読む、書くの雑多な日々、気まぐれな日常

好きなこと、雑多な日々、小説などを色々と書いていきます

寒い

2021-01-12 16:35:22 | 日記

 朝から雪が積もっていたけど、昼を過ぎる頃にはホトなど溶けてしまった、こういうときって何をする木にもなれなくてなんとなくだらだらとしてしまったけど、それは昨夜、書くのに時間がかかったせいかなあと思ったわ。
 

 集中というか、途中で少し変更したい部分があって、書き直していたら変更したいという部分が色々と出てきてしまって、キャラクターの設定も変えようと思い立ってしまったのだ。
 

 今回、大人だけど無自覚ヒロインと言うことにして、恋愛、ギリギリで逆ハーを書きたいと思っているから、ハガレンの二次とかよりちょっと時間が。
 
 でも、ハガレンも舞台がブリックスに変更になったことで、ラストもメインキャラっぽくなってきたので書きたいと思っているのだが。
 

 文章を書くのにアウトラインプロセッサーを使おうと思っていたら、どれを使えばいいのか、迷いすぎてわからん状態、やはりこういうのは使い慣れた者が一番いいのだろうか。
 

 一太郎のエディタモード、MERYを使ってるのだが、こっちの方が楽かなあと思ってしまう自分がいるのよね。 
 


「母は♂だそうです、そして、やっと、ハグとほっぺにチューも慣れてきました」

2021-01-10 23:29:30 | オリジナル小説

 大事な事、驚かないで聞いて欲しいのよと言われて、その日、緊張しながら目の前に出された紅茶に手をつける事もできないでいた、やはり母親の知り合いだからといって、その娘と一緒に暮らすというのは無理があるのかもしれない。
 

 退院して三週間、その間、のんびりだらだらと過ごしていたのだから、出て行けと言われても不思議はない。
 
 「実はね、あたし、男なの、元は、だけど」
 

言われて、はあっと頷いた。
 

 「そう、ですか」
 

 「もしかしたら、気づいてた」
 

 「今、初めて知りました」。
 

 ドラマや漫画、でもテレビの芸能人でも、オネェの人とか活躍しているし、損な事を考えていると良子さんは、そうと頷いた。
 

 「もしかして一緒に暮らすのは嫌かしら」
 

 「いえ、その、あたし出て行った方がいいんじゃないかと」
 

 「何を言ってるの」
 

 突然、良子さんは叫んだ。
 

 「あたしは子供を産む事はできないの、だから一緒に暮らしてほしいの」
 

 「でも、良子さん」
 

 これから先の事を考えたらと、もし恋人や結婚したい相手ができたら、友人の子供と一緒に暮らしているなんて、正直、具合が悪いのではないかと思う。
 

 今時、性転換して女になった元、男だって、あまり関係ないような気がする、というのも良子さんは普通に女性っぽく見えるのだ。
 
 実は最初から良子さんには脅かされてばかりだ、退院して暮らし始めたとき、出掛けるときなど、行ってらっしゃいと抱きつかれたり、頬に軽くキスするのだ、びっくりした。
 

まるで、海外のホームドラマじゃないかと思ったね、すると、海外で暮らしていたからと言われてしまった、そうか、よく見ると顔つきもなんとなく日本人っぽくないかもしれないと思った、ハーフというより、クォーターかもしれないと思って聞くと笑われた。
 

 嫌なら、もうしないからと言われたけど。
 

 「びっくりしただけで、だっ、大丈夫ですよ」
 

 平気なふりをしながらも内心は心臓がバクバクだった、でも、数日たつと慣れるものだ、今では自分から抱きついて、ハグできたりするまでになった。
 

 そうか、良子さんが元♂だと知ると、心臓がドキドキしたのも生物のなんとやらだ。
 

 ちなみに、ピーッ、竿、睾丸とか、全部とってるのか気になったけど、それは聞けなかった。

  
 

 「木桜さんって、あなたの知ってる人」
 
 その名前を聞いたのは久しぶりだ、娘がいるって知ってたと聞かれて、思わず、はあっと聞き返してしまった。
 
 「知らなかったよ、結婚していたんだな、元気なのか、彼女」
 
 「それがね、難産だったらしくて」

  言葉が出なかった、亡くなっているなんて知らなかった。

  「ねえっ、その子だけど」

 元妻の言葉に、あり得ないと自分は電話を切ることしかできなかった。
  
 病気、それも長く煩っていた、自分と知り合ったときは、そんな様子、少しも感じられなかったし、見えなかった、隠していたのだろうか。
 
 「しかし、なんだって君が、そんなことを」

 元妻が電話してきたことが気になる、すると、自分のところに探偵が来たというのだ。

 「私立探偵だというんだけど、なんだか、変というか、女の勘って言うのかしら、本当に探偵なのって」

 

 
 
 久しぶりに昔の知り合いと飲む酒だった、そこで彼女の話が出た。

 「木桜さんだったかな、彼女の事好きだったろ、おまえ」
 
 「いや、振られたんだが」
 
 「何言ってんだよ、やることはしてたんだろ」
 
  
 体の関係はあった、だが、一度、二度、寝て、しばらくすると向こうから避けるようになった、喧嘩をしたわけではない、彼女に好きな相手が、いや、用があるから会えないと言って、いつの間にか旅行に出かけて、それきりになったのだ。
 
 娘、彼女に似ているのだろうか、会ってみたい、ただ顔を見るだけでいいのだ。

 だから調べたのだ、人を雇って。
 

 


メインタイトル 愛ではないから複雑な家族構成です、恋愛には縁遠い、美夜さんの二度目の人生が始まります

2021-01-09 09:28:23 | オリジナル小説

 子供の頃から両親はいない、祖母との二人暮らしだが、別におかしいとも不思議とも思わなかった。
 大学に行こうなんて気持ちはなくて、どこでもいいから就職しようと思って探していたが、その会社が潰れてしまった。
 
 昨今は不況で潰れる会社なんて珍しくもない、仕方がないよ、バイトを探すから安心してと祖母に言うと、自分のしたいことを探しなさいという。
 
 生活には困っていないから、好きな今年なさいって祖母は変わっているのだろうかと思ってしまった。
 変わっているとは思うのだ、クリスマスの時にはホールケーキを買ってくるし、二人なのに食べきれないよと思ったが、毎年だ。
 
 駅でバイト募集の雑誌でも探そうか、いや、本屋にもあったはずと思い、大型書店に行こうかなと思って、その日は昼から外出だ。
 
 
 「あんた、見たよ、テレビに出てただろ」
 
 男の甲高い声が聞こえてきた、若い女の子に絡んでいるのだろうか、言い合いしているみたいだが、周りは皆、遠巻きにして見ている。
 
 なんだか見ていられない、よし、ここは、はったり、でまかせだ、勇気を出せと自分に言い聞かせ、大きな声で叫んだ。
 
 「お巡りさん、あそこですー」
 
 ところが、あたしの声に気づいたのか、振り返った男が突進してきた。
 
 えっ、これは予想外だ、慌てて逃げるか立ち去るかしてくれたらなんて思っていたのに、しかも、突進してくるのだ、逃げなきゃと思っていたが、衝撃を感じてブラックアウトとなった。
 
 
 目が覚めると天井が白い、ふと視線を動かすと壁も白、そばには白衣の女性、思わずここは死後の世界かと思ってしまったが、声をかけられて看護婦さんだと気づいた。
 
 ああ、病院だとわかって、ほっとした。

 

 「あの、祖母は」
 
 着いて聞いてくださいねと、医者はドラマのような台詞を口にした。
 
 お亡くなりになりました、って。
 
 自分は男性に殴られて意識を失い、ずっと眠り続けていたのだという。
 
 しかも、一日とか、数日ではない、正直言葉が出ない、絶句した、だが、それだけではない、見てくださいと言われて手渡されたのは手鏡だ。
 
 子供の頃からショートヘアだったが、肩口まで伸びていた、しかも、白、若白髪、自分だとは信じられなかった、それに顔、自分はこんな顔だったろうか。
 
 驚きは、それだけではない、祖母だと思っていた人は全くの赤の他人らしい。
 
 だったら自分の入院費とかどうなっていたんだろうと思った、祖母は、いつも家にいたのだ。
 
 事故はショックだ、ずっと眠っていたというのもダブルショック。
 これから、どうすればいいんだろうと思っていたら、保護者に連絡を取りますと言われて驚いた。
 
 まさに、トリプルショックだ。
 
 その日の夕方、女の人が訪ねてきた、綺麗な人だ、これから一緒に暮らしましょうと言われて、はあっとなった。
 
 沢木 良子(さわき りょうこ)彼女に連れられてマンションに着いた、今日から、ここが、あなたの家、そして十年近く眠り続けていたんだから世
間の事知らないだろうと良子さんは退院したとたん、あたしを外に引っ張り出した。
 
 流行しているものを教えてくれたり、オシャレなブティック、いろいろな場所に連れて行ってくれた。
 
 自分には家族、娘がいないから母親だと思ってほしいと言われて驚いた。
 
 近所の本屋は大型書店なので一度足を運ぶと半日なんてあっという間に過ぎてしまう、漫画も好きだけど推理小説やホラー、ゴシックも好きだ。
 
 バイトでもした方がいいかなあなんて思いながら散歩に出かけた、以前はすれ違う人の視線が気になっていたが、もう慣れた。
 
 というか、気にしても仕方がないと思っている、それに歳をとったら、いずれ真っ白になるんだからと自分に言い聞かせた。
 
 漫画や映画の主人公で敵対する相手が白髪ってパターンがあるけど自分には、関係ないなあ、そう思っていると、声をかけられた。
 

 振り返ると中年の男性が立っていた、道を教えて欲しいと言う。
 
 最近、引っ越してきたばかりなんですと言って断ったのだが、何故か、男性は黙ったまま、変な人とかじゃないのかと少し不安になってしまった。
 
 誘拐とか大丈夫だろうけど、最近は人通りのある街中でもナイフで刺されたりとか、物騒な事件があるって、そんな事を思っていると、いきなり手をがしっと捕まれた。
 
 「ハル、君」
 
 驚いて手を振り払うようにして、走り出したのだが、ほんの数歩、走り出した瞬間、つまずいて見事に転んでしまった。
  
 ううっ、情けないと思いつつ、大丈夫かいと声をかけられてしまった。
  
 驚かせて悪かったねと、男性頭を下げて謝ってきた、腰が低いというか、その様子に少しだけだが、自分の方が悪かったのではと思ってしまうくらいだ。
 
 「知ってる人に似ていたから、びっくりしてね、腕を掴んだりして、悪かった」
 
 いいえと答えながら、紙袋から飛び出した本を拾って立ち去ったのだが、家に帰って気づいた、一番読みたかった新刊がなかったのだ。

 


飼っていた猫ではなかったのか、と男は思う、そして女(猫)の姿子は手に入れた 

2021-01-02 15:48:36 | オリジナル小説

 女とは一回、寝ただけだ、しかも初対面なので二度と逢う事もないだろう。

 久しぶりの飲んで気が大きくなって、開放的な気分になっていたいなのかもしれない、軽い気持ちもあったのだろうと思っていたのだ、そのときは。
 だから、逃げ道のような言葉を自分には付き合っている女性がいると言った、もし、それで駄目ならいいと思っていた。
 

 だが、相手は、それでも構わないと言った、たまにあるでしょ、やりたいと思う時って、挑発的な言葉に正直、そそられたと言ってもいいだろう、だから、俺は軽い気持ちで頷いて相手を抱いたのだ。
 

 悪くはなかったと思う、それが正直な気持ちだった。 


 「飲みに行かないか」
 「うーん、やめとくわ」

 久しぶりの誘いを断るとは、まったく、恋人の自覚があるのか、少し不機嫌になった俺に、彼女は姿子(しなこ)がいるから、ごめんねと謝ってきた。

 友達かと思ったら猫だという、だが、アパートはペット禁止ではなかったか、それを聞くと大家の許可は取っているから大丈夫だと、友人が旅行へ行く間、預かっているらしい。

 正直、生き物は、いや、猫はあまり好きではない、以前、付き合っていた相手が飼っていたのだ、決して向こうから近づくことはなかった、多分、自分の事が好きではないのだとわかった。
 

 日がたてば少しは慣れてくれるだろうと思ったが、変わらなかった。


 猫は嫌いなのと聞かれて、ただ苦手なだけだと答えた、もしかしたら冷たい人だと言われるのではないかと思ったが、少し困った顔をしただけだ、だが、暫く家には来ない方がいいわねと言われて、それが、あまりにもあっさりとした口調だったので、すぐには返事ができなかった。

 どのくらい猫を預かるのかと聞くと、一ヶ月という返事が帰ってきた。

 「ホテルには預けられないからね」

 その言葉に俺は返事ができなかった。

 それから暫くして彼女の部屋を訪ねた、長かったと思いながら、だが、部屋をに入って驚いた、あの夜、出会った行きずりの女がいたのだ。

 どういうことだと混乱する、すると背後から恋人がどうしたのと不思議そうに声をかける。
 

 久しぶりに訪れた彼女の部屋、だが、何故、この女がいるのかわからなかった。


 友達なのと恋人から紹介されて頷くが、正直どんな顔をすればいいのかわからない、だが、いきずりの浮気がばれてはまずいと、俺はしらを切り通すことにした。

 部屋に入ると恋人は座椅子を勧める、かなり大きなサイズだ、初めて見るなと思った、新しく買ったのだろうか、友人だと紹介された女は笑いながら座椅子に座る、半分、横になるような格好で当然のように、ここは自分の居場所なのだといわんばかりに。
 

 その姿が猫のようだと思ってしまった。

 いくら友人の家だといってもくつろぎすぎではないか、恋人が来ているというのに。

 ホットミルクを手渡された女はマグカップを両手で持ち、ゆっくりと飲み始めた、自分にも何かと俺は声をかけるが、珈琲、切らしてるのと言われてしまった。

 何故だ、自分の恋人が台所で食事を作っている、だが、それは自分の為ではないということに俺は内心、むっとした。

 女は雑炊を食べながら、俺にちらりと視線を向ける、無言のままで、その様子、目つきは、まるで。


 「あー、美味しかった、なんだか睡くなってきた」

 「入らないの、お風呂」

 「んーっ、面倒、朝風呂は駄目かな」


 なんだ、この女、泊まっていくつもりなのか、内心、むっとして俺は立ち上がった。

 
 
 「友達なのか、あの女」

 「どうしたの、怒っているみたいだけど、何だか、変よ、姿子、あなたに何かした、妊婦なんだから優しくし
てあげてよ」

 俺は驚いた、思わず相手の男、恋人、旦那さんはと聞くと恋は首を振った、聞くなといわんばかりの態度だ、まさか、いいや、そんな筈はない、何を考えているのか、俺は自噴が怖くなってしまった。

 あの時、避妊しただろうか、不安が押し寄せた。

 

 「なあ、妊娠してるって、父親は俺じゃないよな」

 後日、俺はなんとか恋人のいない時を狙って尋ねた、すると、あり得ないわよという返事がかえってきた。

 「できるわけないじゃない、あなた不能でしょう」

 俺は無言、何も言なかった。

 


 「ねえ、あたしの事、まだわからないの、思い出してみたら」

 女は笑いながら、姿子と言った。

 それは女じゃない、猫だ、そうだ、名前は、どうして忘れていたんだ、俺は。
 

 「おまえ、姿子(猫なのか)」

 別れるときまで懐つかなかった猫、当然だ、あの猫は。

 女は首を振った、いいえと、そして嬉しそうに笑った。

 

 「死んだのよ、彼女、自殺、ねえっ、忘れたの」

 「何が言いたい、まさか、俺が」

 言葉が出てこない、だが、自分を見る女の目は、まるで。


 「だから、あたしがいるのよ、そうだ、いいこと教えてあげましょうか」

 胸の中が、ざわざわとした、怖いと思った、何を言おうとしているのか、それに気づいて怖くなった。

 逃げたい、ここからと、だが、後がなかった。


 それは小さな記事だった、会社のビルの屋上から飛び降りた男の自殺など、この現代では珍しくない。


 「姿子、御飯、食べる」

 「勿論、後で髪の毛とマッサージ、お願いね」

 「猫みたいね」
 
その言葉に女は笑った、だって猫だものと。

 だが、あの男は理解しなかった、頭からおかしいと決めつけていた、なんて器量の狭い人間だろう、それに比べて彼女はすべてを受け入れてくれる。

 「子供の名前は決めたの」

 「二人で決めよう、だって、二人の子供なんだから」

 なんて素敵な響きだろうと姿子は思った、ご主人様と同じ事を言う、そう、同じ声で、自分は彼女に拾われた、行く当てもなくて、そんな自分は猫みたいと言ったのだ、彼女は。

 あの男はそれを受けて入れられなかった、いや、それだけではない、気づかなかったのだろうか、現在の恋人との関係に、だとしたら滑稽だ。

 いいや、もう考えるのはよそう、過ぎたことだ、終わった事だ。


 もう、何も考えまい、お腹の中の子供の事だけ考えよう。

 

 


出戻り貴族女と結婚した男、愛人を作る夫と恋に一途な女の人生とは

2021-01-01 11:57:45 | オリジナル小説

 恋をしてお互いを好きになった結婚するという恋愛小説のようなことは無理だと思っていた。
 
 十代の頃、見た目のいい若い男爵や子爵と恋愛関係になったが、自分が浮気相手の一人だと知ったとき、怒りよりも熱が冷めてしまい、現実というものを改めて知った。

 心配した母の友人が貴族の男性を紹介してくれた、年上の男性は見た目も決してハンサムという訳ではなかった。

 若い妻をもらったことが嬉しかったのか、夫となった男性は欲しいもの、望みは何でも叶えると言ったが、その言葉を心から信じる事はできず、なんて可愛のない女なんだろうと思ってしまった。

 愛は永遠ではない、夫となった男性もいつかは浮気をするかもしれない、そう思っていた。

 ところが、夫が突然、病に倒れた、先が長くないと医者から知らされ、これから先の生活を考えると不安になった、母や弟の生活は夫のおかげで成り立っていたのだ。
 
 自分が亡くなっても数年の間は母と弟、あなたの生活は大丈夫だと夫から言われて泣きそうになった、ずっと一緒にいたかったんだけどね、すまないと謝られて言葉が出なかった。
 
「私は良い妻でしたか」

 燃えるような情熱は感じられず、純粋な愛情で結ばれたのかと聞かれたら言葉に詰まる、だが、愛していなかった訳ではないのだと思った。
 
 実家に戻った私は夫の残してくれたものを糧にして商会を立ち上げることを決心した、夫は生粋の貴族ではなかった、町人として、いや、ただの商人ならもっと生きられたのではないかと思った。
 
 夫が生きている間、仕事を手伝ったことがあった、君には才能があるよ、そう言われたときはお世辞だと思っていた。
  
 一人では何もできない、だから才能、実力を持った人間を集めて。
 
 それから数年、フランシーヌ、彼女は恋をした。
 
 だが、自分から好きだとは、いや、いえなかった。
 
 そんな時、母から病気の事を聞かされた、自分の命は、あと数年だと、だけど娘の人生を、恋を、応援していると。
 
 
 貴族同士の結婚というのは愛情などは関係ない、愛妾や恋人を作るのも当たり前だ、豪華絢爛というのが普通だが、自分の式では、フランは、それを断った。
 
 そして、書類上の形式なものにしたいと相手に申し出た。
 
自分は商会の仕事に専念したいので愛人や妾を持ってくださって構いません、ただ、子供だけは作らないでくださいという事を契約書として婚前前に提出した。

 もしかしたら、裏があるのかもと相手は勘ぐるかもしれないと思ったが、何故か、相手は、それをすんなりと承諾した。
 
 
 結婚、一年目にして準備が整うと女性用の化粧品の開発の為に専門職人を集めてフランは商会を立ち上げた。
 
このとき、皆に五年という期間を設けた、たくさんの種類でなくていい、特許が取れて、皆が独り立ちできるように儲けた金は職人たちで平等にわけること。

 商会は、その時点で解散すると離すと職人たちは驚いた。
 
 出戻りの貴族の女が婿を探しているという話に飛びついたジャイルズは結婚には二度失敗した男だ、今年、四十を迎えたが、精悍な顔と無駄のない体つき、貴族なの手背金もある、女たちの受けはいい、だが、それだけだ、付き合い始めてしばらくすると女たちの方から離れていくのだ。

 爵位はあっても、金はそこそこだと、女もそれなりに値踏みをしてくる。


 ある日、貴族の出戻りの女が婿を探しているという話を聞いた、詳しく聞くと、式は書類上の形式的なもので構わない、愛人や妾も、男からしたら都合が良い話だが、相手の女は男よりも商売が好きらしい。

 要するにモテない女が契約結婚を持ちかけてきたのだ。
 それなら、こちらも割り切って付き合う事ができるとジャイルズは同意した。
 
 若くはない、三十路になったばかりのフランシーヌと会ったときの最初の印象は地味な女性という印象だった、愛人を作れという事は子供は好きではないし欲しくはないのだろう、もとよりタイプではないし、手を出すつもりはなかった。
 
 結婚して数ヶ月、ジャイルズは行きずりで街の娘に手を出した、貴族の男に手を出されたという事で娘は貴族の屋敷を尋ね、逢いに来た、それだけではない、妊娠したというのだ。

 「自分は子供を作るつもりはない」

 結婚当初の契約を破る訳にはいかない、だが、娘は産みたいと頑固に首を振った。

 「何故です、あなたの血を分けた子供なんです、堕ろせ、殺せとおっしゃるんですか」

 「聞き分けのないことを」

 「だったら奥様に話してください、女なら子を産みたいという気持ちをわかってくれます」

 自分の妻は商売と金儲けにしか興味がないと説明しても娘は頑固だった、仕方ない、ジャイルズは久しぶりに妻のいる別宅を訪ねた。
 
 「妊娠ですか」

 久しぶりに会う妻の顔は疲れているような顔つきだが、自分が気にしても仕方ないとジャイルズは本題を切り出した。

 「産みたい、奥様は女だから自分の気持ちがわかる筈だと頑固で、なかなか折れない」
 
 妻の視線から逃げるようにわずかに顔をそらす、仕方ないですねと彼女は呟いた。
 
 「避妊はしなかったんですか」
 
 自分を怒る訳でもない、もしかして呆れているのかもしれないとジャイルズは思った。
 
「できたものは仕方ないです、一緒に暮らすとしても生活費はあなたが出してください、商会はこれから大変なんですから」

 「大変って、何かあったのか」

 あなたには関係ないことですと言われてジャイルズは黙り込んだ。
 
 娘は貴族の館に住むということに有頂天になった、もしかして男は子供ができた事で自分を正式に妻にしてくれるかもしれないという夢さえ抱いたとしても無理はないだろう、だが、その日。
 
 「ルディアさんね」

 声をかけられて娘は驚いた。

 「奥様ですか」

 女はディーナと名乗った。

 「あなたが侯爵の愛人だというなら、私はフラン様の、というところかしら」

 まさかと思いながらも娘は相手を見た着ているものから身につけているアクセサリーまで高価なものだと感じられる、正直、自分とはあまりにも違いすぎる、そんな視線を感じたのかもしれない、自分の首元を飾る宝石を見た。

 「黒真珠を見たことがないようね」

 「し、真珠ですか、黒なんてあるんですか」

 「ええ、王族でさえ、所持している者は片手の数もいないでしょうね」

 「そ、そんな、高価なもの」

 「私は商会の看板なの」

  ルディアは自分が持っている今まで男から送られた宝石やアクセサリーを思い浮かべた。

 「あなたの、それ、侯爵からのプレゼントでしょう」

 女の言葉に頷いたルディアは、人前に出つけるのはやめなさいと言われて、えっとなった。

 「偽物よ」
 
 
 自分の送った宝石が偽物だと信じられない、でまかせだ、愛人の言葉に馬鹿馬鹿しい、そんなのはやっかみだと彼女を宥めようとしたジャイルズだが、その女性は鑑定士、本職だと言われたんですと言われて、まさかと思った。
 
 
 
 男は目の前にテーブルに置かれたピンク色のダイヤを見ると目を細めた。

 「幾ら、出されました」

 白金貨、二百枚だというと少し驚いたように男はジャイルズを見た。

 「貴族の女性なら喜ばないでしょうな、カットもですが、端にわずかな濁りがある、光の加減で目立たないようですが、こうすると」

 言われてダイヤを見たが、正直、指摘されたところを見てもよくわからない、目を凝らし濁りや陰りと言われても、気のせいではと思ってしまう。

 はっきりと言葉にはしない、だが、この鑑定士は内心、呆れているのかもしれないとジャイルズは思った。

 偽物だったということを伝えるとルディアは、そうですかと力なく頷いた、自分がプレゼントしたときは、あんなにも喜んでいたのにと思いながら、ジャイルズは自分の中のわずかな不満を押し殺すように飲み込んだ。 

 
 
 フランシーヌ様のお母様が亡くなりました。

 知らせを聞いたジャイルズは驚かなかった、具合の悪いことは以前から聞いていたからだ。
 
 離縁したい、別れましょう、いつかはと思っていた、だが、今なのかとジャイルズは驚いた。

 「まだ、約束の期限には」

 「商会の人間、勿論、あなたの恋人や友人も呼んで、お別れ会よ」

 離婚に向けて前向きになっている彼女の言葉に夫であるジャイルズは迷った。

 「別れてしまって、生活は大丈夫なのか」

 「私より、あなたはどうなの、最近、新しい恋人を作ったんでしょう」

 「知っていたのか」

 自分の事など気にかけていないと思っていたのにと驚いた。
 
 
 
 ジャイルズは悩んだ、妻は自分と別れることに前向きだ、だが、自分はどうだ。

 これから先、贅沢をしなければ生きていける、だが、ここ数年、愛人にねだられて仕方なく、金の工面
を頼んでいたのは妻だ、金貸しに借りるよりは楽だったということもある、対面やプライドを気にすることもなく楽だったせいもある。

 だが、それだけではない、メイドや庭師達も歳をとり、実家に帰る者もいる、今までよく働いてくれたと彼らに老後の足しにして欲しいと十分過ぎる程の金を出したのは妻だ。

 侯爵という身分と立場、主であるというのに気が回らなかった、いや、感じてはいたのだ、館の修繕も彼女は自分から金を出した、惜しみなくだ。

 今、別れてしまったら駄目だと思った、パーティーの夜、自分は改めて妻に結婚の継続を望んでいることを伝えよう、別れたくないというんだとジャイルズは考えた。
 
 
 「皆さん、今日はようこそおいでくださりました、楽しんでください、最後の夜です」

 広間に集まった客人達は装飾に、料理に目を奪われ、簡単のため息を漏らした。
 
 「商会を閉めるとは残念です」

 「思い切った事をする、女は怖いな」

 「だからこそ、ここまで成功したといえるのではなくて」

 「職人達はたいしたものだぞ、引き抜きたいと思ったぐらいだ」

 「店を構えたものもいるとか」
 
 男女の会話にジャイルズは自分の妻が、周りからどう見られているのかということを改めて知った。
 
 「それにしても、フランシーヌ、思い切った事をするな、引退とは」

 「これからゆっくり過ごしたいと」

 「そんな歳でもあるまいし、いや、こればかりは」

 「でも、羨ましいことね」
 
 妻の姿を探していたジャイルズは思わず足を止めた、数人の男女に囲まれている一人の女性に目が奪われたのだ。
 
 
 まさか、あの女性が、すらりとした長身、薄い茶色の髪を綺麗にまとめて結い上げている美女が自分の妻、まさか、信じられない。

 「ほら、フラン、待ち人がいらしたわ」

 女性がこちらを見た、自分のことを言っているのか、ジャイルズは踏み出そうとした、ところが。

 自分のすぐそばをフランシーヌは通り過ぎていく、気づいてもいないようだ、広間に入ってきた一人の男性に真っ直ぐに向かっていく。
 
 
 
 「皆に、お友達に紹介させてください、お父様」
 
 亡くなった母親の再婚相手かと、ジャイルズは気づいた、一度会った事がある、結婚の話が決まったときにだ、中年の小柄な、どこにでもいるような男性だが、客人達の視線が男に集まり、皆が我先にと挨拶に向かう。
 
 「羨ましいですわ、シェルダンの南方に行かれるとか、あそこは、良いところですわ」

 一人の婦人が声をかける。

 「あら、ご存じないの、フランは、その為に色々と準備していたそうですわ」

 「ジェムズトロールの館、あれを手に入れるとはな、驚きだよ」

 大勢の男女に取り囲まれて義理の娘の話を聞かされた男性は驚き顔だ。
 
  「お父様が大好きな彫金ができるように専用の部屋、道具、材料を用意したんです、暖かい土地でゆっくり、のんびり過ごしてください」

 娘の言葉に父親は驚いた。

 「フラン、実は君のお母さんと私は正式には」

 結婚していないんだ、だから、自分は一人で暮らすつもりだ、ここに来るまでに考えていた言葉、だが、何故か、飲み込んでしまった、嬉しそうな娘の顔を見て言葉が出てこなかった。
 
 
 亡くなった彼女の母親からの言葉を今更のように思い出す。
 
 誕生日には花束とプレゼント、手紙が届く、母親と自分の事を心配して気遣った気遣った内容だ、そして生活は大丈夫かと、何かあっては大変と金を送ってくることもあったが、それに手をつける事はできなかった。
 
 (義理の父親となる男を好きになったなど、あの子は自分から言い出すことはないでしょう、だから)
 
 結婚などしなくても一緒にいてあげてほしい。
 
 「お父様、彫金を始めたら、私にも何か作ってください」
 
 勿論だと男は頷いた、すると彼女は約束ですよ、皆さんが聞いていますからねと笑った、本当に嬉しそうに。
 
 「もう、フラン、あんな顔をして」
 
 「見ているこちらが恥ずかしいぞ」

 「仕方ないわよ」
 
 離れた場所から見ていたジャイルズは近寄る事ができなかった、自分は、まだ夫だというのに、妻である彼女と婚姻を継続させようと思っていた、なのに、それを躊躇している、今しかないというのに。
 
 
 「あなた、皆様に、ご挨拶は」

 振り返ると最初の愛人であるルディアが立っていた。

 「私ね、家に帰ろうと思います」

 突然の事にジャイルズは驚いたが、女は公爵家はなくなるんですからと言葉を続けた。

 「出て行くのか」

 「私がいなくても大丈夫でしょう」

 自分以外にも女がいることを彼女は知っている。

 「実家はなくなっただろう、行く当てがあるのか」

 「シェルダンに行くの」

 何故、その場所が出てくる、ジャイルズは驚いた。

 「私ね、商売を始めるの、奥方が色々と教えてくれたの」

 いつの間にと思わずにはいらなかった、まるで、自分だけが取り残されていくような感覚を覚えた。
 
 広間にいる人間達は皆、楽しそうに笑っているというのに、自分だけがそうではない。

 取り残されているような気持ちを味わっていると、あなたと声がした、振り返ると半年ほど前に作った新しい愛人が立っていた、しかし、一人ではない。

 隣には男がいる、女が意味ありげな視線で自分を見ながら、口元に笑いを浮かべてきた。

 この女も自分から別れたいと言うのだろうか。

 自分の立っている場所が、こんなにも不安定なものだったとは、今更のようにジャイルズは未来への不安を覚えた。