生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟弁護団(はっさく弁護団)

生活保護基準引下げは憲法25条違反!東京都内の受給者が国等に対し国家賠償等を求めて闘う集団訴訟(@東京地裁)に取り組む

厚生労働省に被害回復、控訴断念を要請!

2022年06月28日 | 政策
はっさく訴訟東京地裁判決を受けて、厚生労働省に被害回復と控訴断念を要請しました!



<テキスト版>
2022(令和4)年6月27日
要請書
厚生労働大臣後藤茂之 様
                
生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟原告団・弁護団
いのちのとりで裁判全国アクション
生活保護引き下げにNO!全国争訟ネット

2022(令和4)年6月24日、東京地方裁判所民事第51部(清水知恵子裁判長)は、生活保護引下げ違憲東京国賠訴訟において、保護費を引き下げた行政処分を取り消す判決を言い渡した。
本訴訟は、東京都内の生活保護利用者32名(うち1名は死亡)が、国及び各自治体を被告として、2013(平成25)年8月から2015年4月まで3回にわたって行われた生活保護基準の引下げを理由とする保護変更処分の取消し等を求めた集団訴訟である。判決は、上記3回の引下げを理由とする各処分をすべて取り消すというものであった。
同種訴訟は全国29地裁で提訴されているが、保護変更決定処分の取消しを認容した判決は、2021年2月22日の大阪地裁判決、2022年5月25日の熊本地裁判決に続き3件目である。
本判決は、被告側が本件生活保護基準引下げの理由として説明した「デフレ調整」について、「デフレ調整」の必要性及び物価の変化率による調整を行ったことの合理性についての厚生労働大臣の判断は専門的知見との整合性等を有しない、デフレ調整の起点を平成20年としたことの合理性についての被告側の説明は合理的根拠に基づくものとはいえない、生活扶助相当CPIを用いたことは生活保護利用世帯の可処分所得の実質的増加の有無・程度を正しく評価し得るものといえないとし、引下げの影響は重大であるとした。その上で、本件生活保護基準引下げに係る厚生労働大臣の判断過程には過誤・欠落があり、その裁量権の逸脱・濫用があったと判断した。
これは、大阪・熊本両地裁に引き続いて、裁判所が厚生労働大臣の恣意的な判断を許さないとの態度を示したものであり、憲法で保障された健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を具体的に保障するという点において極めて重要な意味を持つものである。
本件生活保護基準引下げから今年8月で丸9年。本訴訟の原告をみても、高齢の原告団長は亡くなり、病気が悪化して外出できなくなった者もいる。本件生活保護基準引下げによって生活への大きな被害を受けた全ての生活保護利用者の被害回復は急務である。
生活保護基準は、ナショナルミニマム(国民的最低限)として生活全般に極めて重大な影響を及ぼし、格差と貧困が拡大固定化する中で、最後のセーフティネットとなっている。このような生活保護の重要性に鑑みれば、国は、本判決を真摯に受け止め、生活保護基準を次々と引き下げてきたこれまでの政策を改めなければならない。
私たちは、国の違法を厳しく断罪した本判決をふまえて、以下のとおり要請する。

1 被告各自治体に控訴しないよう指導し、2013年8月の引下げ前の生活保護基準に直ちに戻すとともに、違法に保護費を下げられた生活保護利用者に真摯に謝罪すること。
2 生活保護基準の見直しの際には、透明性が確保された再検証可能な方法により、生活保護利用者の意見を反映させる措置を講じること。
3 コロナ禍の下、生活保護の役割が高まっている状況に鑑み、制度の広報、申請権保障、扶養照会の廃止、補足性の原理緩和等を通じてその積極的活用を促すこと。
          以 上