2008年5月、「富士フォトサロン札幌」で開催した私の写真展へ、車椅子に乗った紳士が訪れた。会場を十分に時間をかけて一巡し私の所へやってきた。
彼は私の方を見ながら「あなた、パーキンソン病なんですね。私もそうなんです。今朝の道新の記事を見てやってきました。感動しました」などと話しかけた。
彼は10年ほど前に発症し、前屈姿勢で足のバランスも悪く辛そうに見受けられた。
私達は同病の仲間という事ですっかり意気投合し、話し込んでしまった。
病の進行状態や薬の事、現在の体調の事、日常生活で困っている事など話が途切れることはなかった。話しているうちに彼は私と同郷であることや、中学校も同じで私の後輩である事が明らかになった。
彼の名はTといい札幌でデザイン会社を経営し、自身は絵に興味を持ち仲間も多いという。
私たちは互いに励ましあい、エネルギーを分かち合った。彼は私の作品をもう一度見て回り、再会を約して会場を後にした。
それから5ヶ月ほど経った10月のある日、T氏から1通の封書が届いた。開けてみると彼が絵の個展を開催するという嬉しい知らせであった。
同封された手紙には次のように書かれていた。
「あなたの作品を見て感動しました。写真もそうですが、同じパーキンソンでもこのような事が出来るんだという事実に、より大きな感動を覚えました。あなたの個展を見て自分もやってみようというエネルギーが湧いてきたのです。あの日、あなたの個展を見なかったら今回の私の個展は無かったでしょう」
私はT氏の個展会場に駆けつけた。私たちは歩み寄り、涙ぐみながら無言の握手を交わした。彼の家族や絵の仲間達が私達を取り囲んで祝福してくれた。私たちは心の中で呟いた。「パーキンソンでも出来ない事はない!普通の人より、少し動作が緩慢なだけだ」そして、固い絆で結ばれた。
その後、T氏が中心になり知り合いのパーキンソン患者や重症筋無力症患者など難病患者と家族のグループを立ち上げ、月1度の交流会を行っている。今年は5月に花見、6月に積丹での釣り、7月にイコロの森(苫小牧)散策などを楽しんだ。昼食をとりながらの近況報告では、体調や薬の情報、リハビリの取り組み、今、困っている事、趣味の事などたくさんの話題が次から次へと出てくる。参加した仲間達は元気をもらい明日への希望を満たす。