銃持つ人にも見えるだろうか

(それぞれ、連作13首から7首を抜粋しました。)

(第7号、2006年1月1日発行)

第九号目次

2006年05月19日 | 目次
「井泉」第九号 目次 (2006年5月)
表紙絵 春日井建

招待作品(詩)
 不詳肌・・・野村喜和夫 2

題詠「ます」
 そつとおねがひ・・・国見朝子 4
 美しきレッスン・・・古家シゲ 5

作品(一)・・・6

リレー小論 わたしが評価する今の短歌
 平常心のロー・テンション・・・井辻朱美 24
 天皇やらブッシュやら・・・島田修三 26
 「井泉」八号の作品を手がかりに・・・岡嶋憲治 28
 「豊作」の歌人たち・・・喜多昭夫 30

長嶋香世歌集『ヴァロリスの丘』評ーどちらとも思わないという項目・・・荻原裕幸 32
長嶋香世歌集『ヴァロリスの丘』評ー私性と非私性の間・・・三井修 34

作品(二)・・・36

前号歌評(前)・・・小松甲子夫 54
前号歌評(後)・・・江村彩 56

作品(三)・・・58

井泉大会のお知らせ・・・75

いずみ(随筆)
 笑顔のひと・・・森川謹子 76
 
歌会だより・会則・投稿規定・・・77

編集後記

第一回井泉大会

2006年05月15日 | 歌会のお知らせ
5月14日(日)、第一回井泉大会が行われました。
おかげさまで盛会となり、一同喜んでおります。
活気ある歌会、なごやかな懇親会と、終始よい雰囲気で進行しました。
どうも有難うございました。
今後の活動に是非つなげていきましょう。