女の子になる方法、教えます!

性同一性障害になやむ若いMTF当事者に向けてのメッセージです

RLEはとっても重要です!!(移行前の心得⑥)

2008-10-15 20:37:17 | 移行前の心得
 よく、誰にもカミングアウトせずにホルモンをフライングで服用していたりなどという例があるということを伝え聞きます。もしそれが大の大人ならその負の責任も本人が負うので別に私からどうこう言うことではないのですが、あなたが未成年でもしホルモンを自己判断で服用することを考えているとすれば、私は大反対です。
 ただし、反対しない医師もいます。
 今の若い当事者にホルモンをさせないことで被る不利益に私が責任を持てない以上、助言にとどめるしかできません。ので、助言です。

 性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン
http://www.jspn.or.jp/05ktj/05_02ktj/pdf_guideline/guideline-no3_2006_11_18.pdf
 には、以下の用件を条件を満たす時に、ホルモン療法などの身体的治療に移るとしています。(条件は省略)

①性別違和の持続
②実生活経験(RLE)
③身体的変化に伴う状況的対処
④予測不能な事態に対する対処能力
⑤インフォームド・デシジョン
⑥身体的治療を施行するための条件

 この中で、客観的かつ自分自身で判断できるものは、②のRLEです。
 実際に女性としてやってみて、「うまくやれそうだ」と感じたり、「しっくり感」が生じたりするかどうか、これが(未成年の場合)もっとも重要な判断基準のひとつだと思います。

 ふつうに今女性としてやっていけない小学生や中学生が、親以外誰にもカミングアウトしてないような「何も行動を起こしていない」子がどうして先にホルモンになるのでしょうか?どうして、女友達と仲良くなって、「女子」として一緒に遊びに行ったりしないのでしょうか?
 あるいは、今いくら女性として見られているからと言ってどうして現実社会に適応できてないあなたが、どうしてホルモンをはじめるのでしょうか?困難から逃げおおせると思いますか?
 ホルモンはRLEの後です。パスし、埋没し、周りを説得し将来の見通しがついた後にホルモンをするのです。あなたが空想の世界で「女性」だと思っているに過ぎないのか、あるいは仮に絶対的規準で「心が女性」だとして現実に女性としてやっていけるのか。それをRLEはなんとなく確認することができます。もっと言えば、あなたが仮にGIDでないとしても、RLEをうまくやり通し24時間一生女性でやっていけそうだという見通しが立てば、性別を変えても(適応上の)問題は生じないでしょう。
 
 RLEは、いくつかの次元と段階に分けられると思います。
(一連の行動での段階)
 ①自室内
 ②外出
 ③活動
 
(他者との関わり)
 a非接触
 b買い物やあいさつ程度のかかわり
c理解者とその友人(ノンカム)とのかかわり
 dノンカムのみとのかかわり

(密度)
あ;短時間
 い;数時間一緒にすごす
 う;数週間から数ヶ月の内継続して、一緒に活動する
 
 人によっては、①-a-あ のように、「数時間家で女性としてたった一人で生活してみたらとても心地よかったです。だからRLEはうまくいきました。」という結論もありえます。けれども、それでは、まったく判断できません。できれば、③-d-う のように、自分の体の性別を知っている人が誰もいないコミュニティで、習い事やサークルなどをやってノンカムの友人を作る、そしてそれが苦痛でなく心地いい、という感覚が得られるような必要があると私は考えています。正直、ホルモンは料理にたとえるとダシのようなもので、他のものがすべてクリアーされていればその効果は生きてきますが、そうでないばあいは意味がありません。

 ③-d-う のような状況になるには、その他に様々な問題がクリアーされてなければなりません。その前に女の子の友達と一緒に遊んで彼女たちから違和感なく受け入れられることも必要でしょうし、そのためには(限定された相手への)カミングアウトも必要になってくるでしょう。

RLEについては、また機会をあらためて、もう少し具体的に章を起こして書くかもしれません。

カミングアウトは戦略的に(移行前の心得⑤)

2008-10-06 23:13:33 | 移行前の心得
 この記事を書く数日前、NHKの「ハートをつなごう」で、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー(≒GID))特集をやっており、若い当事者がカミングアウトすることを肯定的に扱っていました。
 しかし、私の頭が古いのかもしれませんが、GIDについては、カミングアウトして理解されて万々歳!・・ではありません。MTFの多くの人の性別の目標は、埋没だと思います。最終ゴール地点は、あなたが過去男性だったことを知っている人がいない場所で生活し、働くことだと思います。極端にいえば、あのパス度の綾菜ちゃんでも、大々的にカミングアウトすれば埋没できません。逆に、(私のように)少々外見のパス度に難があっても、街の中でふつうに埋没しているMTFはたくさんいます。もし、将来後者のようになりたいなら、カミングアウトは計画的に、戦略的に行わなくてはいけません。

 例えば、あなたがGIDであることを、学校のすべての人たちに伝える必要はあるでしょうか。もし、学校で女子として扱って欲しいのであれば伝える必要はあります。けれど、そうでないなら、言う必要はありません。
 また、戦略的と言っても、どうにも苦しくて私のことを分かって欲しい、そういう思いがあるのに、将来不利になるから言わない、これも自分にとってまずいことだと思います。言うことで道が開けることもあります。

 何が言いたいかというと、カミングアウトは、ある目的があって初めて必要になってくると言うことです。勿論その目的の中には、友達に自分のことを知って欲しいという欲求も含まれます。大切なのは、カミングアウトするから目的に近くなるのではなく、目的を達成するためにカミングアウトをするべきということです。

○悩みを相談するために
 まずはじめにカミングアウトをする必要性にかられるのは、「相談」する時だと思います。人によっては相談することなく行動できるかもしれません。もし、「私はGIDだと思うが、どうだろうか?」と悩み、もし、決心がつけば具体的行動に移すのであれば、ある段階で誰かに相談することになるでしょう。それは、ご両親かもしれませんし、学校の先生やカウンセラー、あるいは友人、当事者グループの方かもしれません。
 ばかにされそうで、言うのは勇気がいります。けれども、最悪でも嫌われるだけです。学校中ばらされて嫌な思いをするだけです。とって食われたりしません。一番相談しやすい人に、相談してみましょう。それで、埒があかなかったら、病院を受診することをお勧めします。東京近郊なら、予約後それほど待たずに初診できる有名でしっかりしたジェンダークリニックがあります。

○具体的な目的のために、障害を取り除くために
 例えば家で女性扱いを受けたいとか、ジェンダークリニックに通いたいので保険証が必要とか、そういう場合には、家族へのカミングアウトが当たり前ですが必要になってきます。学校で女子の扱いを受けたいなら、先生やクラスメートへのカミングアウトが必要です。
 けれど、ここで注意したいのは、「女として扱って欲しい」→「カミングアウト」と単純にはならないことです。例えば、カミングアウトしたことで今まで許されていた中性的な趣味や格好が許されなくなるかもしれません。女性化にカミングアウトは絶対必要ですが、カミングアウトそのものは女性化にプラスにもマイナスにも作用します。
 
○自分を知って欲しいという欲求のために
 自分のことを伝えたくて、孤独から逃れたくてカミングアウトするということもあるでしょう。私は、自分もそうでしたし、否定するものではありません。ただ、相手をよく選びましょう。それを聞いて相手がどう思うかは相手の人間性の問題だからです。「これを伝えたがために、嫌われてしまってもばらされていじめられても悔いはない。」そういう思いで打ち明ける覚悟がいります。けれども、理解してくれれば大きな支えになります。

○いいカミングアウト、だめなカミングアウト
 実は、この記事を書くのに少し悩みました。というのも、私の子どもの頃と今では時代が変わってきていますし、また、GIDといっても、本人の趣向、性格、そして家族環境や親の価値観によってさまざまです。ある子にとっていい方法でも、他の子にとってはだめな方法という場合もあるでしょう。また、不適切なカミングアウトが逆に嵐を呼んで数年後結果的に望みの性別で暮らすことができる原因になることもあります。だから、以下に書くことは参考程度にとどめ、自分らしいカミングアウトを模索してください。

・目的を達成するためか、自分の弱さの言い訳か
「将来女性になるために、今猛勉強するから塾に行きたい」
と言うのと、
「心が女だから学校生活が耐えられなくて行けない」
と言うのでは、覚悟の伝わり方が全然違います。
 他のすべては完璧を目指すから性別だけは許して欲しい。のか、性別が食い違っているから他のすべてもできない。のか。正直、勿論後者なのです。けれども、前者を目指してやっていくことが、理解を深めることになります。

・要求は明確に
 カミングアウトして何を求めるのでしょうか。例えば、病院への通院でしょうか。家での女扱いでしょうか。何は(今は)我慢できて何は親がだめと言ってもやるのでしょうか。いつまでに許可がいるのでしょうか。そういうことを明確にしておくと、相手も判断しやすくなります。

・誰が苦しむのか
 カミングアウトすれば、親は例外なく苦しみます。カミングアウトした時点で親不孝なのに、さらに親に「女にさせろ」と要求するのでしょうか。
 親を安心させることです。その他のことで親孝行する。女なんだから料理のお手伝いくらいしましょう。お母さんの愚痴を聞いてあげましょう。
 あなたが親とけんかし、あるいは引きこもってしまったら、「私(親)のせいでこうなってしまった」と親は苦しみます。けれど、もし、あなたが、しっかりと立ち、親の疑問にきちんと答え、「お父さんお母さんごめんなさい、私のせいで悩まないでね」と言えれば、「この子のために、なんとかしてあげたい」と思うものなのです。まあ現実はそんなに簡単ではないですが。どうすれば、性別移行ができ、かつ親の苦しみも最小限に食い止められるのか、それを考えることです。苦しむのはあなたであって、カミングアウトされた相手であってはなりません。

・決めるのは自分の自由、どう思うかは周りの自由
 可能な限り、また時間をかけて話し合った上で、親の理解が得られなくても、18歳まで待てば先に進められます。説得した上で理解が得られなかったら親が反対しても移行する、その決意が大事だと思います。親が理解するしないは親の自由です。親のせいで性別が変えられない・・・なんていう人はいません。勿論、「親が反対するから移行しない」「親を苦しませたくないから移行しない」この結論はありえます。けれど、それは「あなたの判断」であり、無理解な親があなたを苦しめているのではありません。話し合った上で、あなたの責任の下で決めたことです。
 カミングアウトは、
「お父さんお母さんが理解をしてくれないと私は不幸なのよ」
という苦しみの吐露ではありません。
「(理解してくれなくても)お父さんお母さんの子どもとして、めいっぱい幸せになって恩返しします」
という宣言なのです。

 以前ある当事者交流会である精神科医の先生が
「親の理解は長期戦」という趣旨のことをおっしゃっていました。これも、参考にしてください。今の否定や反対が、これからもずっと続くとは限りません。あなたの普段の行動にかかっています。

小学校5年生のあなたへ(2006年秋作成)(移行前の心得④)

2008-10-05 22:14:25 | 移行前の心得
 以下の文章は、私が過去にブログを開設していた時に掲載したものです。
 当時と今では、少し考えが変わっている部分もありますがおおまかな考えはかわっていませんので、そのまま掲載します。
 架空の小学校5年生のMTF(6年生だったかも(^_^;))を設定し、もし、アドバイスするとすれば、もし、手紙を送るとすればこんなふうになると思って作ったものです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・

 1できるだけたくさんの味方を作ろう(やさしさ)
 あなたには、男の子女の子に限らず、友だちはいますか?たくさんいますか?友だちはあなたのことを理解してくれますか?特に、本当の性で生きるためには、同性の(あなたが男子の体で心が女の子なら女子)友だちの理解がとても大切になってきます。たくさんの同性の友だちを作りましょう。
 あなたは今まで男子として生活してきました。だから、もしかしたら男子とも遊べないで、女子にも嫌われそうで結局どちらも友だちがいないかもしれません。友だちを作ることは大変です。けれど、ちょっとした勇気と努力で、友だちはできるのです。
 ①自分から声をかける
 2時間目が終わりました。みんないろんなところに遊びに行きます。けれど、よく見てください。自分から友だちを誘っているのは、クラスの半分もいません。ほんの少しです。ほとんどは、その誘いにのって、一緒に遊びに行く子達です。勿論あなたがだれかに誘われて、それが楽しい遊びならわざわざ自分から声をかける必要はありません。けれど、もしあなたが誰からも声を掛けられなかったら・・・、全然心配いりません。自分から仲間に入れて欲しいグループに声をかけに行ったらいいのです。はじめはみんなぎこちなくします。よそよそしいかもしれません。けれど、断られなかったら、がんばって一緒に遊んでみましょう。だんだんなれて友だちができるかもしれません。
 もうひとつ方法があります。他にも一人で遊んでいる子はいませんか?教室で絵を描いている子、図書室にいく子、飼育園にいく子など、一人の子で一緒に遊びたい子がいれば、一緒に絵を描いたり図書室や飼育園に行きましょう。
 自分から声をかけることは、とっても勇気がいります。けれど、ほとんどの子は、声をかけられたらうれしいものです。
 ②絶対いじめられない唯一の方法
 「おかま!」とか「男女」とかいやなことを言われたり、さわるのを嫌がられたり、大事なものを隠されたりすることがあるかもしれません。とっても辛いことで、今でも学校でのそんな体験が忘れられなくて苦しんでいる大人の人がたくさんいます。
 いじめられたら、すぐに話せる友だちに相談してください。相談できる友だちがいなかったら先生や家族の人に、それがだめなら保健室の先生や校長先生に、できるだけ早く相談してください。がまんすることは、相手のためになりません。それに、辛い経験を話す勇気が、いじめをなくす力に変わっていくのです。
 
 今辛いことがなければ、私がとっておきの「絶対いじめられない唯一の方法」を教えます。それは、クラスで一番嫌われている子、一番おとなしい子と友だちになることです。席替えで一番あたりたくないあの子と仲良くなることです。隣に座ったら、ちょっかいをかけてくるかもしれない。いつの間にかノートに落書きを描かれるかもしれない。声をかけても返事が返ってこないかもしれない。
 その子達は、友だちが欲しいけどできない子なのです。もし、あなたがその子と粘り強く話して、一緒に遊べるようになったら、いろんなことを話してくれます。ぼく、私にも友だちがいるんだって分かったらちょっかいをかける回数も少なくなってきます。どんな人にもいいところはあります。その子と一緒にすごすことで、その本当の意味が分かるようになります。

 じゃあ、なぜそうすることが「いじめられない」ことになるのでしょうか?だって、みんなから嫌われている子と一緒にいるから、一緒にいじめられるんじゃない?って思うよね。
 実は、違うんです。いじめる子、一緒になっていじめに参加する子、こわくて止められない子っていうのは、みんな弱い子なんです。みんな、自分を認めて欲しくて、自分を愛して欲しくてたまらない子達なんです。大人の言葉で言うと、そのSOSの信号が「いじめ」という行動につながるのです。そして、次の標的は私かもしれない・・・ってみんなおどおどしながら生活しているのです。
 もし、あなたがクラスで一番苦しんでいる子、一番バカにされている子と仲良くなれたら、他の子もみんな、「あなたと友だちになりたい!」って思うようになるのです。
 いじめが学級にあったら、止めたり注意することは怖くてできないかもしれない。けれど、いじめられている子と仲良くすることは、ほんの少しの勇気でできます。

 簡単そうに書きました。実際は、とっても苦しいことです。最初は心配した通り、仲良くなろうと思った子に裏切られたり、やっぱり一緒になっていじめられるかもしれません。けれど、あきらめずがんばってください。必ず潮目が変わる瞬間があります。
③みんなが嫌がること、気づかないことを率先して
 学級での仕事は、きちんと役割分担されているわけではありません。毎日の生活を振り返ってみてください。いつもみんながいやがっている仕事はありませんか?係活動を決めるときいつも最後に残る係、カメや金魚の水替え、そうじのちりとり係など、率先してやりましょう。他にも、具合が悪くなっておもらしをしたり、吐いたりしてしまった汚物の後始末、こばれた給食をふくのは、本人と先生だけですか?よく見たらいつもは目立たない子が率先してやっているのに気づくはずです。だらかがやらなくてはいけないそれを、できる子はクラスのみんなから慕われるようになっていきます。もっと言えば、誰に好かれなくても、汚物の後片付けを手伝った結果、「汚いから(私に)さわるな。」って友だちから言われてもそれをやめないあなたの心が、クラス全体を安心させるのです。
 他にも、具合が悪くて学校に来れなかった子へのお見舞い、図工の後始末、普段掃除しなくてよごれている窓のサンのふきそうじなど、恥ずかしがらないでできる子が、たくさんの友だちを作れる子です。
※汚物の処理は、衛生面での配慮が必要なので注意。

 2どんなに嫌われても自信を持って(強さ)
 やさしさだけでは、あなたの持つハンディキャップを跳ね返すことはできません。どんなに悪口を言われても、どんなに辛いことがあってもそれをはね除ける、そして目指す方向へ進む強い心が必要です。
 私は、むかし弱い子でした。ちょっと辛いことがあったら泣いていたし、ちょっとしたことで学校に行けなくなりました。5年生の3学期なんて、先生が怖くて、休んだ日の方が多かったです。けれど、大人になった今は自分でもびっくりするくらい強くなってしまいました。(もっと弱い方がいいかも(^_^;))
 どうすれば、強くなれるのでしょうか?
 私はあなたに強くなる秘訣のすべては教えられないかもしれません。人それぞれだからです。けれど、そのちょっとしたヒントは、差し上げられます。ふたつです。
 ①自分の今の状態を、病気や他人のせいにしない
 弱い大人の特徴はひとつです。自分の不幸を他人や運、自分の能力のせいにしてしまうことです。人によっては、「自分は努力ができない性格だから(^_^;)」と、努力不足までも性格や育ってきた環境のせいにしてしまいます。何をやろうにしても性別のギャップがあったのでそれは事実かも知れませんが、その事実を何百万ベン唱えても、状況は変わりません。あなたもそうです。「性同一性障害のせいで幸せになれない」と嘆いても、幸せはやってきません。今の苦しみを乗り越えるためにあなたがすることはふたつしかありません。心の苦しみを耐え男子としてがんばって一生やっていくか、いろんなハンディがあるけれど女性として生きると決めるか、どちらかです。その選択は、あなたがするものであり、どちらになってどんな不幸がやってきても、すべてあなたの責任です。
 もしあなたが女子用の水着を着たことで、クラスの子達からバカにされたとしても、誰のせいでもありません。あなたが、みんなを理解させられるだけの力がないだけです。日本のどこかでは、担任の先生や友だちにめぐまれ、努力せずに理解を得られる人もいるでしょう。けれど、逆に、どんなへんな担任の先生でも、嫌な子ばかりのクラスでも、あなたがとってもすばらしい子どもだったら周りを理解させられることができたかもしれません。それに、担任の先生や、クラスの子を責めても、あなたの苦しい状況は変わりません。

 ②自分の弱さにめげない
 大人だって弱いです。けれど、強くなっていける人は、二通りのどちらかの心を持っている人です。ひとつは、「どんな困難にあっても負けない!」と自分を奮い起こして弱さに逃げない人。もうひとつは「少しずつがんばろう!」と今の弱い自分を受け入れ、けれどあきらめない人です。私は、たくさんの前者を見ました。それができる人はそれでいいでしょう。けれど、私は弱い・・ので、できませんでした。がんばろうと思ってもすぐ挫折します。そこで、後者の方に考えを切り替えてやってみました。いつのまにか、がんばれるようになっていました。
 三日坊主という言葉があります。たとえば、がんばって学校に行こうと思ったけど、三日間しか決意が続かず、またずるずる休んでしまいます。私もそんな子でした。ところが、ある人から「じゃあ、三日ごとに決意しなおしたらいい」と言われました。三日坊主は、三日ごとに決意しなおせば、ずっと決意が続くことになります。
 そううまくはいきません。けれども、「もうだめだ!」って思っても、誰も助けてはくれません。あなたが起きあがってがんばるしかないのです。
 あなたが体も戸籍も女の子になるというのは、長く辛い道のりです。そして、それはゴールではなく、あなたの人生のスタートラインです。幸せになることは並大抵ではありません。どうか、今しっかり自分を強くして、スタートラインに到達し、そして本当の人生を歩める日をしっかり見据えて、がんばってください。

 3将来を見据え、今できることをやっていこう(現実原則)
 クラスの子の中には、もう声変わりが始まった子もいるでしょう。あなたが健康であれば、あと数年すると、今の素敵な声は失われ、お父さんのような低く太い声に変わります。髭や体中の毛が生え始めます。あなたの心がどんなに「女の子」でも、それに関係なく体の変化はやってきます。神様にお願いしても無駄です。
 その変化に耐えられなくて、あなたと同じ苦しみを持っている高校生などは、本当は18歳からでないと投与できない薬を服用することがあります。それについては、よくお医者さんや学校の先生、お父さんお母さんに相談してください。
 
 それよりも、実は今あなたがしなければいけない人生の準備はもっと大事なことがあります。それは、将来どうやって生きていくのかをしっかりと考え、それにむけて準備していくということです。
 まず、手術や戸籍の性別の変更をどうするかという問題があります。あなたが今男子として扱われることでとても苦しんでいるのは分かります。けれど、体を変えていくことは負担が大きく、また子どもを産むことはできないなど、完全でもありません。人によっては、手術がうまくいかなくて、命を落とす場合もありますし、痛みが死ぬまで続くこともあります。うまくいっても、寿命を縮めたり、一生薬を飲み続けなくてはいけません。あなたの心の苦しみは、その手術の苦しみと比較してどうでしょうか?よく考えてみてください。世の中には、普段は男性として働きながら、休みの日に女装して、女性として生活している人もたくさんいます。また、男の体のままで、男の人を好きになって、一緒に生活している人もたくさんいます。そのような生き方もできるのです。

 それでも、なお、大人になったらすぐ体を変えて、戸籍の性別も変えて生きたいという気持ちが変わらなければ、私があなたにいいたいことは「今できることをやっていこう」ということです。
 ①人生設計と学業
 あなたの周りの女性を思い出してみてください。どんなふうに生活していますか?お母さんはお父さんと幸せな結婚をしました。そして、あなたが生まれてきました。けれども、お母さんのような人ばかりではありませんね。結婚せず仕事を続けている人、結婚したけれど仕事を続けている人、結婚も仕事もせず、誰かに養ってもらっている人がいると思います。あなたは、どんな人生を歩んでいきたいですか?
 やっぱり、幸せな結婚をして、子どもを産んで・・・、けれどそれはできません。そして、子どもを産まないご夫婦もいらっしゃいます。夫婦で相談して子どもを産まない場合もあれば、夫婦どちらかの体の具合が悪くて、子どもを産めない場合もあります。けれども、多くの人は、子どもはできれば授かりたいと思って結婚します。あなたは、子どもを作ることができないことは最初から分かっていますし、男の人の中には、あなたのように昔戸籍の性別が「男」だった人とは結婚したくないと思う人もいます。だから、結婚するにはほかの女の子に比べてハンディがあります。そのため、結婚して旦那さんに稼いでもらって私は家で家事だけしていればいいという状態は、よっぽど運がよくなければ到達しないでしょう。
 だから、(結婚はできればしたいけど)一生一人で生活し、将来的には親の面倒も見ていくという覚悟をする必要があります。そのためには、働いてお金を稼がなくてはいけません。
 働き、生活するということは、とっても大変なことです。
 今、たくさん募集されている介護の仕事を考えてみましょう。高校卒業後、専門学校などに行き、就職します。その時の給料は、だいたい一ヶ月で一人が生活するのにやっとのお金です。それだけ聞くと、「いいかも」と思うかもしれませんが、その給料は将来もあまり上がっていきません。自分で手術代を作ろうと思っていたら、いつまでたってもお金を貯めることができません。
 女性として、資格を持つことで比較的給料がよいとされている看護師を考えましょう。就職すると最初は、同年代の子に比べ、高いので、びっくりするかもしれません。けれども、やはりほとんどあがりません。また、介護の仕事も看護の仕事も、不規則な勤務だったり、重労働だったりして、40年間働き続けることはむずかしいです。あなたの通っている病院を想像してください。もし、定年まで働けるならどんな年の看護師も同じくらいの数がいるはずです。ところが、若い看護婦が多いのは、働けないいろんな事情があってやめてしまうのです。(公立は別)
 では、どうすれば、テレビに出てくるような、熟年になってもばりばり仕事をしている女性になっていくことができるのでしょう。
 それは、今しっかり勉強しておくことしかありません。入るのが難しい大学に入り、さまざまな人たちのさまざまな考えをどん欲に吸収していくしかありません。いい大学に入り、今名前のしれた会社に入っても、社会はどんどん変化していきますから40年勤め上げられないかもしれませんが、自分を生かせることが何であるのかしっかり見極め、一生自分を磨いていくことのできる人が、働き続けられる人です。
 介護や看護がダメということではありません。介護では、しっかり経験を積んで、いずれはその法人の運営スタッフになるかもしれないし、看護で経験を積み、人間関係もしっかり作れば大きな病院の看護師のトップになれるかもしれません。要は、資格をもっているだけではダメなのです。天職を決め、他の人にはできない、あなたしかできない部分を持つことが、仕事の世界で生き残れることになります。
 学校の先生など公務員は、男女分け隔てなく定年まで働けるので、性同一性障害の人にはとても恵まれた仕事です。ただ、公務員になるためには、厳しい倍率を超える必要がありますし、今後時代の変化で、必ずしも「一回採用されれば定年まで大丈夫」とはならないような気がします。公務員を目指す場合は、よく考えた上でにしましょう。

 どのような仕事をするにしても、今できることは勉強です。たくさん勉強した分だけ、将来の幅が広がります。「子どもを作れない」と悲観するヒマがあったら勉強しましょう。

 ②体
 さっき、絶対やってくる体の変化のことを書きました。とっても嫌なことです。けれども、もし、18歳まで薬を取らなくても、今できることはあります。将来を考え、今できることを着実にやっていこう。
 ○バランスのよい食事を取りながら、肥らないこと
 もし今ふくよかなほうだったら、要注意です。けれども、極端なダイエットをすれば、内臓に負担がかかり、これからの治療に耐えられない体になっていまいます。十分に栄養をとることと、やせていることを両立させましょう。
 ○腕などに筋肉のつく運動は、必要最低限にしよう
 適度な運動は必要ですが、少年団や部活は、どうしても好きというわけでなければ、やらない方がいいかもしれません。
 ○声
 ※2年前の記事には何も書かれていませんでした(^_^;)
 ③女性らしくなるために
 もし可能なら、女性として長所になる習い事をできればいいでしょう。大人になってからはじめる人もいますから、高学年からでも、全然おそくありません。
 女子の友だちを作り、できるだけ一緒に遊びましょう。性同一性障害の大人の人は、自分の望みの性別で暮らすのに、一番苦労していることのひとつです。大人になってから変わった人は、意識して「女性らしく」しなくてはいけませんが、あなたは、自然に「女性らしさ」を身に付けることができます。
 女子グループの中では、おとなしめのグループ、スポーツ好きのグループなど、いろいろあると思います。多分、あなたの趣味が一致できるグループが、一番仲良くなりやすい、一番しっくりくるグループになると思います。

 4悩むのは当たり前、安心して(生き方の哲学)
 最後に、もしあなたが病院で性同一性障害と診断されても、学校で「女子」として扱われても、あなたの心の中には「私は本当に女なんだろうか?」とか「これからの苦しみに耐えられるだろうか?」という悩みが尽きないかもしれません。(悩まないかもしれませんが。)そして、「男か女か悩むくらいなんだから、本当は男なんじゃないかな?」とまで悩むかもしれません。
 みんな悩んでいます。けれど、焦らないで。だんだん大きくなるにつれて、本当の自分はどのあたりなのかがつかめるようになってきます。どうせ今手術できないんだから、今自分が男か女か決める必要はありません。今は、「女として扱ってもらっているけど、変わるかもしれない」でもいいし、「今は男で我慢できるけど、この先は分からない」でもいいのです。決断を急ぐ必要はありませんし、一度決めた決断が、ゆらいでもかまわないのです。ただし、最初から迷うようなら、女子として扱ってもらってはいけませんよ。女子達は、あなたのために一生懸命がんばってくれているんだから。
 あなたが、将来「男を愛する男性」になるのか、「スカートを穿く男性」になるのか、それとも「女性」になるのか、どれが許されてどれが汚らわしいなどということはありません。あなたらしく生きていけばいいのです。

今できる女性化(移行前の心得③)

2008-10-05 21:54:04 | 移行前の心得
 前のふたつの記事で、移行そのものへのおおまかな展望は書いたつもりなのですが、では、未成年の今できることは他にあるでしょうか?
 もし、まだ何の移行も進めていないとすれば、ほんの小さいことでも部分的な移行ができます。持ち物、髪型、習い事や部活、字の書き方やお箸の持ち方、話し方、仕草などなど。今は純女で性自認が完璧女性でもがにまた女性はいるし、一人称が「おれ」の子もいます。だから、無理して女っぽくする必要はないと思います。「自分らしく」すればいいと思います。もし、女物のバッグを持ちたければ買えばいいし、校則で許されているなら髪を中性型や女性型にかえればいい。そう思います。
次に、女の子の友達を濃くたくさん作ることです。その理由は、以前書きました。
 ただ、ちょっと注意したいのは、悩みを相談する、される関係、深い関係になると、恋愛感情がからむ場合があります。最初は、双方まったくそのつもりがなくても(私も若い頃はそうでした^_^;))そうなる場合があるので、自分の中でしっかり線を引いておきましょう。親友と恋人は、若い子にとって区別できません。
 カミングアウトするかしないかによって変わってきますが(カミングアウトについては後日書きます)、もしカミングアウトすれば、理解ある友人や家族、親戚の中で女性として振る舞うことができるかもしれません。それは、そのままRLE(女性としての生活の訓練)になります。そうすることで、本当に自分が女性としてやっていけるのか、やっていきたいのかを考える材料になります。
○まとめ
 以下のようなプランを自分で作ってみましょう
<未成年の移行前プラン>(例)
・将来の志望(職業など)・・実現可能性も含めて検討する
 ※あなたが元々女性だったとしたらがんばったら実現できると推測できる程度のレベル
・移行開始・・・大学入学後
・移行終了・・・大学3回生後半(4回生は戸籍を変更し就活に専念する)

18歳までにやっておくこと(優先順位;数や順位は人によって変わります)
①希望の大学に入学
②診断書が発行されていること・・すぐにホルモン開始
③家族の理解(あるいは黙認)・・・後日カミングアウトについて書きます
④健康で、体型・声が維持されていること
⑤女子の友人が複数いること
⑥趣味の○○で□になっていること
↓・・そのために
小学校時代に
 勇気を出して自分の欲しい物を買ってもらう
 女子の友達を作る
 高い声を出すよう心がける
 スポーツクラブに入らない
 (音楽系など)習い事をする
 無理のない程度に小さめの靴を履く

中学校時代に
 公立校か共学校に進学
 ある程度偏差値の高い高校に進学できるよう勉学に勤しむ
 声を維持する
 運動部には入らない
 適度なダイエット
 (地方であれば)親にカミングアウトし、ジェンダークリニックを受診

高校時代に
 共学校に進学
 大学に現役合格できるよう勉学に勤しむ・・・大学の所在地はよく吟味してください
可能な限り外見を女性化(髪型、服装など)
・・・カムの有無や校則によってきます
ジェンダークリニックに通い診断書、(18歳になった時点での)ホルモンの投与の許可を得る

 もしあなたが小中高校生なら、あせってバイト先で女子の制服を着せてもらう必要はありません。大学に入ったら、バラ色の女性化生活が待っています。今は、勉強と人間関係づくりを大切にしてください。

第2次性徴は堪える(移行前の心得②)

2008-10-04 17:28:29 | 移行前の心得
 声変わり前後の小中学生のGIDは、体の変化が不可逆的であるため、どうしても今この変化を止めたくてホルモンに手を出したいと思います。つらい思いは本当によく分かります。けれども、今悶々と無常をなげくよりも、今できることをやっていくことの方がはるかに価値的です。
今ホルモンを摂らなければ、通常は以下のような変化が表れます。
・声変わり・・・声域が低く(およそ1オクターブ)、太くなります。私の経験でははじめ少し変化し、数ヶ月急激に変化し、また変化が少なくなっていき変化終了までおよそ1年半くらいかかりました。

・髭などの発毛・・・(通常は)徐々に太く、多く、伸びる量が長くなっていきます。私の経験ではその変化は直線的(徐々に増大)で20歳を超えるくらいで極大化(一番太く、多く、長くなり変化がほぼ止まる)しました。

・身長が伸びる・・・女子が15歳くらいで極大化するのに対し、男子は20歳前くらいまで伸び続けます。

・(通常の女性に比べ)肩幅が広く、胸板が厚くなる・・・正直この変化は、ある段階まで進まないと、それまでは服のサイズの変化くらいでしか私は自覚できませんでした。けれど、胸囲や体重などを思い起こすと、明らかな変化は18歳を超えてからでした。極大化は30歳に近い時だったと思います。

・顔面の変化・・・正確で詳しい文献を見つけられなかったのですが、おでこというか眉のあたりが盛り上がってきます。鼻が大きくなり、また、エラが張るようになります。これもたぶん遅め(18歳以降)に顕著に変化していくと思います。(なんとなくなので、間違っているかもしれません)

 一方、通常の女性は、以下のような顕著な変化があります。
・乳房の発達
・体全体に丸みを帯びてくる。(骨盤の拡大、ウエストにくびれが形成される)

 大事なことは、今のあなたではありません。未来のある時点でのあなたの体が女性としてどうなのかということです。例えば、もし、今12歳のあなたが髭がとても濃くどう見てもおっさんだったとしても、もし、20歳の時に、ひげがまったくない体質に変化できると分かっているなら、がまんできると思います。
 実は、これらの変化の内、3割くらいは後からのホルモン療法や、手術などによって改善できます。勿論個人差はありますが、「(体つきが)男っぽい女の子」程度、100人中99人からは純女とみなされる程度にはなれるのです。けれど、今あせってホルモンを投与してこれらの変化のいくつかを止めたら、今超えなくてもいいさまざまな障害にぶつかります。それに、世の中にいるたくさんの男性の中に、「子どもの頃は女になりたかったけど、男で幸せだった」と言う人はたくさんいます。ニューハーフで、勢いで性転換してしまったけれど今は男性として生活しているという方もたくさんいます。
 私は、未成年の方、第二次性徴前の子がホルモンをすることのメリットデメリットを考えると、遙かにデメリットの方が大きいと思わざるを得ません。(このことはまた後日書きます)

だから、未来の性転換を見据えて、「今できること」をしていけばいいのです。
・声変わり・・・私は、私自身のことしか実体験できてないのですが、声の変化は単純ではありません。もし、高い声で話していたとすれば、だんだんそれが出せなくなっていく、そして、話し方を変えないと声が出なくなるようになる。そんな変化です。
参考文献(ウィキペディア)・・ここから変声をリンクしてください
には、頭声から胸声に変わると書かれています。もし、がんばって(声帯をこわさない程度に)頭声のままで発生し続ければハスキーな高い声になります。私の声です。私は、自分ではかなり男声だと思いますが、過去高校や大学時代、社会人時代は、変な声ということで笑われました。けれど、(女性になった)今は笑われません。電話口でもストレスなく女性として認識されます(通話先が私が女性であるという先入観があれば違和感を与えない程度)。もし、その程度であきらめられるのであれば、子ども時代に高い声、女の子と同じような発声を心がけ、変声期ではできるだけ声の出し方を変えない、ということで対応できるかもしれません。

・ひげ・・・成人のMTFは100パーセントレーザー脱毛をしています。少しお金はかかりますが、(10万円くらい?)1年~2年くらい病院に通えば、ひげはまったくなくなります。今がまんすればいいだけです。また、15歳くらいでレーザー脱毛をしても、また生えてくるので、成長が止まるまで待ちましょう。

・身長や骨格・・・これはどうしようもありません。けれども、身長は仕方ないのですが、骨格の変化のクライマックスは通常20歳を超えてからです。もし、あなたが高校生くらいからジェンダークリニックに通院し始めたら、今のガイドラインでは18歳でホルモン投与が可能です。その時まで待っても、まだ間に合う可能性が高いです。

○では今、何ができるのでしょうか?
 これからの変化、手術に耐えられるように、しっかり体力をつけることかもしれません。無理なダイエットや、無常感から逃れるための喫煙などはこれからの変化に悪影響を及ぼします。少し少なめでかつバランスのよい食事を摂り、腕などに筋肉がつかないように気をつけながらの適度な運動(歩くことがいいような気がします)。そんな無意味に思えることが、実は後々大きく響いてきます。