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焼き肉とビールは最高、そして二度目の偶然の再会って

2021-01-17 10:15:02 | オリジナル小説

 夕飯を食べに行かない、焼き肉だよと良子さんに言われて頷いた、だが、連れて行かれた店の前で正直、慌ててしまった、どう見ても高級焼き肉店、間
違っても食べ放題の牛若○とかスタミナ○太郎とかとはレベルの違う店だ。
 

 案内されて、メニュー表を見ると、金額に目が点になってしまう。
 好きなものを頼んでねと言われるけど悩む、困る、そんな様子を見かねたのか、牛タン、カルビ、ホルモンと色々と注文する良子さんが羨ましい。
 
 遠慮してるでしょと言われて、うんと頷いて、少しと言ってしまった。
 
 「祖母と二人の時は、こういうところは来なかったし」
 
 「飲み屋、小料理屋じゃない」
 
 「そ、そうです」
 
 「あなたが眠っているとき、色々と話したから」
 
 ニコニコと笑う良子さんは本当に♂なのかと思うくらい、普通の女の人に見える。
 
 「聞きたい事があるんですか、いいですか」
 
 「何、何でも聞いてね」
 
 「あたしを産んでくれた、どんな人だったんですか」
 
 良子さんの箸が止まった、少し難しい顔になる、知りたいと言われて少しだけと本音を呟くと、いずれと言われてしまった後、にっこりと笑みを返された。
 
 「父親の事は知りたくない」
 
 ふと思い出した、祖母に聞こうとした時、黙りこんでしまったことを、怒っているというより、困っているという感じの顔だった。
 
 「はあっ、良かったあ、実はね、詳しい事は知らないのよ、あたしも」
 
 以外だ、これにはびっくりした。
 
 「ところで、この間、男の人に声をかけられて腕を掴まれたって言ってたでしょ、また、会ったりした」
 
 いいえと答えると良子さんは、ほっとした顔になった。
 
 「知ってる人に似ているなんて台詞はね、相手がオヤジ、ジジイでも気をつけて、ナンパかもしれないからね」
 
 な、ナンパか、今まで学生時代からモテ期も経験もないし、それに、あの男の人は謝ってくれたし、悪い人には見えなかったけどなあなんて、思いながら牛タンを食べつつ、卵スープを一口。
 

 最初は緊張したけど高級な肉って美味しい、一口食べてどんどんと進む、子供じゃないんだからビールも頼んだ、焼き肉とビール、最高の組み合わせだ、でも食べ過ぎには気をつけようと思っていたが、一時間ほどすると満腹になってしまった。

 店を出ると外は真っ暗だ。
 
「良子さん、足下、気をつけて」
 
 ジョッキで三杯、焼酎も飲んでたし、顔は赤くないけど酔ってるんじゃないかと思った、だが、自分もビールは二杯、ハイボールを二杯飲んでいた、少しほろ酔いという感じだろうか。
 

 店を出て階段を降りようとしたとき、男性とすれ違いざまに肩がぶつかりそうになった、まずと思ってよけようとしたが足がふらついた。

 「美夜っ」

 良子さんの声に、返事をしようと頭を向けたとき、足下がぐらりと揺れたが、腕をぐいと掴まれた、良かった転ばなくてと顔を上げると相手の顔がチラリと見えた、支えてくれたんだありがとうと言おうとしたとき。

 「いっ、市川(いちかわ)、あんた」
 
 驚いた良子さんの声に相手の男の人も返事をする、知り合いみたいだ、でも、市川と呼ばれた人を見て驚いた、数日前に出会った男の人だったからだ。
 
 「帰りましょう」

 ぐいっと良子さんに手首を掴まれた、知り合いなのにいいのかと思ったら、待ってくれと男の人が声をかける。
 

 待つわけないでしょと、良子さんが叫んだ、仲が良くないのかもしれないと思っていると、せっかくいい気分でいたのに、酔いがさめたわと良子さんは怒った声で呟いた。
 



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