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愉しむ漢詩

漢詩をあるテーマ、例えば、”お酒”で切って読んでいく。又は作るのに挑戦する。”愉しむ漢詩”を目指します。

閑話休題388 漢詩で読む『源氏物語』の歌 (七帖 紅葉賀-1)

2024-02-05 09:42:20 | 漢詩を読む

[七帖 紅葉賀-1 要旨] (光源氏 18歳秋~19歳秋)

10月某日に、先帝・朱雀院への行幸が予定され、歌舞は、選りすぐりの楽員で行われるということで評判であった。後宮の女官たちは同行、陪観が出来ないことから、桐壺帝は、藤壺の女御に見せられず、遺憾であるとして、当日と同じ演目を御前で予行させた。

 

演目は雅楽の一つ“青海波(セイガイハ)”、源氏と頭中将二人による舞で、夕方前のさっと明るくなった日光の下で舞われた。人より勝れた風采の頭中将も、源氏の傍で見ては、桜に隣りした奥山の木といったところである。

 

面使い、足の踏み方など、源氏の舞の巧妙さに帝ばかりか、陪席した高官たちも涙するばかりであった。翌朝、源氏は藤壺の宮へ、下記の歌を添えて、「どうご覧くださいましたか」と 文を送った:

  もの思ふに 立ち舞ふべくも あらぬ身の 

    袖うちふりし 心知りきや   (光源氏)

藤壺の宮は、やましい心を感じながらも夢心地の風で、その舞に感動を覚え歌を返した。思いがけなく貰った返事は、源氏にとっては非常な喜びであった。

本帖の歌と漢詩

ooooooooooooo  

もの思ふに 立ち舞ふべくも あらぬ身の 

  袖うちふりし 心知りきや (七帖 紅葉賀-1)

  (大意) 苦しい思いに心乱れ、立ち舞うことなどできるはずもない身でした

  が、あなたに見て頂くため、袖をうち振り舞った心中 

  察して下さいましたでしょうか。 

xxxxxxxxxxxxxxx  

<漢詩> 

   青海波舞     青海波(セイガイハ)の舞   [下平声九青韻] 

心胸繁慮日無寧,  心胸(シンチュウ) 繁慮(ハンリョ)日に寧(ヤスラ)ぎ無く, 

而我不会舞情形。  而(シカ)して我舞うこと会(デキ)ぬ情形(ジョウキョウ)にあり。 

但要君察揮動袖,  但(シカシ) 君の察(ミ)るを要(モトメ)て袖を揮動(ウチフ)る, 

惟恐君揣此心霊。  惟(タ)だ恐る 君が此の心霊(ココロ)を揣(オシハカ)りしや。 

 [註] ○青海波:唐楽の演目の一つ、雅楽ともなっている; 〇心胸:心の

  中、胸の奥; 〇繁慮:様々な心痛; 〇情形:状況; に見る;

  ○察:つぶさ; 〇揮動:手を高くあげて振る; 〇揣:推し量る。  

<現代語訳> 

  青海波の舞 

心中憂慮が多く、心が安らぐ時がなく、舞などできる状況にありませんでした。

でも あなたに見て貰いたく、袖を打ち振り 舞いました、この心を推し量って貰えたでしょうか。 

<簡体字およびピンイン> 

  青海波舞     Qīnghǎi bō wǔ 

心胸繁虑日无宁, Xīnxiōng fán lǜ rì wú níng,     

而我不会舞情形。 ér wǒ bù huì wǔ qíngxíng

但要君察挥动袖, Dàn yào jūn chá huīdòng xiù, 

惟恐君揣此心灵。 Wéi kǒng jūn chuǎi cǐ xīnlíng

ooooooooooooo  

  藤壺の宮の返歌:

藤壺の宮は、自分にやましい心がなかったならきっと美しく見ることが出来た舞であろうと 見ながらも夢心地の風であった。目のくらむほど美しかった昨日の舞を無視することが出来ず、次の返歌を送った:

 

から人の 袖ふることは 遠けれど 起ち居につけて 哀れとは見き 

 (大意) 唐人の袖をふる舞には疎いわたしですが、あなたの舞姿の素晴らし

  さには感動して見ていました。  

青海波の曲が唐起源であることなど知って作られた歌であり、

 源氏は、もう十分に妃らしい見識を備えておられると微笑み、

 手紙をお経の経巻のように広げてずっと見入っていた。

 

【井中蛙の雑録】 

・NHK大河ドラマ『光の君へ』が始まりました。『源氏物語』の“命”と思える和歌を如何様に活かせるか楽しみにしております。

 

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