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慶応ボーイの植木屋修行

ランドスケープアーキテクト福川成一のエッセイとオーベルジュ・スミの庭の記録

穴掘り3

2007-03-08 17:22:59 | 慶応ボーイの植木屋修行
 東京の御殿山のお屋敷でモチを移植するために僕は掘り始めた。かなりの大木で周囲を広めに掘り始めた。土は良い土で僕は一人で今日一日の仕事が見えているので、張り切って掘り始めた。二時間、約1mの深さまでスイスイと掘った頃、僕はおかしいことに気付いた。根はどうしたんだ。さらに2mまでほっても幹から一本の根も見付からなかった。もう僕の姿は土の中に見えなくなっていた。これは大変だと気のきいた職人が私の掘った土を中段で引き受けて外に投げ出す。

 こうしてこの木はやっと根が表れ出た。多分、この木は以前の庭を作る前から生えていて、何かの理由で土を盛られ、普通これほど深植えにされると呼吸困難で枯れてしまうか、地表近くに発根するかするのに、余程この深さが快適だったのだろう。私達は何か特別のものを感じて、この木は動かさない方が良いと助言したが親方は聞かなかった。

 この木を引きずり出すために、塹壕のようなスロープを掘り、チルホールという手動のウインチで無理やり深い穴から引きずり上げ、彼の気に入る、大して意味もない場所に移動させたが、私達の二日間の苦労をあざわらうようにあっけなく枯れてしまった。僕はしばらく、殺人を犯した罪人のような、なさけない気持ちでいっぱいだった。

あの木は僕に何を教えようとしたのか今もわからないが、それから簡単に木を切ったり、移植したりしないようになった。


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