店の準備やら、それに伴う名刺、WEBSITE作り、挨拶回り、勉強会、
ばかりやっていても収入ゼロじゃどーしょうもねえ。ほんで、キレる、女。
うわちょ!あたいばっかり働かせやがってこの愚図がぁぁ!亭主失格!男のカス!
いつまでたってもヒモ野郎!犬の方がマシ!猫の方がマシ!うわきゃあぁ!
空が!空が堕ちて来て血の雨が降る!涙が!涙がチャーシューに混じり、
神は地獄で暇を潰す!おれは!おれはお前を潰したいぃぃぃ!きゃああぁぁ!
死ね!いや!死んだら困る!詫びれ!膝を大地につけて、こうべを垂れれ!侘びれ!
はよっ!はよせいやっ!だに!と、
声にならぬ声を狭い室内で撒き散らす。
よりによって私が精魂込めて作製した本棚(ブロックに板を重ねて、重ねただけ)を、
ひっくり返しやがった。ぼくは「うわぁ」と言うしかなかった、目を閉じて。
本々が無言で鈍い音を立ててフロリングに叩き付けられて、へなっとなった。
僕はまた「うわぁ」と言った、目を開けて。
女は腰が痛いっ!と言い残し、
ロフトに登ったまま降りて来なくなって、私は自分で本棚を片付けた。
そのタイミングで、
「ピンポーン!」つって郵便屋のヤギが何か持って立っている姿が、
インタフォンの液晶に映っていたのだが「空気読め!」と言って僕はヤギを帰らせた。
ヤギは「メェー」と鳴いた、女は「あー、腰がいてー」と呟いた、
私は、マーク・トウェインの「トムソーヤの冒険」を手に取り、
ハックルベリーは元気かなー、と思った。
たぶん、もうすぐ私は30歳になる
それまでには、本棚は余裕で元に戻ると思う。
ちょうど、本の並びが気に食わないと思っていたところだ、
坂口安吾さんの隣りに伊坂幸太郎があることに納得がいってなかった、
C・ブコウスキーの「くそったれ少年時代」の横で、
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの「星の王子様」が気まずそうだった、
「図解・仏像の見方」と書かれた背表紙の両脇に、
「無冠・前田日明」と「1976年のアントニオ猪木」が収まってるのはどう考えても違うだろ、と思っていた。
直す、きっかけをくれてありがとう神様。
外の雨は止んで猫が変な声で鳴いた。
せ