パリに住む女友だちが
友人の葬式に出席した。
亡くなったのは、若くて美しい
男でエイズだった。
葬式は、フランスでは珍しい
火葬だ。
祭壇にぽつんと置かれた小さい
白い箱を遠まきにし、誰も
近づかず
人々は遠くから黙礼し、そそ
くさと帰っていったそうだ。
彼女の順番になった。黙礼する
かわりに、いきなりつかつかと
前に進み、骨の入った白い箱を
両手で抱き上げると、
その箱の正面に、唇をしっかりと押し
付けた。
今でも大好きな友だちの気持ちを、
とっさに表現するには、ああするし
かなかったのだ。
火葬が一般の国である日本で、
同じことをしたなら、違った意味で
大騒ぎになってしいまうと
思うが、
私はその話をとてもいい話だと
思った。
白い骨箱にしるされた真紅の
唇の型。こんな美しい非常識
が、他にあるだろうか?
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