題詠「器」(第4号)より抜粋
forget-me-not(勿忘草) 櫛田君代
悲しみの器と言はれし人なれど今は小さき壷に鎮もる
カノプスなる容器に臓器納めおきミイラは蘇生の夢を見るらし
プワズンの空瓶に挿す一茎の摘みしばかりのforget-me-not(勿忘草)
蜻蛉舞ふガレの花瓶は止しなさいあなたの生活破壊しますよ
移植せし臓器の鼓動が速くなり古きときめき思ひ出さずや
たをやかにクリーム舐め終へその器をシャキシャキシャキと胃に収めたり
片隅に捨ておき忘れしアイビーが鉢はみ出して庭這ひまはる
さびしさのうつわ 佐藤晶
はじまりの器(うつわ)思えばきよらなる泉の水を掬いし両手
光濃き影濃き季節さびしさのうつわとなりてヴァイオリンを弾く
ミルフィーユふと瓦解せりかろやかに兵器工場稼働しおらん
精密機器こわれやすくて高性能の人種なにかとカフェに集まる
器量とは男子は才覚女子ならば容貌を言う たぶん今でも
博物館の土師器も須恵器も口あけて太古の空を呼んでいるらし
若者の形の闇をとじこめる器(うつわ)として立つ俑(よう)の幾千年
(それぞれ、連作13首から7首を抜粋しました。)
(第4号、2005年7月1日発行)
forget-me-not(勿忘草) 櫛田君代
悲しみの器と言はれし人なれど今は小さき壷に鎮もる
カノプスなる容器に臓器納めおきミイラは蘇生の夢を見るらし
プワズンの空瓶に挿す一茎の摘みしばかりのforget-me-not(勿忘草)
蜻蛉舞ふガレの花瓶は止しなさいあなたの生活破壊しますよ
移植せし臓器の鼓動が速くなり古きときめき思ひ出さずや
たをやかにクリーム舐め終へその器をシャキシャキシャキと胃に収めたり
片隅に捨ておき忘れしアイビーが鉢はみ出して庭這ひまはる
さびしさのうつわ 佐藤晶
はじまりの器(うつわ)思えばきよらなる泉の水を掬いし両手
光濃き影濃き季節さびしさのうつわとなりてヴァイオリンを弾く
ミルフィーユふと瓦解せりかろやかに兵器工場稼働しおらん
精密機器こわれやすくて高性能の人種なにかとカフェに集まる
器量とは男子は才覚女子ならば容貌を言う たぶん今でも
博物館の土師器も須恵器も口あけて太古の空を呼んでいるらし
若者の形の闇をとじこめる器(うつわ)として立つ俑(よう)の幾千年
(それぞれ、連作13首から7首を抜粋しました。)
(第4号、2005年7月1日発行)