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平山みつると黒いテナーサックス

サックス吹き平山みつるの気ままな音楽活動日誌です。

このサックスの音どうかなぁ?」と謂う質問

2018-01-31 00:55:14 | ジャズマンの独り言

 サックスプレーヤーとバンドをやった事のある方なら一度はこの質問をぶつけられた事があるのではないでしょうか。今日はそんな時その状況をどう捉えどう対処すれば良いのかお困りの方に向けて筆をとってみました。

 

<一番大切な事>

それは正直に答える事です。

 質問者はあなたがサックスに関して含蓄のある人物とは思っていません。
あくまで客観的な感想を求めています。

 ですが良い機会だからといってあなたが普段からその人に感じているサックスの音の不満は間違えても伝えてはいけません。理不尽かもしれませんが「そんな事聞いてないんだよ!」と喧嘩になる事請け合いです。それは別の時間にお茶の席でも設けてじっくり話しましょう。

他に例外もありますがそれは後半に書きます。

 

<相手はどんな状態なのか>

 サックスに限らず管楽器というものは骨振動の所為で人間の肉声のように主観的音色と客観的な音色に差異が存在します。これは自分の声を録音して聞くと思ってたのと全然違うというのと同じ状況です。

 また、ベルが奏者の前にある為に野外や音の反響がデッドな練習スタジオ等では吹いている本人が感じている音は実際に鳴っている音量の半分以下でその音色も『ブシュー』だとか『パスー』と聞こえています。

そんな状況の中で質問者があなたに求める答えとは

  • 外音は艶やかになっているのか等の最低限の音色の情報
  • バンド演奏の中で自分の音が埋もれていないかと謂う音量の情報 

この二つの場合がほとんどです。

 演奏経験の豊富なサックスプレーヤーの場合は骨振動や息の通り具合、楽器の振動などから自分に聞こえなくても外音がどんな感じかを予測することができます。そんな上級者がこの質問をする時というのは

  • 初めて演奏する音響空間で判別できない(畳敷きの和室やチャペルなど天井がとても高い空間など)
  • 共演者又はバンドリーダーであるあなたの楽曲や音楽性にそぐわない音ではないかを確認している。

 等理由は様々です。

 

<何をしてあげられるのか>

 この質問をするサックスプレーヤー達の大半はリードを別のスペアに交換するのかどうかを検討しているだけなので解決案を提案する必要もありません。正直に答えて放っておいてあげましょう。

 ただし、あなたにしてあげられる事が全くない訳ではありません。あなたが思いやりのある優しい人なのであれば担当楽器の音量をサックスプレーヤーに合わせて抑えてあげましょう。あなた一人のほんの少しの思いやりだけでサックスプレーヤーの不安要素の大半を和らげてあげることができます。

  経験の豊富なサックスプレーヤーの場合は先ず

「そんな質問をするなんて一体どうしたんだい?」

と理由を聞いてから正直に答えてあげましょう。そしてそっとしておいてあげてください。サックスプレーヤーはあなたの正直な感想を聞き勝手に判断し対策を練ります。

 

<質問者がやけにご機嫌な時は>

 これまではサックスプレーヤーが不安を抱えている事を前提にして書いて来ました。しかし不思議なことに「サックスの音どう?」という質問をとても上機嫌な調子で訪ねてくる時があります。この最も罪深く対処が面倒臭いケースでは一体どうしたら良いのでしょうか。

 面倒臭いとは言いましたがこの場合も質問者はあなたに含蓄のある感想なんて求めていません。サックスプレーヤーはサックスのことに関する深い議論はサックスプレーヤー同士でしか出来ない事は百も承知だからです。なので気軽にと言いたいところですが的外れな返答をしてご機嫌を損ねるよりは「おっ!この人わかってる!」みたいな感じに思わせたいですよね?

 なので先ずは上機嫌の理由を知りたいところですがすぐに見抜けない時は「そんなにご機嫌で良い事でもあったのかい?」と直接テンポよく聞き出すのが最善策かと思います。

ほとんどの場合は

  • 楽器を新調した
  • マウスピースを新調した
  • 高性能なストラップを新調した

などの理由、酷いものになると

  • リガチャー(マウスピースにリードを固定する締め金)を新調した
  • サックスのネジを貴金属性に変えた…etc

 などの理由になってきます。

 リガチャーやネジに関しては黒縁メガネを使っていた人が青縁に新調して「どう?どこか変わったかわかるよね!?」と聞いてくるぐらい罪深いと思います。サックスプレーヤー同士ならその日着ているシャツを褒め合う程度の話題ですがサックスプレーヤー以外の人が感想を述べるにはハードルが高いように思われます。

 でもちょっと待って欲しいw

 先ほども述べましたが「サックスのことに関する深い議論はサックスプレーヤー同士でしか出来ない事は百も承知」なんです。

色や材質に形状を褒めたりするだけでOKそれで満足します。

ちなみに筆者がうまい答え方だと思ったのは

 

A「へー、これ買ったんだぁ、いくらしたの?」

S万円です。」

A「うわぁこんな只の締め金がそんなにするんだ凄いなー」

 

というやり取りを耳に挟んだ時でした。

参考まで。。

 

<あなたが疲れている時は>

自分の演奏の準備で忙しかったり疲れていてまともに相手をするのが面倒臭いなと思ったら

「えー、、ちょっと分かんないよ。。」

「へー、そうなんだすごいね、、」

 と軽く流してあげましょう。興味を持たれないことも理解されないことにも慣れっこなのでサックスプレーヤーがあなたに対して悪感情を持つ事はたまにいるかもだけどほぼないです。そもそもご機嫌をとる必要は全くなくそんな事が原因でバンドの音が悪くなるとかはちょっと無いなって僕は思います。

 

<このサックスの音どうかなぁ?>

 この質問をしても満足のいく答えが得られない事に対して大半のサックスプレーヤー達はもはや諦観の境地にいるのでぶっちゃけなんと返答しても問題にはなりません。ですがサックスプレーヤーは人に吐露する人も決して人に相談しない人も皆々この疑問と常に向かい合っていることを知って欲しいです。

あと、もしもサックスプレーヤーさんがこの記事を読んでいたら肝に命じてください。

自分の出音の感想を聞く時は先に相手に理由を伝えましょう

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ジャズマンの独り言 -創造と伝統-

2018-01-26 01:19:44 | ジャズマンの独り言

 昨年このブログでは出演情報しか発信していなかったので反省の意も込めて今年は頻繁にとはいかなさそうですがたまにはコラムでも綴って見ようかと思います。 

 それでは本題に入りまして、古今東西過去現在、音楽家の楽曲や演奏スタイルが評価されるポイントに創造性の有無というものがあります。私は何が創造的なのかという事は歴史を知る事によって見えてくるんだと思っていますのでジャズという音楽の歴史を浅くですが掘り返してみました。

  ジャズという音楽はおおよそ100年程の歴史があると言われています。ブラックミュージックと西洋音楽のハーモニックシステムの融合がジャズというのであれば18世紀頃にはそれはもう始まっていたと乱暴な言い方もできますがアメリカ合衆国のブラックミュージックの中でジャズという音楽スタイルが登場して来たのは19世紀終わりから20世紀初頭の辺りだそうです。

  世界初のジャズの商業的なレコーディングは1917年のオリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンドというグループによるものだったそうなので昨年の2017年はジャズレコーディングの登場から100周年という記念すべき年だった訳ですね。

  ルイアームストロングがトランペットを片手に朗々と歌い上げた時代から現在のニューヨークなどの都会で進化し続けている新世代の演奏するスタイルに至るまで楽曲や各々の楽器の演奏スタイルにその性能まで多種多様な進化を経ています。現在に至るまでおよそ100年以上の間に確立されたそれぞれのスタイルを再現昇華する事に研鑽を積む音楽家がおりまた現代に新たに創造される楽曲の流れに対応する音楽家も存在します。前者がいなければ私たちは古き良き時代の音楽はライヴで聴く事はできず録音されたものでしか楽しめないし後者がいなければ現代の作曲家が想像する真新しい音楽は真価を発揮することができない、そして100年後も新しいスタイルが登場しなければジャズの歴史は止まってしまい音楽ファンとしてはとてもつまらないものになるでしょう。

  話は少し変わって、音楽スタイルを特徴付けるものとは一体なんなのでしょうか。音楽専門用語は省いてざっくりと言えば言語と使用される楽器ではないでしょうか。言語はリズムとニュアンスを生み出し唄となりその音楽に使用される楽器はサウンドを決定づけるといっても過言ではないでしょう。しかし現在情報が世界を一瞬にして駆け巡り人の往来も盛んな現代に於いてジャズは様々な国で各々の言語を持つ人達に演奏されその地域の伝統楽器を取り入れた試みもなされています。様々な文化と伝統の坩堝と化した現代の音楽スタイルはとても一言で説明ができるものでは無くなっているのかもしれません。

  例えばかつてのキューバ危機の前後に合衆国の音楽家達はラテンのリズムをジャズの楽曲に取り込みました。逆にアントニオ・カルロス・ジョビンはジャズの楽器編成とハーモニーをブラジリアンミュージックに採用してボサノバという音楽スタイルを生み出しました。チック・コリアはイタリア系移民とスペイン系移民の両親の間に生まれてアメリカで育っており彼の創り出す独特な楽曲も演奏スタイルもそのバックボーンを彷彿とさせるものがあります。もちろんジョン・コルトレーンの様に独創的かつ革新的なアイデアでそれまでのジャズの演奏スタイルの発展に大きな影響をもたらす例もあるので音楽スタイルの融合だけが創造性に繋がるとは言い難いのですが所謂シーツ・オブ・サウンドと呼ばれるコルトレーンのスタイルもそれまで確立されて来たジャズの伝統と発展の延長にあるのかもしれません。

  音楽だけに限らず物事の発展に於いて伝統と創造性というのもは相反するものではなく同じ時間の流れの中で共に共鳴するものだと私は信じています。創造的であろうと頭をひねったりか伝統を守り伝えていこうと使命感を携えて創作活動をするのは正しい事ですがその下地には歴史を学び現在世界でどんな事が起こりどんな音楽が発信されているのかとアンテナを張っている状態がなければ現在に生きている音楽家とは言えないのかもしれません。誰かの発信してきた音楽が一体なんだったのと云う事は彼が生きている現在が過去になったその時に評価される事なのでしょう。

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