猿山政治論

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安倍首相によるTPP「日米共同声明」の欺瞞とその売国性

2013-02-23 22:35:28 | 国内政治
 安倍首相は、本日訪問先の米国ワシントンにおいて、誰の目から見ても日本の国益を回復不能なまでに毀損することが明らかな環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加の意思を事実上表明する「日米共同声明」を発表した。

まずはその全文を掲載する。

両政府は、日本が環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉に参加する場合には、全ての物品が交渉の対象とされること、及び、日本が他の交渉参加国とともに、2011年11月12日にTPP首脳によって表明された「TPPの輪郭(アウトライン)」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認する。
 日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティーが存在することを認識しつつ、両政府は、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する。
 両政府は、TPP参加への日本のあり得べき関心についての二国間協議を継続する。これらの協議は進展を見せているが、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非関税措置に対処し、及びTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め、なされるべき更なる作業が残されている。

 以下、着目点毎にコメントしたい。

A.「TPPの輪郭(アウトライン)において示された包括的で高い水準の協定を達成していく」とは

 「TPPの輪郭(アウトライン)」は、2011年11月12日に、日本が一切関与することなく、当時の参加国のTPP首脳から表明されたもので、売国マスコミにより矮小化されたように農業問題に限定されたものではなく、まさしく「包括的」な内容となっている。個々の項目はかつての「年次改革要望書」の内容そのものである。
 この全ての範囲に原則としてISD(投資家対国家の紛争解決)条項が適用され、外国投資家(≒ユダヤ国際資本)は、当該条項違反を理由として、弱者たる日本に対して様々なゴリ押し請求を直接的に行えるようになってしまう。
 日本は、今後国が滅ぶまで、このすべての範囲において米国による「高い水準」の搾取を受け続けることになるのである。

[TPPの輪郭(アウトライン)]
1.協定の5つの特徴
(1)包括的な市場アクセス(物品の関税や、サービス貿易及び投資の障壁の除去)
(2)地域全域にまたがる協定(地域の生産・サプライチェーンの発展を促進)
(3)分野横断的な貿易課題(規制制度間の整合性確保、競争力強化とビジネス円滑化、中小企業によるTPP の利用、開発(協力))
(4)新たな貿易課題(デジタル経済やグリーン・テクノロジー等の貿易や投資の促進)
(5)「生きている」協定(将来の貿易の課題や新規参加国の追加に伴う課題に対処するための協定の更新)

2.範囲
(1)全ての重要な貿易及び貿易関連分野、これには、新たな貿易課題や分野横断的課題も含む
(2)特定の市場アクセスの約束(物品の貿易、サービス貿易、政府調達)
(3)高い基準の採用と、途上国メンバーのセンシティビティ等への適切な対応
(4)新しい分野横断的約束(中小企業の国際貿易への参加の促進等)

3.協定条文案
 事実上全ての交渉グループで統合条文案を作成。いくつかの分野でほとんど完成している一方で、更なる作業を要する分野もあり、各国意見の相違点については、括弧が付されている。以下の事項について交渉中の課題とその進捗状況につき要点を記載。
(1)競争、(2)協力及び貿易に関する能力の構築(「協力」)、(3)越境サービス、
(4)税関(「貿易円滑化」)、(5)電子商取引、(6)環境、(7)金融サービス、(8)政府調達、(9)知的財産、(10)投資、(11)労働、(12)法律的事項(「制度的事項」及び「紛争解決」)、(13)物品市場アクセス、(14)原産地規則、(15)SPS(衛生植物検疫)、(16)TBT(貿易の技術的障害)、(17)電気通信、(18)一時的入国(「商用関係者の移動」)、(19)繊維・衣料品(従来は「市場アクセス」に分類)、(20)貿易救済

4.市場開放のパッケージ
(1)物品貿易:関税譲許表はすべての品目(約11,000のタリフライン)をカバーする。また、共通の原産地規則を作成中。
(2)サービス・投資:すべてのサービス分野をカバーし、高水準の成果を確保するため「ネガティブ・リスト」方式を基礎として交渉中。
(3)政府調達:相互のセンシティビティを認識しつつ、参加国相互の政府調達市場へのアクセスを最大にするよう交渉中。

B.「一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」とは
 NHKは、これを日本にあたかも有利な条項であえるかのような偏向解釈を行っているが、この条項の持つ意味は全く逆であって、強者である米国に有利な関税率設定に利するのみ(たとえば米国の自動車輸入関税の維持など)であり、日本にとってのメリットはほとんどない。ただ安倍首相が売国マスコミを通じ日本の国論を誤導するための道具として利用されるだけである。

C.「両政府は、TPP参加への日本のあり得べき関心についての二国間協議を継続する。」とは
 まさに、実質的にはTPPが日米FTAにしか過ぎないことが露呈したものである。
 現在のTPP加盟国はシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランド、アメリカ、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、ペルーの9カ国で、日本が加われば10カ国となるが、この10カ国の域内GDP合計の91%を日本とアメリカが占めることになるのであって、TPPの本質が日本を狙い撃ちにした「平成の不平等条約」であることは明らかである。
 このような代物をニコニコと笑顔で推進する者は須らく売国奴と言って過言ではない。

D.「自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処」とは
 この部分について、楽観的に解釈する向きもあろうが、全く逆である。カナダは北米自由貿易協定(NAFTA)で何度も痛い目にあっており、韓国も米韓FTAのISD条項で早速訴えられている。米投資ファンド「ローンスター」が外換銀行の売却の損失につきISD条項に基づき韓国政府を「国際投資紛争解決センター」に提訴したのがそれである。ISD条項は、実質、先進国の投資家の利益を守るのが目的であるため、訴えられた場合、ほとんど力関係で弱い側が敗訴している。
 では日米間で「懸案事項に対処」するとどのようになるのであろうか?
 まず、自動車部門では、円安を利用して日本の自動車会社の株式が外資に買い進められその支配下に置かれるまでの間、米国の2.5%の自動車輸入関税は維持されるであろう(更にアップもあり得る)。ちなみに日本の自動車輸入関税率はゼロである。
 さらに、保険部門では、ISD条項に基づき、かんぽ生命の外資による買収が進められる可能性がある他、相互会社形式を取る大手生命保険会社の株式会社化と外資によるその買収が求められるのは火を見るよりも明らかである。

 なお、安倍首相の今回の訪米においては、昼食会が開かれ宿泊もブレアハウスと一応の応対はされたが、共同声明後の記者会見で、米国人記者からはオバマ大統領に対する米国の国内問題についての質問ばかりが目立ち、さびしいことに安倍首相に対しては全く質問がなかったという。売国奴は、誰からも尊敬されることはないのである。
                                        以上

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