読む、書くの雑多な日々、気まぐれな日常

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アイドルのペット番組ということで(ユリ)カメラマンは、あの人でした

2021-02-26 20:45:16 | オリジナル小説

 ユリちゃん、うちの番組、良かったらでてくれないかなと言われて驚いたのも無理はない、最近ペットや子供の番組が増えているし、人気もあるのは知っていた、だが、自分にそんな話がくるとは思ってもみなかったのだ。
 
 「ありがとうございます、でも、母の家で飼っているんです、それに」
 
 「最近、保護犬とか多いだろう、アイドルや芸能人って純血、血糖に拘る人って多いけど、勿論そうじゃない人もいるけど、野良犬を引き取ったって聞
いたからね」
 
 ユリは迷った、つい最近、吹き替えの仕事を始めたせいか、色々な人から声をかけられるようになったのだ、最近は洋画の吹き替えを、それこそ、ほんの一言の役だが、引き受けた。。
 
 「初めてだというけど、経験を積んだら、もっと上手になるんじゃないかと思うんだ」
 
 自分の父親ぐらいの年齢の声優に言われたのがきっかけだった、あの人がそういうならと声をかけてくれた人がいてユリは驚いた、声の仕事は以前から憧れていた、少し前から歌ってみないかと声をかけられて、レッスンを始めた事も関係しているのだろうか。
 でもペット動物関係の番組はと悩んでいる自分にだったら自宅で犬と一緒に写真を撮るだけでもと言われてしまった。
 
 最初は番組で取り上げる予定だったが、自分ではなく母が飼っているのだからとユリは断った、だったら、雑誌で紹介するだけでも自宅で写真を撮るという形ならと半ばごり押しのように懇願されて、最後にはユリも同意した。
  これからの仕事の幅も広がるし、写真を数枚、撮るだけならいいんじゃないとマネージャーに言われてユリは母親に連絡をした、娘の今後の仕事の為にもと母親は了承してくれた、母が♂だと言うことを事前に説明して撮影の日が近づいた。
  
 
 「井上昌己(いのうえまさき)って、確か、LIMA産の写真集を手がけた人でしょ」
  
  撮影の前日、マネージャーから話を聞いて驚いた。
  
  「そうなのよ、最近になって本格的にカメラマンの仕事を始めるみたいで、今、色々な分野でこだわりなく仕事をやってるみたいなの」
  
  直接の面識、会った事はない、だが、二週間ほど前に発売された写真集は発売前から噂になっていたくらいだ、アイドルのLIMAを知らないという人も井上昌己(いのうえまさき)の名前で購入したという人もいるらしい。
  そんな人が、何故と思ってしまったのも無理はない。
  
  
  当日、朝一でマネージャーとカメラマンの井上、アシスタントの男性二人が自宅へやってきた。
  
  「あ、あの大丈夫ですか」
  
  若いアイドルの自宅、ペットの犬というので可愛らしい小型犬を想像していたのかもしれない、家の中でごろりと寝転んでいる二匹の犬を見て若い青年二人は驚いた、というより、怖がっているように見える。
  
  
  「この犬、ドーベルマンじゃないか、耳と尻尾が垂れてるから、あれって思ったけど」
  「純血って事か、でも野良だって」
  「最近は多いんだよ、大型犬は飼ってみたら大変だって、保健所や山に捨てたりするのが」
  
  若い二人の会話にユリは驚いた、犬の種類など詳しくはなかったからだ、映画やドラマでドーベルマンを見たことがあった、だが、耳がピンと立っていて、尻尾も短かかった、今、自分の目の前にいる犬は耳も尻尾も長く垂れているのだ。
  
  井上はシャッターを切った、犬たちは最初は気にしていた様子だが、慣れてきたのか、気にならなくなったようだ、ユリの隣で座っている姿を何枚か撮る、動物相手なので長時間の撮影は迷惑だろう。
  
  「これで終わりにしようか」
  
  「そうですね」
  
  「家の中じゃなくて、庭で撮影とかしなくていいですか」
  
  アシスタントの言葉に、そうだなと思いユリさんと井上は声をかけた、そのとき、二匹の犬が突然、立ち上がり、部屋を飛び出した。
  
  「えっ、シン、ノブ」
  
  慌てたユリを見て母親の恭二(きょうじ)が笑った。
  
  「美夜ちゃんじゃないかしら」
  
  
  

 「すみません、これ、本屋に行こうとしたら途中でリヤカーを見つけて、この間の夕飯のお礼です、おお、勿論、君たちの分もあるぞー」
  
  わっしわっしと白い髪の女性が二匹の犬の頭を撫でる、玄関でユリの母親と話している様子に声をかけたのは井上だ。
  
  「どうして、君が」
  
  「あ、あの、誰」
  
  ああ、そうか、あの時は髪も伸び放題、髭も伸び放題だった、分からなくても無理はない、LIMAと一緒にいたカメラマンだと井上は自己紹介した。
  


 「友人の娘さんで二匹の散歩を頼んでいるんです、アルバイトですね」
 
 恭二の言葉に井上は、そうですかと頷いた。
 
 「さっきの女性も一緒に写真が撮れたらよかったですね、井上さん」
 
 「スタジオで撮ったら、いい写真が撮れるんじゃないですか、ユリは黒髪だから、女性二人に犬が二匹って映えると思うんですけど」
 
 アシスタントの言葉に井上はそうだなと呟いた、だが、沢木、市川が許すだろうかと思いながら、ふと視線が犬に、そしてユリに向けられた。

 

 

 「カメラマン、井上って」
  
 「そうなのよ、娘のユリと一緒に写真を撮りたいっていうんだけど、いや、勿論、断ったわよ、ユリはともかく、あの子はアイドルでも芸能人でもない
んだし」
  
  えらい、よく断ったと電話の向こうから聞こえてくる声に恭二は内心、ほっとした、良子は男の時からそうだったが、怒らせると怖いのだ。
  
  「ただね、ユリがね、彼女に見学に来て欲しいって」
  
  「何、それ」
  
  「別件よ、驚かせたいって、吹き替えの現場をね」
  
  「井上に関係ないならいいけど」
  
  「過保護すぎない」
  
  「何とでいってくれて構わないわ、娘は溺愛がモットーよ」
  
  まあ、娘には甘いのは自分もだけど、そんな事を思いながら恭二はくすりと笑った。
  


後悔は、いつも遅すぎる、浮気した男の代償は、妻の笑顔だった

2021-02-15 13:00:00 | オリジナル小説

 「ねえっ、あなた ○○さんの旦那さん、最近、見かけたことある」

 妻から聞かれたのは夕食後のことだ、挨拶を交わす程度で親しいという訳ではない、いきなりだったので驚いた。

 「どうしたんだ、いや、最近見かけないな、そういえば」

 「浮気してるって、近所の人が言ってたのよ」

 「まさか、嘘だろ」

 浮気という言葉に内心ぎくりとする、まさか、ばれてないよなと思ってしまう、だが、妻は、あっけらかんとした調子で、近所の人が噂してたのよと言葉を続けた。
 話題を変えようと、俺は噂だろうと少しきつめに表情を変えることなく、確証もなしに、そんな事を言うんじゃないと妻に言った。

 「うーん、でも、皆知ってるみたい」

 佐野原(さのはら)の奥さんが話してたからね、その言葉におしゃべり好きの暇な奥様ってやつはと内心、嫌な気分になってしまった。
 しかし、近所の旦那が浮気、それを薄々、感づいている人間がいて話のネタにされているというのは正直、いい気分ではない、気をつけようと思ったのは浮気をしているのがほかならぬ自分だからだ。


 翌日、俺は会社に行く途中、噂の人物に会ったからだ、驚いたのは右足にサポーターを巻いていることだ。

 「どうしたんです」

 「駅の階段で脚を滑らせてしまってね、たいしたことはないんですよ」

 骨折はしていない、筋を痛めただけだからという、でも、この人確か車を持っていたはずじゃなかったか、電車なんか使うんだと思ってしまった。


 今日、○○さんに会ったよ、脚を怪我したみたいで、大変だなあというと妻は、ふーんっと素っ気ない返事を返してきた。

 「それ、自業自得ってやつじゃない」

 気になる言い方だ、しかも、妻の表情は冷たいというか、笑っているようだ。

 「嫌な態度だな」

 「だって、浮気だよ、駅の階段で脚を滑らしたって言ってるんでしょ、皆、分かっているわよ、嘘だって」

 俺は内心、むっとして、妻を睨みつけた、すると突き落とされたのよ、という言葉が返ってきた。
 
 俺の顔を見ながら奥さんを蔑ろにするからバチが当たったのよ、まるで自分は、いや、周りは知っているのよと言いたげな口ぶりだ。

 馬鹿馬鹿しい、当てずっぽうな、それこそ井戸端会議の女達が妄想を膨らまして、そんな事を言っているんだと思った。

 ところが、その後も続いた、脚を怪我したと思ったら、その数日後、○○の夫は顔に傷を負っていたのだ、偶然、出会ったとき、俺の顔をどこか罰が悪そうに見る相手に俺はどんな言葉をかければいいのか、迷った。

 「どうしたんです」

 きまりを悪そうに俺の顔を見る男は浮気の結果ですよと、ぼつりと呟いた。

 「不満なんてありません、ただ、少しだけ、相手から声をかけられて有頂天になったというか、馬鹿ですね、離婚ですよ」

 「えっ、確か、お子さんが」

 妻が引き取ります、自分は一人ですと呟く相手に思わず女性はと尋ねてしまった、浮気相手の女性はと聞いてしまったのだが、後悔した。
 笑われましたよと言われて俺は、えっとなった。

 「妻に捨てられた男なんてと、言われました」

 笑われたんです、何故でしょうねと言われて言葉に詰まる、力なく歩いて行く男の後ろ姿を見送りながら、俺はなんても言えない気分になった。


 その日、旦那さんに会ったよ、離婚するそうだよと妻に話すと何がと聞かれた。

 ○○さん、とこの夫婦、離婚するらしい、だが、返事は、ふーんと、それだけだ、まるで関心がないといわんばかりだ。
 妻に離婚を突きつけられて浮気相手の女性からも笑われて捨てられたと言うと、それでと妻は続きを促した。

 「貴方は何が言いたいの、他人の家庭の事が、そんなに気になるの」

 気にしていたのは、おまえ、近所のおばさん連中じゃないのかと言うと笑われた。

 「良かったじゃない、怪我と離婚程度で済んで」

 何だ、その言い方は、自分の妻なのに、この時ばかりは腹が立った。

 「浮気、するからでしょ」

 (まさか、おまえ)

 自分が浮気している事に気づいているのか、だが、それを聞いてしまったら駄目だ。

 「子供もいるのに奥さんを裏切って、ねえっ、もしかして、あなた」

 「馬鹿な事をいうんじゃない」

 えっ、何、馬鹿な事って、言われてはっとした。

 それから三日ほどが過ぎた。

 

 亡くなったみたいと言われて俺は聞き返した。

 離婚された男の人よと言われて、俺は驚いた。

 


 「○○さんのご主人、駅の階段で転んで」

 「打ち所が悪かったみたいで、意識が」

 それで、どうなったんですと俺は近所の奥さんに尋ねた。

 元、奥さんも旦那さんの家族も引き取りを拒否して、そのまま。


 「ところで、貴方の奥さん、あの駅をよく、利用するのよね」


 俺はその言葉に、えっと言葉を飲み込んだ、すると知らなかったのと奥さん達が自分を見ているに気づいた。

 (本当に知らなかったの)

 「まあ、昔から知らぬは亭主ばかりなりっていうしね」

 「本当ね」

 「仲良かったみたいだし」


 誰が、誰と仲かいいって、だが、聞く事ができない。


 俺は決心した、浮気相手と別れることを、だが。


 「別れましょう」


 その日、夕食が住むと妻から離婚届を突きつけられた、俺は拒否した、嫌だと。


 「俺よりも、おまえの方が浮気していたんじゃないのか、○○の亭主と」

 「何、言ってるの」

 自分が浮気しておいて、その言い分はないわね、妻の台詞にかっとなり、思わず両手を伸ばした。

 


 「ええ、悲鳴を聞いて、驚いて主人と一緒に見に行ったんです、ただ事じゃないって」

 「奥さんの首を両手で絞め殺そうとしていたんです」
 
 「以前から変だったんですよ、あたし達のおしゃべりに割り込んできて、浮気がどうとか」

 「奥さんに注意したんです、旦那さんのこと」


 俺は男の腕を振りほどいて、車に乗ると浮気相手の元に、だが、途中で。

 

 眠っていたのか、俺は目を開けると妻がにっこりと笑いかけてくる、よかった、ほっとしながら、ここはどこだと聞こうとして声が出ないことに気づいた、いや、それだけじゃない、起き上がろうとしても手が、体が、動かないのだ。

 「事故に遭ったのよ、覚えてないの」

 車でといわれて思い出した、浮気相手のところに行こうとしたのだ、だが、体が動かない、いや、それだけではない、感覚がないのだ。


 「ねえっ、こんな時だけど離婚、いいでしょう」

 俺の体が麻痺して、だが、リハビリを続ければいずれは治るだろう、だろうって、どういうことだ。

 「浮気していた貴方の面倒なんて」

 無理よと妻は笑った、いや、俺の両親もだ、あんなに尽くしてくれる嫁を裏切ってと反対に罵られた。

 違う、浮気していたのは俺だけじゃないんだと言いたくても声が出ない、筆談をして知らせようとしたが、駄目だった。


 「元、旦那さんですか、随分と、その想像というか、あるんですよ、自分が浮気をしているのは妻もしているからだと言って、ストレスのせいもあるか
もしれませんね」

 医者の言葉に俺は絶望した、だが、声がでない。


 「浮気なんてするからよ」

 ああ、そうだ、俺が馬鹿だった、だが、後悔して声を上げて泣くこともできなかった。
  


連続投稿は難しいわ

2021-02-03 22:44:55 | オリジナル小説

小説家になろうにも登録しているけど、連載、続き物にするなら連続投稿が望ましいという意見を見て、正直難しいと思ってしまったわ。
書き上げてしまった、完成した小説を少しずつUpしていくならできるんだろうけどの、途中で絶対、誤字脱字、変換間違いとか、色々気になるだろうし、そもそも短編、長距離はモチベーションを保つのが難しいのよ。
だから今回、初の連載、昨日Upしたんだけど、なろうからは削除した。
pixiv、ハーメルン、ブログで、異世界転生、未来世界の連載を書くなら、なろうでUpしようと思ったわ。
投稿サイトで、どのジャンルが人気なのか、知るのも大事だしね。


ブリックスの朝、クィーンサイズのベッドと男の訪問(キンブリー&アイザック)

2021-02-01 21:39:08 | 二次小説

 ようやく、ブリックスに到着したのは夕方だが、日はとっぷりと暮れていた、軽い夕食をすませたマルコーにオリヴィエは、ゆっくりと休んでください
と言われたのでベッドに入ったのだが、ふと違和感を感じたのだ。
 なんだか妙に暖かい、いや、暑い、汗をかいているのか、暖房が効くまでは寒かった筈なのに。
 目を覚まし、起き上がろうとすると窮屈さに驚く、ベッドはかなりの大きさで余裕がある筈だ、なのにと思ってふと首を動かすと隣で誰か寝ている、し
かも甘い体臭、いや、香水の匂いがする、鼻にかかるような甘い声にマルコーは驚いた。
 
 「起きたの、ドクター」
 
 何故、隣で彼女が寝ているのかとマルコーは驚いた、するとラストはちょいちょいとマルコーの反対側を指さす、首をわずかに向けると、もう一人、彼
女だ、いつの間に自分のベッドで女二人が寝ているのか。
 
 
 「どういうことだ、いつの間に」
 
 「だって、寒いんですもの」
 
 まるで子供のような台詞だ、何か言おうとしたが、相手の顔を見て、いつもとは違う事に気づいた。
 
 「寒い、のかね」 
 
 かなりとラストは頷くと、冷え性の女二人がベッドに入っても体は全然温かくならない、だから、マルコーの部屋に来たのだという。
  
 「あたしもだけど、彼女もひどかったわよ、ここに来るまでに膝をカクカクさせながら、あー、でも、この部屋、暖房もついているし、ベッドもフカフ
カだわ」
 
 「暖房は、ついているだろう」
 
 「暖かくならないのよ、もしかして、体温が低いせいかしら、女は」
 
 時計を見ると五時、まだ、外は暗い、仕方ないとマルコーはベッドから起き上がると部屋の隅の簡易コンロに向かった。
  
 
 「これを飲んで体を温めなさい」
  
 受け取ったカップからは甘い香りがする、覗き込んでラストは不思議そうな顔をした、珈琲でも紅茶でもない、ココアだ、そして一口飲んで不思議そう
な顔をすると、チョコレートキュールを少し入れているとマルコーが呟いた。
  
 「あっ、なんだかぽかぽかしてきた感じ」
 
 
 ラストはマルコーをじいっと見つめた。
 
 「ところで、起こしましょうか」
 
 「好きなだけ寝かせておいた方がいい、ここに来るまでも大変だったからね、ゆっくりした方がいい」
 
 
 
 
 「先生は、まだ、お休みでは」
 
 アームストロングの長男、アレックスの遠慮がちな言葉にスカーは大丈夫だ、歳だし朝は早いんだと部屋の前まで来るとノックもせずにドアを開けて部
屋に入った、すると、おはようと女の声が返ってきた、思わず視線が釘付けになったのはベッドの上にマルコーとラストが座ったまま、しかも朝食を食べ
ているからだ。
 
 「ミルクティーのお代わり、あっ、スクランブルエッグは固めにしてね」

 ラストの言葉に、わかってるわよと返事をしたのは美夜だ、部屋の隅のコンロで料理をしている、スカーとアレックスは驚いたのか、言葉が出ない、そ
してマルコーは入ってきた二人の男を見ると、どこか気まずそうな視線を向けた。

 
 「うーん、温サラダ、ドレッシングが美味しいわ」

 満足そうなラストに、ふっと得意そうに美夜が笑った。

 「それは先生のレシピよ」

 返事をしながら、この時、初めてスカーとアレックスの存在に気づいたかのように美夜は視線を向けた。


 どういう事だと問いかけるようなスカーの眼差しから、マルコーは思わず視線をそらしたのは無理もない、すると、それに気づいたラストがニヤニヤと
笑いながら視線を返した。

 

 また、雪崩、いや、地震か、オリヴィエはうんざりした顔で窓の外を見た、ここ数日で何度目だ、今まで、なかったのだ、これが人間相手なら別だ、敵
か味方か、判断できるからだ。
 
 「少尉、大変です、昨夜の雪崩で、こちらに来るはずの人間が」
 
 部下の言葉にすぐに救援に向かうと返事をした。
 
 
 

 「参りましたね、運が良かったのか、悪かったのか、どちらだと思います、あなた」
 
 「そんな事を聞くな、大体、何故、おまえとブリックスへ」
 
 運転は自分にやらせてキンブリー自身は後部座席でずっと眠っていたのだ、頭脳労働者にとって睡眠は大事なんですよと、もっともらしいことをいっ
て、そして現在、自分達は雪崩、地震、いきなり地面が揺れて車ごと地面の裂け目に落ちてしまったのだ。
 事前にブリックスに自分達が行くことは知らせてあるので助けを待っていてもいいのだが、いつ、きてくれるか分からない助けを待つというのも正直、
辛い、周りを調べていたアイザックは、突然、キンブリーに目を向けた、静かにしろと視線でだ。
 
 音がするのだ、少しずつ近くなってくる、これが助けなら何かしら向こうから合図なり声かけをするだろう、だが、それがないということは、もしかし
たら敵かもしれないと二人の男は、いつでも錬金術を、相手に対して攻撃できるように身構えた。
  
 
 女は願った、どうしようもない時は人間は神頼みにでも縋るものだが、この場合はどんな人でも、その願いを叶えることはできないだろう、何故なら、
その願いは死んだ娘に会いたいというものだからだ。
 死体を確認してくださいと言われても、判別できない程の損傷だった、確認してください、娘さんですかと聞かれても答えられない、肉の塊を娘だと言
われても信じたくはなかった。
 
 一目だけでもいいんです、姿を見るだけ、お願いします。
 
 その夜、地震が起きた、それは本当にかすかな揺れだったが、遠い、こことは離れた場所では大きな揺れとなって、地面に大きな穴を空けた。