ムッシュのブログ:日日是曠日

SAXと音楽を中心に……趣味に関するよしなし事を。

ゴジラという存在

2017年12月16日 | 映画
もう還暦も近いというのに、怪獣が大好きである。

10年も前になるが、ガメラについて書いた
昨年、映画『シン・ゴジラ』が公開され、つい最近もTV地上波放送されて評判が高い。しかし、賞賛される政治家や自衛隊のリアルな描写については、すでに20年前、平成ガメラ3部作で描かれている。その踏襲である。
『シン・ゴジラ』に特筆すべき点があるとすれば、それは「ゴジラ」をモチーフとしてそれを超えるものを表現したことであろう。ラストシーンで一瞬登場する「人型ゴジラ(それともゴジラ人間? これが最終形態か?)」がそれを雄弁に語っている。公開当時、本作の監督がタイトルの「シン」について、新であり真であり、神だと発言しているのを何かで読んだ。真かどうかは大いに異論のあるところだが、神のニュアンスは確かに感じられた。映画『2001年宇宙の旅』に通じる何かを(まあ、エヴァンゲリオンの監督だし)。



そう、この映画において「ゴジラ」は『2001年宇宙の旅』の謎の石板「モノリス」なのである。そういう意味で、『シン・ゴジラ』は「真」のゴジラ映画ではない。「モノリス」が人類の進化を促す重要な存在であっても、主人公ではないのと同じである。それはモチーフのひとつにすぎない。だから私はこの映画が(というかゴジラの描き方が)あまり好きではない。波長が合わないし、何よりゴジラに対する畏敬の念が感じられない。一番怖いのはゴジラではなく米軍の核兵器であり(これは近年のゴジラ映画では当たり前の事になってきているが)、ゴジラの造形は醜悪ですらある。ゴジラ映画ならゴジラの怖さやかっこよさを追求してほしい。大人になってからの、四十年来の叶わぬ願いである。

理想のゴジラ映画とは、もちろん個人的見解だが、ゴジラが姿をほとんど現さないゴジラ映画だと思う。足音の地響きとあの声、破壊の跡。それだけでゴジラ映画が作れたら最高ではないか。「ゴルゴ13」のエピソードで、ゴルゴはまったく姿を現さず、一発の弾丸と銃声で完結させるというものがいくつかあるが、あれをゴジラでやるのである。姿を無視するにはでかすぎて無理があるのは承知の上で。たしか『クローバーフィールド』というのがそんな雰囲気の映画ではなかったか。これを可能にするには、主人公が巨大な存在感と深遠な精神性をまとっていなくてはならない。ゴジラはゴルゴ13に劣りはしないと思うのだが。

写真は、酒井ゆうじ作「ゴジラ1999」である。先ほどの話とはまた違う意味で、造形としての理想のゴジラである。この模型を眺め、まだ見ぬ理想のゴジラ映画を夢想し、恍惚となるのだ。まぎれもなく、オタクである。

核兵器とゴジラの関係についても書きたいが、それはまた別の機会に。






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007 QUANTUM OF SOLACE

2009年02月08日 | 映画

007最新作「慰めの報酬」。意味のわからない邦題だ。確かに原題を直訳するとこうなるのだろうが、慰めの共有という意味ではないのかと疑問に感じる。

前作「カジノ・ロワイヤル」の続編で、これを観ていない人にはさっぱりわからない筋立てである。007シリーズの中では最も上映時間が短いそうだが、そうは感じられないほど密度が濃い。展開がはやく、肉弾戦も交えてアクションの連続である。そして次々と人が死んでいく。おそらくジェームズ・ボンドが最も多くの殺人を為した作品だろう。このことは、最後の場面で最も憎しみを抱いている相手を殺さなかったことのアンチテーゼなのだと、見終わった直後に気づいた。主人公は前作のラストシーンでボンドになったように、本作のラストで真の諜報員になったのである。

毎回話題になるボンドガールであるが、上の写真にも写っているオルガ・キュリレンコ演じるカミーユはボンドガールとはいえない。彼女はボンドにとっておそらく妹のような存在であり、抱こうなどとは露ほども思わなかっただろう。本作で唯一ベッドを共にした女はあっという間にオイルまみれで殺されてしまう(「ゴールドフィンガー」へのオマージュと聞くが、なんとも後味が悪い)。本作でも、ボンドガールはやはり前作同様、ヴェスパーである。一瞬写真で登場するだけだが、それは間違いない。常にヴェスパーの存在を(欠落を)観客は感じ続ける。

いや、もっと目立つ女性がいた。Mである。カミーユが妹ならMは母。母は偉大なのである。

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RED CLIFF Part1

2008年11月22日 | 映画
三国志が好きだ。だから『レッドクリフ』は観ないでおこうかと思ったが、一縷の望みを抱いて劇場に足を運んでしまった。

不満を言えばきりがない。

孔明は戦場で不安そうな顔をしてはならない。
劉備はただの好々爺ではいけない。
小柄な関羽と張飛など認めるわけにはいかない。
曹操はスケベなだけではない。
荊州にあんなに多くの軍船はない。
赤壁から手の届きそうなところに曹操が布陣するわけがない。

監督がジョン・ウーで、エイベックスが一枚かんでいたりなんかするわけだから仕方ないのだろうが、人物描写も物語世界も薄っぺらである。が、カネをかけただけあって戦闘シーンはそれなりに見られた。このPart1は序章にすぎないので、Part2にちょっとだけ期待することにしよう。原作に勝る映画はないという当たり前のことを忘れずに。

しかし、引っ張りすぎだよな…すべてはこれから、というところで終わるなんて。
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THE STING

2008年10月19日 | 映画
ポール・ニューマン逝く。

スティング

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ポール・ニューマン演じる凄腕詐欺師のかっこよさ。
高校生の時、名画座で観て、びっくりした。アカデミー賞7部門をとった作品としての出来はさることながら、こんなにかっこいい男がいるのかと。

そして思い出されるのはもちろん、

明日に向って撃て! (特別編) (ベストヒット・セレクション)

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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この作品も、私が最も感銘を受けた映画の一つである。

この2作品を続けて観てみると、何とも感慨深い。ビデオ機器の普及でこういう楽しみ方が可能になったのは喜ばしいことである。しかし、私が若いときにポール・ニューマンに感じたような大人の男の魅力は、名画座で観てこそという気がする。ビデオの功罪である。
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THE DARK KNIGHT

2008年08月15日 | 映画

脳天気で単純なスーパーマンは嫌いだ。
正義とアメリカン・ウエイのために戦うなどと臆面もなく口にできるやつを私は憎む。そういう人間が遙かイラクまで出かけて行って人殺しをするのである。

不細工で幼稚なスパイダーマンも好きになれない。
あのコスチュームは、ほんと何とかならないものか。蜘蛛が見たら気を悪くするだろう。

心にトラウマと暗い闇をもつバットマンが好きだ。
新作『ダークナイト』が評判である。タイトルはバットマン自身のことを表しているのだが、実は、本作のバットマンはとてもいいひとである。「ダークナイト」を演じるピュアな心をもつ正義の味方なのである。ジョーカーの異常さを際だたせるためであろうが、何だか物足りないというか、頼りなさのようなものさえ感じてしまう。極悪非道の犯罪者は容赦なく殺すアンチヒーロー的側面を、やはりバットマンには求めたい。

アメリカでは記録的な大ヒットだという。確かにB級映画としてはかなりいい出来である。

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プレデリアン!?

2007年11月01日 | 映画
とうとうここまで堕ちたか。

AVP2(エイリアンズvsプレデター2)レクイエム』に登場する、エイリアンの幼生がプレデターに寄生した結果産まれた最低のハイブリッド、プレデリアン。

プレデリアンはこんなだし、プレデターは時代劇に出てくる落武者みたいだし(どうやら槍を振り回すらしいぞ)、観る人がいるとはとても思えない。しかし、このプレデリアンの画像を世界中の人(の、ほんの一部だと思うが)が待っていたというから驚きだ。私もこのニュースをasahi.comで知った。エリカ様の一件で、ちょっとぶれてますか、朝日さん。


学生の頃、最初の『エイリアン』を新宿で観た。

エイリアン

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画面は暗く、動きが速いのでエイリアンの全身像はよくわからなかったが、それでもH.R.ギーガーの造形に心惹かれたものである。凶悪で、おどろおどろしくて、嫌悪感とエロティシズムが混ざり合った魔物。平安時代の人々が感じたであろう「鬼」への恐怖を想像させるような精神性。エイリアンはただのバケモノではなかったはずである。
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CRASH

2007年08月20日 | 映画
2005年度アカデミー賞作品賞受賞。

クラッシュ

東宝

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公開時劇場で見逃したのを、最近CATVで視聴した。
交通事故や犯罪現場でぶつかり合う(クラッシュし合う)人々の姿を描いた群像劇。大勢の登場人物たちが、それぞれの多面性を、いろいろな場面で演じてみせる。ともすれば散漫になりがちな内容だが、すべての人物を交通事故を核として関連づけ、ドラマとしてうまくまとめ上げている。アカデミー作品賞の他、脚本賞・編集賞をとったのもうなずける佳作である。
主題はアメリカの日常にある人種差別問題。親子や夫婦の愛情が一服の清涼剤となるが、重い内容であることに変わりはない。突きつけられた現実の中から、かすかな希望を見つけることができるか。観る者によって受ける印象や解釈が異なるところだろう。アマゾンのカスタマーレビューに70もの投稿が寄せられているのも、そのためだと思う。評価の平均が星4.5(5が満点)というのは、投稿の多さを考えると驚異的な高さである。

この年、アカデミー賞の下馬評では、同性愛を描いたアジア系監督の作品が最有力であった。しかし蓋を開けてみると人種差別を描いたこの作品が受賞。なんとも複雑な心境になる。
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007 カジノ・ロワイヤル

2007年08月17日 | 映画
遅ればせながら、ニュー・ボンドを拝見した。

007 カジノ・ロワイヤル デラックス・コレクターズ・エディション (初回生産限定版)(2枚組)

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

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当然、ショーン・コネリーを筆頭とする過去の5人と比較されるわけだが、ダニエル・クレイグは今までのジェームズ・ボンド像を鮮やかに覆した。ボンド以前のボンドという本作の設定も彼に味方している。クールで泥臭く、人間的で残忍。そして豹のような野生と肉体の躍動。おとぎ話的要素や過剰な色気を廃し、リアリティを求めた演出も新鮮で好感がもてる。

そんなニュー・ボンドが、ラストシーンの最後の一言で、われわれのボンドとして立ち現れる。未完成の中の可能性がどこまで開花するか。おなじみのエンディング・クレジット "JAMES BOND WILL RETURN" に、今までになく大きな期待を寄せてしまう。
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GAMERA

2007年07月07日 | 映画
この年になっても怪獣映画が好きである。
しかし失望することのほうが圧倒的に多い。古くは小学生の頃、ゴジラのシェーに愕然とした。製作者のセンスの悪さに目の前が真っ暗になった。それ以降も怪獣映画を見続けてきたしエキストラ出演をしたりもしたが、満足した作品は皆無だった。
ところが。

ガメラ THE BOX 1995-1999

アミューズ・ビデオ

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この3部作はすごい。なんたって1作目の公開前にNHK朝のニュースでそのリアルさが紹介されるほどすごいのである。大人の鑑賞に十分耐えうる怪獣映画、ぜひご覧あれ。

こんなものも現在作製中。アトリエG-1の究極ガメラ。

ちなみに、ガメラはカメ型怪獣ではない。ガメラの世界にはカメは存在しないらしい。その意味で、「小さき勇者たち」は邪道である。
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