猿山政治論

巷に溢れる情報から妖しく光る原石をピックアップ!ステロタイプ的政治論に囚われぬ独自の世界観で「きれいごと」抜きに鋭く分析

核弾頭の小型化には意外と時間がかかるのでは?~日本は核武装すべきか(9)~

2009-08-25 19:04:59 | 日本核武装
(4)核弾頭(爆弾)開発技術上の要件

初めて開発するわけですから、まずは原子爆弾ということになります(水素爆弾は原子爆弾を信管代わりにします)。

また、原子爆弾には、砲身型(ウラン原爆・広島型)、爆縮型(プルトニウム原爆・長崎型)がありますが、民生用技術がそのまま適用できないため独自開発には課題が山積しており、様々な技術分野の専門家を半ば強制徴用した上で相当期間の大プロジェクトを実施する必要があります。

本命とされる爆縮型にまつわる課題に絞ってもざっとこれくらいあります。

①小型・軽量化

広島型・長崎型共に4~5トンの重量(大型人工衛星並)があり、特に長崎型は直径が150cmもありました。

長崎型は爆縮レンズと呼ばれる臨界発生装置が直径130cmを超える球形であったためにこのような大きさになってしまいましたが、Wikipediaによると、現在では30cm程度に小型化されているとのことです。

ちなみに1950年代後半には早くも25cmカノン砲による戦術核砲弾発射実験が行われたくらいで、さらなる小型化が進んでいます(核搭載巡航ミサイルの直径は50cm程度です)。

また形状も、MIRV化された弾道ミサイルの円錐形の弾頭中で水爆起動装置として格納しやすいように、球形から楕円形へと進化しています。

②安全装置

地味なようで非常に大事な問題です。爆縮型は分解保管していない限り異常電流が流れれば当然爆発します。

構造がシンプルな砲身型などは内蔵するTNT火薬が自然発火でもすれば必然的に核爆発して危なすぎるので第二次大戦後は作られることがなかった代物です。

この安全装置に関する技術は一から開発する必要がありそうです。

③完成品保管

すばやく報復核攻撃をするためには、分解保管しているようでは話になりません。

核弾頭内の物質が劣化しないような材質と構造を確保し、北朝鮮の攻撃に即座に報復できる発射体制を常時とり続けなければなりません。

④核実験データ

繊細な技術を要する爆縮レンズの設計・開発・製造には、実地の核実験とコンピュータ上のシミュレーションが欠かせません。

作ると腹をくくれば核実験くらいは平気でしょうが、シミュレーションプログラムには、パラメータとして実地の核実験の観測データの蓄積が必要で、自前では核実験を繰り返さない限り得ることはできません。

フランスが1996年の包括的核実験禁止条約に調印する直前に駆け込みで核実験を強行したのも、観測データを得るためでした。

特に弾道ミサイル用の楕円形の爆縮レンズを開発するには、複雑な爆縮計算が必要で、その計算根拠となるパラメータを確定するため、観測データ収集が不可欠です。

⑤兵器用プルトニウム

日本の場合は、青森県の六ヶ所再処理工場で、非核保有国としては唯一プルトニウムの抽出が可能な設備を保持しています(ただし現在のところまだアクティブ試験中)。

ただ、純粋なプルトニウムの保持は核拡散防止条約で禁止されているため、再処理後、即座に兵器用のプルトニウムとして転用できないようウランとの化合物として保管することになっています。

このように一旦ウランとの化合物にしてしまうと、改めてプルトニウムを取り出すことが難しくなるそうです。

⑥特殊火薬の開発

爆縮レンズに適した爆発力・耐変質性・制御容易性等を兼ね備えた特殊目的の火薬が必要です。

核弾頭ひとつ作るにしても、楽観論者は6ヶ月くらいで大丈夫だろうとおっしゃってますが、私は疑問に思います。

現在とは技術力等条件がまったく違いますが、マンハッタン計画には、約12万人の科学者及び技術者と、当時のお金で約22億ドル(今だと十兆円くらい?)が投入されています。

また、核開発中の覇権国家による軍事的圧力及び経済制裁を、外交的に回避できない場合は、配備までの期間を短縮するために、弾頭そのもの又は製造技術を購入するしかないでしょう。

今の日本人に、ここまでできますか???

続きは次回で

筆:猿山太郎


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